お風呂で疲れをとるために一番良い温度はコレ

写真拡大


執筆:吉村 佑奈(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


「入浴には疲労回復効果がある」ことをご存知の方は多いと思います。

疲労を回復する上でポイントとなるのがお湯の温度。

そこで今回は、疲労回復の観点からベストなお湯の温度について解説していきます。

入浴で疲れがとれるのはなぜ?:3つの入浴効果

入浴には「温熱作用」「水圧作用(静水圧)」「浮力作用」という3つの作用があります。

これらはどれも疲労回復に関係している作用です。それぞれどのようなことなのか、見ていきましょう。

温熱作用

温かいお湯に浸かると血管が拡張し、全身の血流がよくなります。これを温熱作用といいます。

血流がよくなると、血管にたまった疲労物質や老廃物の排出が促されるため、温熱作用には疲労回復効果があるといわれます。

また、血流がよくなると、疲労によってダメージを受けた細胞を修復するホルモンが全身に届きやすくなります。

水圧(静水圧)作用

お風呂に入って湯につかると、全身の表面から身体の内側に向かって水圧がかかることになります。

適度な水圧はマッサージのような役割を果たし、血液の循環をよくして、疲れをとる効果が期待できます。

浮力作用

お湯に浸かっている部分には浮力が働きます。すると、ふだん使っている筋肉の緊張が軽減され、身体を休めることができます。

このように、入浴が持つ3つの作用はいずれも疲労回復の効果が期待できるものです。

ただし温度設定を間違ってしまうと、期待するほど効果が得られなかったり、身体に負担になることもあります。

そこで次に、お湯の温度と疲労回復の関係についてご説明しましょう。

お風呂の温度と疲労回復:ベストな温度とは?

入浴の温熱作用で疲労回復効果が期待できると述べましたが、単純に温度を高くすれば疲労回復が促進されるわけではありません。

疲労回復という点からみたときのベストな温度は、37〜40℃とされています。

その理由として、次の3つが挙げられます。

その1.身体への負担を少なくしながら、血流をよくすることができる

水温が35〜36℃(「不感温度」という)の場合、深部体温(身体の中心部の温度)が上昇せず、血流の変化がみられないことがわかっています。

そのため、低めの温度で入浴しても、疲労回復効果はあまり期待できません。

一方、42℃以上の熱めのお湯に浸かると、血流はよくなりますが、血圧や心拍数が上昇するため、身体に負担がかかってしまいます。

そのため、身体に負担をかけずに疲労回復をするには、37〜40℃がベストといえるでしょう。

その2.質の良い睡眠につながる

入眠後に深部体温が下がると、良質な睡眠をとりやすいといわれています。

ある実験(※)では、40℃のお湯に10分ほど浸かって深部体温を上げておくと、その後、深部体温が下がることがわかっています。

お風呂の温度設定を調節すると、疲労回復に欠かせない良質な睡眠の確保にもつながるなんて、一石二鳥ですね。

その3.ココロをリラックスさせることができる

37〜39℃のお湯に10分以上浸かると、自律神経の1つである副交感神経が優位に働くことがわかっています。

リラックス時に働く副交感神経が優位になると、筋肉が緩んで、血流が促され、疲労回復につながります。

一方、41℃以上のお湯に浸かると、交感神経が優位に働きます。

交感神経も自律神経の1つですが、身体を活動モードにさせる働きがあるため、かえって身体を緊張させてしまいます。

朝の活動前に入る場合はともかく、睡眠前に入浴をする場合、41℃以上の熱いお湯に浸かることは入眠の妨げになる恐れがあるので、おすすめできません。


以上のことから、疲労回復を考えた時のベストな温度は、37〜40℃といえるでしょう。

副交感神経が優位になるといわれている温度(37〜39℃)と若干の誤差がありますが、37〜40℃の範囲の中で試しながら、自分にとって一番疲れがとれる温度を探してみてください。

【参考】
東京ガス株式会社『話のたまご 2015年12月号』(http://www.tokyo-gas.co.jp/tamago/pdf/201512.pdf)


<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当


<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供