中国のステルス戦闘機が超絶進化。軍事評論家「米露に近い戦闘力だ」
中国初のステルス機が登場してからわずか6年、ついに中国人民解放軍は国際水準に極めて近い戦闘機の開発に成功したようです。メルマガ『NEWSを疑え!』では著者で軍事アナリストの小川和久さんが、様々な欠点が指摘されていた初代機「J-20」に次ぐ「J-31」のカタログデータ等を紹介しその着実な歩みを指摘。さらに米軍のステルス戦闘機が備えているNCW(ネットワーク中心の戦い)の能力を中国が手にする可能性についても考察しています。
中国のステルス戦闘機の進化ぶり
7月30日の内モンゴル自治区での中国人民解放軍創建90周年の軍事パレードにJ-20戦闘機の編隊が登場したのを見て、中国の軍事力の近代化について色々と思い出しました。J-20は今年の3月9日に実戦配備されたばかりです。
カタログ・データ的に言うとJ-20戦闘機は次のような諸元・性能とされています。
全長:20.3m全幅:13.88m最大離陸重量:36.3t最大速度:マッハ2.2航続距離:5,500km大きさから言うと、全長18.92m、全幅13.56m、最大離陸重量38t、最大速度マッハ2.42、航続距離3,000kmという米国のF-22より少しだけ大きい印象です。
最大速度だけでなく、爆弾やミサイルの搭載量などもF-22に引けをとらないレベルにあるようです。
しかし、それはあくまでもカタログ・データのお話。本当に第5世代のステルス戦闘機としての要件を満たしているかと言えば、外見を見ただけで、そうではないことがわかるのです。
まず、コックピットのやや後方に配置されたカナード翼(前翼)。
カナード翼は、カナードと主翼という2つのデルタ翼を接近した場所に取り付けることから「クローズカップルド・デルタ」と呼ばれたりします。カナードとデルタ翼を組み合わせると高い短距離離着陸能力と旋回能力が得られるというメリットがあります。
クローズカップルド・デルタは、サーブ・グリペン、ユーロファイター(タイフーン)、ラファールなどヨーロッパ製の戦闘機に見られる形式で、中国でもJ-10戦闘機が採用しています。
このカナード翼によってJ-20も空戦性能を向上させる狙いがあるのですが、それは同時にエンジン出力の不足を露呈している面もあるのです。
J-20の全備重量36トンという機体に一定水準以上の空戦能力を備えさせようとすれば、かなり強力なエンジンを必要とするのは明らかです。
しかし、J-20が登場した段階では、中国はロシアから導入したSu-27戦闘機のAL-31エンジンを流用している可能性が高く、パワー不足を補うためにカナード翼を採用せざるを得なかったという見方になるのです。
むろん中国も米国GE製のターボファンエンジンの改良を重ねたWS-10Gの開発を進めてきましたから、現在ではエンジンのパワー不足は解消されているかもしれません。
でも、問題は残ります。
せっかくの中国初のステルス戦闘機なのに、カナード翼のせいでステルス性が損なわれるという問題が残るというのです。
ステルス機は正面からのレーダー電波を拡散し、電波吸収材で補うデザインになっていますから、薄いカナード翼など影響はないように思われますが、精度の高いレーダーにかかると、カナード翼がない場合に比べてRCS(レーダー反射断面積)が大きくなり、発見されやすいというのです。
J-20が試験飛行した当時、中国人民解放軍の装備担当の将官にエンジンのパワー不足とカナード翼の問題を指摘すると、あっさりと認めたのにはかえって驚かされました。
「次は強力なエンジンを手に入れますから、カナード翼もなくなりますよ」
はたして、その言葉のとおりになったようです。
J-31戦闘機の登場です。
これもカタログ・データで紹介するしかありませんが、次のような横顔です。
全長:16.8m全幅:11.5m最大離陸重量:25t最大速度マッハ:1.8戦闘行動半径:1,200kmJ-20で力不足が問題になったエンジンも、ロシア製のクリモフRD-93を2基搭載していると伝えられ、強化された印象です。
機体こそコンパクトになったものの、着実に米国のF-35、F-22、ロシアのT-50といった国際水準のステルス機に近づきつつあることは間違いないようです。
ゲーツ国防長官の訪中を狙いすましたかのようにJ-20の試験飛行が行われたのは、いまでも鮮明に思い出すことができます。それが2011年1月。それからJ-31の登場までわずか6年。まだ2機を試験運用している段階ですが、着実な歩みというか、恐るべし中国というか…。
あとは米国のF-35が高い能力を備え、F-22も一定の能力にあるNCW(ネットワーク中心の戦い)の能力ですが、これは中国のデータ中継用の人工衛星の数量や性能に関わる問題があり、こちらはいま少し時間が必要かもしれません。(小川和久)
※初出時より内容の一部を変更いたしました。
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出典元:まぐまぐニュース!