北朝鮮の炭鉱(画像:労働新聞)

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国連安全保障理事会の制裁決議に基づき、中国政府は今年2月19日から北朝鮮産石炭の輸入を中断した。小規模な密輸や輸入再開の動きは見られるが、中国政府は一度輸入された石炭の差し戻しを命じるなど、制裁を厳しく履行する姿勢を示している。

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それに伴い、北朝鮮国内への影響が深刻化している。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が報告してきたのは、北朝鮮有数の炭鉱地帯で、流通・軽工業が発達している平安南道の順川(スンチョン)の現状だ。

中国に石炭が輸出できなくなったことで、最もあおりを食らったのは炭鉱労働者たちだ。

石炭を輸出して得た利益の約1割を経営資金として使っていた貿易会社所属の炭鉱は、操業中止や、稼働率のダウンを余儀なくされた。そのせいで、数百人の炭鉱労働者が職を失い、路頭に迷っている。

影響は炭鉱周辺にも及んでいる。労働者が利用していた食堂、炭鉱に出入りする車両が利用していた洗車場、給油所は閑古鳥が鳴いている。また、石炭を運びわずかばかりの手間賃を得て暮らしていた人々も仕事を失った。

地域住民の収入がガタ落ちした影響で、市場でもキャッシュフローが滞るなどの混乱が生じている。

順川の市場は、各地方からの物資を集め、南西に50キロ離れた大消費地、平壌に出荷する卸売市場の機能を兼ねているため、平壌の物価や流通にも影響が出かねない状況だ。

さらに、順川は豊富な地下資源と、市場で蓄積された資本を利用した軽工業が発達しているが、こちらへの影響も避けられないだろう。小規模な工場群の操業が止まると、ただでさえ高い物資の中国依存がさらに深まることになるだろう。

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当局が繰り返す核実験とミサイル発射が招いた官製不況に、市民は為す術もなく、ひたすら石炭輸出の再開を首を長くして待っている。一方の当局は「国営企業にダメージさえなければ問題ない」という姿勢のようで、深刻な不況に対して一切の対策を講じていない。

情報筋は「お上はミサイル遊びに熱中し、私たちの暮らしはますます苦しくなる」と嘆いている。