ハイテクから酵母まで。“埋蔵知財”を檜舞台に出すファンドとは?
アイピーブリッジと三井不動産が連携したスタートアップ支援の枠組みも興味深い。その名は「ManGO Factory」。国内で特許出願された技術のうち、グローバル展開できていない知財の割合は中小企業で8割強に達するといわれる。三井不動産が運営するコワーキングスペースを活動拠点とし、70社以上に対してアクセラレータープログラムを提供した実績を持つシンガポールのインキュベーターと協力しながら、技術系スタートアップの海外展開に向けた戦略立案を支援する。
ASEANや日本のスタートアップ支援
東南アジア諸国連合(ASEAN)の中心部であるシンガポールやマレーシアには、技術系スタートアップを育成するエコシステムが根付いている。この1年で、アイピーブリッジはマレーシア市場を舞台に、二つの大きな基本合意書(MoU)を交わした。
ICTを振興する政府系機関マレーシア・デジタルエコノミー公社(MDEC)とのMoU(2016年10月)と、ASEANをベースに活動するプライベートエクイティファンドのレオニーヒルキャピタルとのMoU(2017年10月)だ。マレーシア政府支援の下、5000万ドル規模の知財ファンドで東南アジアや日本のスタートアップに投資する。IoT(モノのインターネット)やウエアラブルセンサー、ロボティクス、農業テクノロジー、食品テクノロジーなどの企業を検討中で、「ManGO Factory」も後押しする。
「おいしい米が、豊かな土やきれいな水、十分な日光、虫、カエルなどを抜きにしては育たないように、スタートアップ企業にも適切なエコシステムが必要だ。我々はASEANや日本のスタートアップ企業を支援するため、マレーシアのイノベーションエコシステムの一部として機能できるということを光栄に思い、大きな期待を持っている」とアイピーブリッジの吉井重治社長は話す。
日本が技術立国として復活するため、日本発の大型特許運用会社に寄せられる期待は日増しに高まっている。