堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生がアンサーする本連載。今回の相談者は、野中弓枝さん(仮名・34歳・通信関連会社勤務)

「同棲して2年になる彼が浮気しました。けじめをつけるためにも、彼の浮気相手の女性に慰謝料を請求したいです。

私と彼とは同棲して2年になります。彼の母親が、離婚家庭で育った私のことを嫌っており、反対で入籍こそしていませんが、事実上の夫婦だとお互いに思っています。彼の母親が亡くなったら入籍しようと考えています。

単なる同棲ではなく、住民票も彼を世帯主として、同一世帯として届けていますし、彼の会社にも事実上の妻として公に認められているとお互いに思っています。

それなのに、彼が浮気をしました。相手は彼の部署に配属された新卒の女の子です。彼が朝帰りしたので問い詰めたら、浮気の事実を認めました。酔いつぶれた彼女を介抱して家に送ったら、抱き着かれてそのまま男女の仲になってしまったとのことです。彼の性格から考えても、相手の女性が彼を誘ったことに嘘はないと感じます。

偶発的な事故とはいえ、私は怒り爆発で、絶対に許せません。

そこで、けじめをつけるためにも、相手の女に慰謝料を請求しようと思っていますが、事実上の妻である現在の関係でも、慰謝料請求は認められますか?」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!? お2人のお気持ちが男女交際を超え、夫婦としてともに人生を送っているということであり、また住民票も同じくし、職場等外の方から見ても夫婦として認められているということですので、お2人は戸籍は別のままという点を除いては夫婦同然のいわゆる内縁関係にあるものとみてよいように思います。

内縁関係というのは,法律上の夫婦とはいえないものの、実質的に夫婦として生活している点で、“夫婦に認められている権利関係”のうち当てはまるものは、そのまま適用して解釈されます。

夫婦間には法律的に貞操義務があるために、夫婦の一方が、婚姻外の方と男女関係を結べば、それは夫婦の他方に対する不法行為になる点は、法律上の夫婦同様に当てはまります。

一方、交際相手の女性についても、彼に事実上の妻がいることを知っていたうえで男女交際に及んだとしましょう。その場合は、その妻(この場合はあなた)の権利を故意に侵害したということができ、慰謝料請求をすることはできるでしょう。

女性がもし知らなかったという場合でも、あなたと彼との関係を会社の方のほとんどが知っていたような場合、女性の立場からしても、周囲の状況に注意すれば知ることができたといえる可能性が高く、あなたという事実上の妻がいながらも、その認識を持たなかったことに過失が認められる余地があります。ですから、彼と男女関係に及んだことにつき慰謝料責任を負う可能性があります。

実際に慰謝料請求をする場合は、男女問題に詳しい弁護士に相談を。慰謝料の金額はケースバイケース。編集部の調べでは、浮気の慰謝料は、30〜100万円程度が一般的。



■賢人のまとめ
夫婦間には、法律的に貞操義務があります。事実上の夫婦である”内縁関係”にもそれは適応されます。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/