サイバーエージェント本社がある渋谷マークシティウエスト(「Wikipedia」より)

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 今年の10大ニュースを語るにはまだ早すぎるが、そのトップ争いをするのがSMAP解散騒動だろう。これは、単なる芸能スキャンダルの枠を超えて、現代社会で問題化する“社畜”の縮図と感じた人も少なくなかったと思われる。

 SMAPのマネージャーを務めていたI氏がジャニーズ事務所を退社するということで、騒動は一応の収束を見せたようだが、I氏が次にどんな仕事に就くのかということも話題となり、一時は「某IT関連企業の取締役に就任か」といった臆測も流れた。

 すると、当のI氏がコメントする前に、サイバーエージェント藤田晋社長がツイッターで「先週から『このIT企業ってサイバー?』といろんな人から聞かれるのですが、そんな話し全く聞いたことありません」とコメントした。

「某IT関連企業」というだけで真っ先に名前が挙がるのだから、サイバーエージェントの活躍を示す象徴的なエピソードといえる。また、騒動に巻き込まれる前に発言した藤田社長のタイミングの良さも素晴らしい。

●藤田社長のビジネスセンスは麻雀で磨かれた?

 その藤田社長のビジネスセンスは、実は麻雀で磨かれたものだという。ビジネスとギャンブルを同列に語るのは乱暴だが、攻め時、守り時など流れの変わり目を見極める駆け引きなど、どちらも勝負勘が必要とされる瞬間は少なくない。

 しかも、麻雀の師匠にあたるのが、代打ちとして20年間無敗を誇り「雀鬼」と呼ばれる桜井章一氏だというから、さらに驚かされる。麻雀に興味のない方はピンとこないかもしれないが、桜井氏は麻雀を中心に人生やビジネスに関する本を100冊近く著しているだけでなく、数多くの小説、漫画、Vシネマのモデルにもなっている。日本一有名な雀士なのである。

 藤田社長の麻雀好きが反映されたのか、サイバーエージェントが4月からスタートした無料インターネットテレビ局「Abema TV」でも、「WORLD SPORTS」「アニメ24」「ペット」といったチャンネルに加え、「麻雀」チャンネルも堂々と用意されている。

 さすが、2000人ものアマチュア雀士と国内主要プロ団体が参加した「麻雀最強戦2014」の優勝者というべきだろうか。そう、藤田社長はビジネスも麻雀もハンパなく強いのである。

 藤田社長は、学生時代に麻雀にハマり、雀荘に入り浸る日々を送っていたという。そのなかで、もっと麻雀が強くなりたいと考え、桜井氏が主宰する東京・町田の「雀鬼会」の門を叩いた。このエピソードは、桜井氏と藤田社長の共著『運を支配する』(幻冬舎)に詳しい。

 藤田社長が「雀鬼会」での経験を通じて感じたのは、ギャンブルもビジネスも、スタートは不平等ということだ。麻雀では手牌の善し悪しがあり、ビジネスではコネや派閥、袖の下などもあるだろう。その上で、冷静な状況判断を行い、いかにほかの人より早く上がるかが重要となる。

 また、4人で行う麻雀は、勝てる確率は基本的に4分の1だ。つまり、最終的にトップになる人も、負け続けることに耐える忍耐力が必要ということだ。

 そして、藤田社長が桜井氏から学んだ最も重要なことは、「己を律すること」と「正々堂々と戦うこと」だという。至って当たり前のことのように感じるかもしれないが、そんな基本的なことこそ、欲に支配されやすく頭が熱くなりやすい勝負事において、本当に重要なことなのだろう。ちなみに、藤田社長は26歳の時にサイバーエージェントを株式上場(東証マザーズ)させ、当時史上最年少の記録をつくっている。

●ITベンチャー社長には元パチプロがゴロゴロいる?

 蛇足ながら、以前に有名パチプロの方を取材した際に「ITバブルで脚光を浴びている経営者が何人もいますが、そのなかに、昔のパチプロ仲間が片手じゃ収まらないくらいいるんですよね。パチンコで稼いだ資金で、IT企業を立ち上げたんでしょう。ギャンブルも経営も、流れの読みどころが大事ですから」という話を聞いたことがある。

 ギャンブルで培った資本とセンスで、ビジネスでもトップに駆け上がる。そんな人は、どうやら藤田社長だけではないようだ。もちろん、ビジネスにはビジネスのセオリーややり方があり、それを踏まえた上で真面目に努力することが大切だろう。しかしながら、運気をつかむことができなくては勝てないのも事実だ。そのセンスを磨くために、雀荘や競馬場、パチンコホールに足を運んでみるのも悪くないのではないか。

 そんな言い訳を胸に、羽を伸ばす程度の気持ちで、出かけてみてはいかがだろうか。何か新しい発見があるかもしれない。ただし、身の丈以上のギャンブルは控えるように。そして、当たり前だが、違法なカジノ店やスロット店などには、くれぐれも出入りしないようにしたい。
(文=星野憲由)