「年頭会見では、参院選で憲法改正を問うとおっしゃっていましたよね?」

池上彰氏(65)が、安倍晋三首相(61)に斬り込んだ。首相がはぐらかすと、「保守派からは真の保守ではないとの声もある」とさらに斬りかかり、「政治家に求められるのは思想家ではない」との“迷回答”を引き出した。

7月10日に放送された『池上彰の参院選ライブ』(テレビ東京系)は、視聴率11.6%(関東地区平均・ビデオリサーチ調べ)を記録。民放の選挙特番では貫禄のトップで、視聴率3連覇(関東地区の平均)を達成した。

その人気の秘密は、「池上無双」とも呼ばれる、政治家へのタブーなき質問攻めにある。今回、俎上に載せられた新人候補の選対幹部が冷や汗まじりに振り返る。

「10秒ほどのやり取りでしたが、緊張感がすごかったです。こちらはテレビ中継は慣れていないし、言葉につまったらそれでタイムオーバー。放映後はかなり落ち込んでいましたが、いい勉強になったはずです」

「斬られた」側の痛手はいかばかりか? 今回、特番でインタビューに登場した22人に取材した。

総理への野心を斬られた石破茂氏(59)は、「稲田(朋美政調会長)さんは、総理になるうえでライバル?」と直球で聞かれた。石破氏は「お互い、安倍政権を支えている立場ですから」と苦笑するしかなかった。

石破氏が言う。

「あまりに疲れていたり、寝ない日が続いたとき、池上さんの術中にはまらないよう気をつけています。池上さんの選挙特番は視聴率が高い。引っかけられるんじゃないか、という被害者意識だけじゃなく、こちらが利用してやるぐらいの気持ちじゃないと」

福島瑞穂氏(60)は、「社民党、存亡の危機ですね」と突っ込まれた。吉田忠智党首が落選し、一人だけの当選。さらに応援演説で声がかれた福島氏には、あまりにもストレートな質問だった。だが福島氏は意に介さない様子。

「若手が育っているし、危機を乗り越え党を刷新していきます。猫なで声で聞かれるよりは単刀直入なほうが、真正面から答えられるし、聞きたいことを聞くのがジャーナリズム。こちらも、油断すると変な答えになってしまいます。誰の質問にも真正面から答えるだけです」

勉強不足を斬られたのが、朝日健太郎氏(40)。「所属したい委員会は?」と聞かれ、「これから勉強しなくては」と返したのがまずかった。「当選してから勉強する、と。それでいいのか? という気はします」とバッサリ。元ビーチバレー五輪代表の知名度を生かし、自民党公認で初当選。本人は反省しているようで…。

「先日のような受け答えが、多くの方々に不安を生んでしまったなら、私のほうこそ失礼。申し訳ありません。教育、文化、スポーツ等を対象とする文教科学委員会に所属できればと願っています」

番組は、政治家とのやり取りはアドリブが半分以上という、瞬発力勝負。石破茂氏が中継時の雰囲気を振り返る。

「つながる前、スタジオの音声が聞こえてくるんですよ。『石破さん、今日は(中継に)出るの、出ないの?』なんて。そうか、出るか出ないかわからない状態でやってるんだ、と」

池上氏本人がこう答えてくれた。

政治家は、私たちの税金で仕事をします。それにふさわしい能力と気構えを持っているかを確かめるのが、ジャーナリストの役割だと思うのです」

7月31日の都知事選投開票日にも「池上特番」が予定されている。池上氏、今度は新都知事をどうブッタ斬るのか。

(週刊FLASH 2016年8月2日号)