[中編の続きから] そして、9月3日からの日本代表の欧州遠征のメンバーにも選ばれた。1年半ぶりの代表招集だ。「久しぶりだから、懐かしいメンバーと一緒にプレーできるのは楽しみですね。当然、気持ちも入っている。練習からそういう気持ちを出して行きたい。今日のリヨンのように、中盤の選手がポジションを変えながら、パスを繋いで、相手を崩していくそういうサッカーがやれたら楽しいと思う。オシム監督といろいろ話ながら、監督のやろうとしているサッカーを理解して、自分のプレーを出していければいいと思っている」

 代表の話になるとわずかに表情が緩み、意気揚々とした思いが言葉を弾ませているようだった。欧州4シーズン目を向かえ、次のステップアップをも考えているだろう松井にとって、日本代表で受ける刺激は小さくはないだろう。

 そして、欧州で経験を積んだ松井のプレーが日本代表に与えるだろう“何か”にも期待が高まる。アテネ五輪を共に戦ったチームメイトたちが、松井から受ける刺激。それを代表として上手く消化できることが楽しみだ。

 アジアカップでの課題に“個の力”というものがあるが、これは単純な個人技を指すものではない。遠藤や高原、中村が口にした“個人”というキーワードは、“個で考える力”であり、“個人の判断”“個人の決断”という意味だった。言われたことだけをやっているチームメイトへの苦言だった。

 アジアカップで感じたのは、“考えるサッカー”を標榜しながらも、指揮官の細かい指導や指摘が、選手たちから考える余地を奪ってしまったのではないかという危惧だった。だからこそ、松井大輔という異質な個性をチームとして、上手く消化することに期待したいのだ。

「チームの戦術も大事だけど、自分のカラーを出さなければ意味がない」と言い、先のカメルーン戦に出場した大久保は、ゴールという結果こそ残せなかったが、彼らしいプレーでチャレンジしたと思う。しかし、今回の代表メンバーには残れなかった。

 欧州組にとって、アピールのチャンスは少ない。松井はこのチャンスをどう生かすのか?そして日本代表は松井という“武器”をどう生かすのか?その興味は尽きない。

―― text by Noriko TERANO from FRANCE ――

<サムライ通信>
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