「有名企業への就職率が高い大学」トップ10

写真拡大 (全6枚)


2017年卒の有名企業400社への実就職率では、一橋大学が3年連続で1位になった (撮影:風間仁一郎)

大学生の就職率は右肩上がりで売り手市場が続いている。が、大企業を目指す学生にとっては、話が別だ。リクルートワークス研究所が発表している大卒求人倍率調査によると、2017年3月卒の全体の大学求人倍率が1.74倍に対し、従業員規模5000人以上の企業に限ると、0.59倍という数字だった。つまり学生1人あたり1社に満たない。それにも関わらず、全般的に好調な就職状況を背景に、学生の大手志向は強まり、大企業に関しては「就職難」といっても過言ではない状況になっている。

「有名企業」400社への実就職率をランキング


そんなハードルの高い大企業への就職に強い大学をまとめたのが、2017年版「有名企業400社の実就職率」ランキングだ。

データは2017年の卒業生のもので、対象となる「有名企業」400社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選んでいる。トヨタ自動車や日立製作所、三菱東京UFJ銀行など、誰もが知っている大企業への就職率が高い大学、とご理解いただきたい。この400社に、卒業生(大学院進学者を除く)のうちどれだけの割合で就職しているか、を見ている。

ランキング1位は一橋大学、2位は東京工業大学だ。この両校は毎年、大企業に、数多くの学生が就職する大学として知られる。リーマン・ショック後、近年最も大学生の就職状況が厳しかった2011年でも、両校の有名企業400社への実就職率は、50%を超えていた。

一橋大学の今春の就職先は、三菱東京UFJ銀行23人、みずほフィナンシャルグループ25人、三井住友銀行16人と、3大メガバンクがベスト3を占める。東京工業大学の就職者数上位企業は、三菱電機29人、トヨタ自動車と日立製作所が23人、パナソニック21人など、製造業が大半だ。

では不動のトップ2以下はどうなっているのか。

ちなみに、入試の難易度でこの両校を上回る東京大学は、意外にも27位だった。有名企業400社の就職者数は1589人と少なくないものの、同時に一般企業以外の進路を選ぶ学生も多く、そのため順位が低くなる要因となっている。

東大新聞の調べによると、官公庁や研究所をはじめ、一般企業以外に就職した学生は1000人を超える。官僚や研究者を養成する帝国大学だった東京大学に対して、一橋大学は東京商業学校、東京工業大学は東京職工学校という、実学の大学として始まっている。こうしたバックボーンの違いが有名企業の実就職率の差となって表れているようだ。

3位の慶應義塾大学は総合大学で最上位だ。卒業生が8000人を超える大規模大学にも関わらず、46.5%が大企業に就職している。就職者数の多い企業のベスト3は、みずほフィナンシャルグループ146人、東京海上日動火災保険97人、三菱東京UFJ銀行91人などで、就職者が多い企業には金融系が多い。

3位慶應、4位上智、5位国際教養大

一方、慶應義塾大学と並び立つ、早稲田大学は7位。実就職率は慶應義塾大学より10ポイント近く低いものの、就職者が多い企業は、みずほフィナンシャルグループ109人、三菱東京UFJ銀行105人、東京海上日動火災保険81人などで遜色ない。

一般企業以外では、教員176人が、地方公務員と国家公務員合計で638人が就職しており、起業なども含めた多様な進路を選ぶ学生が多いことが、ランキング順位の差となっている。ちなみに、慶應義塾大学の教員就職者は25人、公務員は210人と、少なかった。

東京の難関私大である上智大学は4位だ。就職者の多い企業に金融が並ぶのは早慶と同じ。ただ、就職者数最多の企業がANAの32人で、日本航空も14人など、CA職に就く学生が多い。女子比率の高い上智大学らしい特徴といえよう。

5位と6位はグローバル系と理工系の小規模単科大学だった。5位の国際教養大学は2004年設立の歴史が浅い大学ながら、留学生と一緒の寮生活(1年次)や海外留学が必須など、グローバル人材の育成に力を入れている。そのためか一期生から大企業に数多く就職している。

6位の豊田工業大学はトヨタ自動車が社会貢献活動の一貫として設立した大学である。学費の安さや教育・研究施設の充実などにより、優秀な学生が集まることが大企業に強い一因となっている。

前出の東京工業大学や豊田工業大学の実就職率が高いのは、優秀な理系学生が企業間で争奪戦になるという構造的な要因もある。

そうした影響もあり、電気通信大学(8位)や東京理科大学(11位)、名古屋工業大学(12位)、九州工業大学(15位)、東京農工大学(22位)など、理工系大学が上位にランクインしている。さらに理工系学部の定員の多い、大阪大学(9位)や名古屋大学(13位)、京都大学(17位)などの難関国立大も上位に名を連ねる。

近年、理系学生の就活の形態には、変化が見られる。2017年3月卒の学生の就活スケジュールは、3月に企業の広報活動が解禁になり、6月から選考が始まった。が、一部の理系学生は3月を待たず、大学を通して企業と接触し、学生時代に身につけた専門性と企業が求める技術とをすり合わせる、「ジョブマッチング」が行われていた。

学生と企業が納得したうえで、3月からの採用プロセスが始まるため、ミスマッチが少なく、スムーズに就活が進む。理系学生に追い風が吹いているのだ。

ランキングに戻ろう。表中の実就職率が30%を超えている大学は増加傾向にあり、2011年と比較すると9校から21校に増えた。こうした、約3人に1人が大企業に就職する大学は、さらに増えるかもしれない。

新たな採用手法も難関大に有利か

近年、社員が知人や友人を推薦することから選考が始まる、「リファラル採用」も増えている。いわゆる縁故採用とは異なり、一般の就活スケジュールで選考されるが、企業は通常の学生より多くの情報を得てコミュニケーションがとれるので、一般的な学生よりも就活が有利に進む。

ランキング上位の大学の学生は、身近に大企業で働くOBやOGが多い。ゼミやサークルなどを通して、そうした先輩と知り合い、推薦される可能性が高いのは有利である。

さらには就活スケジュールの短期化の影響もある。広報解禁が3月で選考開始が8月だった前年と比較して、2017年卒の学生の就活期間は2カ月短かった。そのため企業は認知度を高めようと、ランキング上位にあるような難関大の学生に対するアプローチを早めた。3月以前の”プレ広報”で優秀な学生集団が形成され、3月以降に一般学生とは別に選抜するケースが増えているというわけだ。

大企業が狭き門であることに変わりはないが、こうした採用手法が広まると、一般的な大学の学生よりも、難関大生に門戸が大きく開かれることになる。今、大企業の就職実績が高い大学は、さらに伸びる可能性が高いということだ。





■データについて
データは2017年8月31日現在。400社実就職率(%)は、有名企業400社への就職者数÷〔卒業(修了)者数-大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。一部の学部・研究科などを含まない大学もある。大学名横の*印は大学院修了者を含むことを表す。設置の「国」は国立、「公」は公立、「私」は私立を表す。「―」はゼロまたは未集計。有名企業400社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定。日本大学は就職者数のみ大学院修了者を含む