ふたつの海外移籍が、慌ただしく発表された。ガンバ大阪の堂安律と、サガン鳥栖の鎌田大地だ。

 堂安の移籍は、世界の舞台でのアピールが実ったものだ。この19歳は先のU−20W杯に出場し、チーム最多の3ゴールをあげた。とりわけ、イタリア相手に奪ったふたつのゴールは、鮮やかな「個」の輝きだった。

 日本相手に早々と2点をリードしたイタリアは、試合に注ぐ熱量が明らかに落ちていった。それにしても、堂安の得点はインパクトが強い。

 イタリア戦だけではない。ベネズエラとの決勝トーナメント1回戦でも、堂安は違いを見せつけた。彼が絡まなければチャンスが広がらない、との印象さえあった。

 U−20W杯の日本代表は、4−4−2を基本布陣としていた。堂安は2列目の右サイドで起用されていたが、彼のプレースタイルはシステムを選ばない。ウイングを配するオランダのサッカーにも、無理なく適応できるだろう。単にヨーロッパへ飛び出すだけでなく、クラブとの相性という意味でもいい移籍だと言える。フローニンゲンからのステップアップを、イメージすることができる。

 一方の鎌田はどうだろう。

 日本代表に選ばれてない彼に、フランクフルトが触手を伸ばしたことに単純な驚きを抱く。ドイツ・ブンデスリーガにおける日本人選手の評価に安定感があり、その先駆者となった長谷部誠が所属しているとはいえ、目の付けどころが個性的だ。8月で21歳になる日本人選手の獲得は、将来性を加味した先行投資の意味合いもあると想像する。

 16―17シーズンのフランクフルトは、3−4−2−1を基本システムとしていた。鳥栖でトップ下を定位置としてきた鎌田は、新たな役割のもとでポジションを争うことになる。

 主砲のアレクサンダー・マイヤーがケガで出遅れることになり、ハリス・セフェロヴィッチをベンフィカへ放出した一方で、フランクフルトの攻撃陣にはユトレヒト(オランダ)からフランス人FWセバスチャン・ハーラーが加わった。1月にレンタルで加入したマリウス・ヴォルフが、新シーズンも引き続きプレーすることも決まっている。すでにチームのやり方に馴染んでいるヴォルフだけでなく、エールディビジで3シーズン連続2ケタ得点を記録しているハーラーも即戦力として期待されている。

 トップ下が唯一無二の適性ポジションではなく、鎌田はサイドハーフや2トップの一角でもプレーできる。いずれにせよ、プレシーズンから結果を残していく必要がある。ゴールやアシストのような分かりやすい結果はもちろんだが、自分には何ができるのか、どんな特徴があるのかを、周囲に理解してもらう。そのためにも、トレーニングから自分を出していくのだ。

 新天地でのスタートは、日本人的にはエゴイスティックなぐらいがちょうどいい。鎌田も、堂安も。局面を制するのは自分だという気持ちで、攻撃にも守備にも関わっていくべきだろう。