昨季のプレミアリーグ得点王に輝いたチェルシーのニコラ・アネルカ。プロ15年目となる2010年がキャリアのピークとなることを予感させる。わずか16歳でプロデビューを果たして以来、アーセナルやマンチェスター・シティでゴールを量産してきたアネルカだが、好不調の波が激しく、指揮官たちとの対立もあって、多くのクラブを転々としてきた。

 W杯出場も3度のチャンスがありながら、ギリギリのところでメンバーに選出されず、ことごとく逃してきた。来年こそ、ケガさえなければ悲願の初出場がようやく叶うことになる。

 アネルカは、16日付のフランスの無料紙「20 minutes」のインタビューで、これまで代表に定着できなかったのは、監督とのコミュニケーション不足が大きく影響したことを明かしている。「人はいろいろ言うけれど、ドメネクとは(歴代の監督の中で)最高の関係ができている。いままでどんな監督ともこのような対話をすることが不可能だった」という。「たしかに(ドメネク監督は国民から)愛されてはいないが、おそらく半年後には、彼こそ“ボス”になり、誰も非難できなくなるだろう」と指揮官に信頼を寄せ、W杯で結果を出すことを誓った。

 その監督をはじめ、フランス代表が国民の支持を受けていないことは、アネルカも肌で感じとっている。「いいプレーができないときは、僕ら自身がいちばんそれをわかっている。悪いときは叩かれ、いい試合をしたときは何も言ってくれない。3―0で勝っても当然という反応だ。これでは支持を得られているとは感じられない」と苛立ちをあらわにする。

 母国に対する不満はさらにつづく。「いちど国外でプレーしたら、もうフランスには戻れない。(国を離れる)以前と同じような扱いは受けられなくなる。大きなクルマを乗り回そうものなら、それだけで変な目で見られる。フランスで暮らしたいとは思うよ。でも不可能なんだ。税金の問題もある。サッカーをして、収入の半分が税金でもっていかれるなんてたまらない。こう言うとショックを受ける人もいると思うが、フランスは偽善の国なんだ」と批判をまくしたてた。

 フランスの税制にまで踏み込んだこの発言は、波紋を呼ぶ可能性もある。しかしこれまでにサッカー選手だけでなく多くのスターたちが指摘してきたことであり、アネルカも率直な意見を述べただけだ。イングランドやスペイン、イタリア、ドイツなどと異なり、代表の大半が国外のクラブでプレーするフランスの“特殊な事情”の一因がここにあるのもたしか。さらには、選手たちが国外でプレーすれば国民の支持も下がる、という悪循環を生んでいるといえる。