山瀬のゴールを守りきった日本。勝負カンで勝ったが、もっとワイドな展開を意識するべきではないだろうか (photos by Kiminori SAWADA)

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東アジア選手権第2戦は、前半と後半とでペースが見事に分かれる不思議な試合だった。前半は中国ペース。にもかかわらず、 18分に日本がワンチャンスをものにして、決勝ゴールを決めた。後半は 日本ペース。中国は焦りからか、時間の経過とともに、反則行為を繰り返すようになり、墓穴を掘ることになった。

 言いかえれば、中国がサッカーゲームの進め方にもう少し長けていれば、日本はやられていた可能性がある。それができそうもないところが、中国の成績がイマイチ振るわない原因だと思われるが、惜しい気がして仕方がない。前半の中国は、それほど良いサッカーをしていた。

 カチッとした文字通りの4−4−2から、前回のこのコラムで述べた「四角」のフレーミングをきっちりと保ちながら、ピッチの横幅を巧く使うバランスの良いサッカーを、前半の中国は繰り広げた。日本に欠けている魅力が、その時間帯の中国には、確実に凝縮されていた。

 小器用ではないがダイナミック。中国人選手のプレイの特徴ともマッチしていた。彼らは難しいプレイをしていたわけではない。難易度の低いプレイをシンプルに繰り広げているだけで、チャンスは生まれた。ピッチの隅々にまでボールが散る、スケールの大きなサッカーを展開した

 逆に前半の日本の攻撃は、シンプルではなかった。選手は難易度の高いプレイを繰り広げては失敗の山を築いた。

 日本人選手は中国人選手より小器用だ。小回りが利く。しかしながら、ブラジル人ではない。世界的に見れば、まあまあ巧い方に属する程度だ。例えば、その偏差値を55とすれば、60以上なくしてはできない難しいサッカーを繰り広げ、結局50程度の力しか出すことができなかった。逆に中国は50しかないのに、プレイの難易度が低いため、結果として58の力があるかのようなサッカーをした。そんな感じだ。

 岡田ジャパンは、4−2−「3」−1の布陣を選択していながら「四角」のフレーミングが明確ではないサッカーをした。「3」を担当する安田、遠藤、山瀬と、1トップ田代の4人が前線で規律なく、ぐちゃぐちゃに動いてしまったのだ。

 前半18分に山瀬があげた決勝ゴールは、左サイドバック駒野攻め上がりから生まれたが、サイド攻撃からチャンスが生まれたのはそれぐらいで、期待の右サイドバック、内田の攻撃参加どころか、存在感さえ希薄だった。専守防衛に徹する地味な選手にしか見えなかった。

 中国の4−「4」−2の「4」を担当する左サイドハーフ、杜震宇を、常に目の前に置いていたからである。同時に、その後方に構える右サイドバック、孫祥も、虎視眈々と攻撃参加の機会をうかがっていたからである。
 このまま進めば日本はマズイ。前半終了時、中国に逆転を許すのは時間の問題かと思われた。

 試合後の記者会見で「ハーフタイムにどんな指示を出したのか」と問われた岡田サンは「安田が高すぎる位置で構えたので、ポジションをちゃんと取るように指示した」と答えている。

 確かに、前半の安田のポジションは高すぎた。MF色よりFW色を際だたせていた。4−2−3−1の3の左の選手として、外に開て構えている感じでもなかった。結果として、守備にも参加できなければ、パスも回ってこなかった。内田同様、存在感は希薄だった。

 後半、ペースが日本に移った原因が、安田のポジション修正など、日本側の手直しが功を奏したからなのか、それとも、中国側に問題があるのか。明確な原因が、どちらにあるのかよく分からないが、中国には、元来から情緒不安定なプレイを繰り広げる傾向がある点も忘れてはいけない。

 良いプレーを1試合を通して続けた例は、過去を探ってもまず見当たらない。90分の中で、中国ほど大きな波を抱える国も珍しいのだ。そういう意味で、中国はサッカーに向いていないんじゃないかと思うことしばしばだが、素晴らしかった前半とは一転した後半戦いを見せられると、改めて中国という国の特異性が浮かび上がった。

 日本で誉めるべきは、後半の開始早々に、キチンと攻めたことだ。前半の中国の流れを一度断ち切ったことだ。中国に例の特異性を発揮させることになった、大きな原因だと思う。勝負カンのある支配運びをしたという話になる。

 とはいえ、終盤の戦いにはもう少し冷静さが欲しかった。「(中国寄りのジャッジをする)北朝鮮の主審に腹を立てていたのはむしろ僕のほうで、選手は冷静に対応していた」と岡田サンは語ったが、選手も主審に対してはともかく、荒っぽいプレイを繰り広げる中国に対して、まともに向かっていったことは確かである。ピッチをワイドに使い、ボールを散らすサッカーをしていれば、傷は負わずに済んだのではないか。

「四角」を確実に使い、的確なサイドチェンジができるサッカーに、改めて拘って欲しい気がした。

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