新幹線の台車亀裂問題から1年が経過し、JR西日本がこれまでの対策と今後の取り組みを発表しました。

岡山駅、広島駅に「走行管理班」

 JR西日本は2018年12月11日(火)、新幹線の台車に亀裂が入ったまま走り続けた問題から1年が経過することから、再発防止に向けたこれまでの取り組みを発表しました。


指令員と現場社員が参加した台車構造の勉強会の様子(画像:JR西日本)。

 同社では対策としてすでに、新幹線専任の安全管理者の配置や、安全を確認できないときは「迷わず列車を止める」方針の徹底、におい体感訓練などを実施。不備が発覚した川崎重工業製N700系の台車は、12月5日(水)までにすべて交換を完了しています。

 今後の計画としては、台車各部の温度を監視して異常の兆候を把握する装置を、2018年度から2020年度にかけて山陽新幹線の複数箇所に設置。あわせて車両の台車部分にも異常検知装置を2019年3月から2022年度にかけて導入する計画です。

 走行管理班(車両保守担当社員)は、2月に岡山駅、12月1日(土)に広島駅で、それぞれ2人体制で発足。実践的な教育としては、におい体感訓練に加え、訓練用列車を使った列車停止手配、車両点検などの訓練を行っているといいます。

 JR西日本は現在、さらに高いレベルの安全を目指して取り組みを進めている段階にあると認識しているとし、今後は、施策を計画した部署と、現場部署が、計画と実行の比較を定期的に行い対策を講じる仕組みを作ること、社員の行動の変化や声を管理者が感度を上げて把握し必要な対応に繰り返しつなげていくことなどを着実に進めていくとしています。

 新幹線の台車亀裂問題は2017年12月11日、N700系16両編成の博多発、東京行き「のぞみ34号」で発生。山陽新幹線の区間を走行中に異音や異臭が生じたものの運転を続行し、東海道新幹線(JR東海)区間の名古屋駅で点検した際に、13号車の台車で油漏れが確認されました。

 その後の調査と報告では、川崎重工業の台車枠の製造過程で、「側バリ」と呼ばれる部分を薄く削りすぎていたことや溶接などの不備が亀裂につながったとされています。また、国の運輸安全委員会は、新幹線で初めて、この問題を「重大インシデント」に認定しています。

【写真】におい体感訓練


車両に使用している油脂類の焦げたにおいを実際に体感。2018年2月から開始し、同年度内に全乗務員が2回目を受講する(画像:JR西日本)。