「太陽の1.3億倍の明るさ」で生涯を終えた星、NASAが超新星爆発の光を初リアルタイム観測

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NASA のケプラー宇宙望遠鏡が、超新星爆発の瞬間を初めて可視光線でとらえました。最後の瞬間を迎えたのは地球から12億光年離れたところにある「KSN 2011d」で、太陽の約500倍の大きさがある赤色超巨星でした。NASAと米ノートルダム大学の研究チームは、これまで3年間の間に約50兆個もの恒星のデータを蓄積しており、その中で超新星爆発を起こしたとみられる「KSN 2011d」と、地球から7億光年の位置にある太陽の300倍の大きさの「KSN 2011a」という2つの赤色超巨星のデータを分析、超新星爆発の瞬間の発光現象の可能性を探っていました。

超新星爆発の際は、映画などにあるように突然物理的に破壊されるわけではありません。まず恒星の中心部で大きな爆発があり、その衝撃波が恒星の地表面に見える位置まで到達した時に恒星の明るさが急激に増したように見え、その後は暗くなっていくと考えられています。

2011年10月に衝撃波の発生が観測された「KSN 2011d」の光度の変化がシミュレーションで得られる超新星爆発の衝撃波発光現象にかなり一致していることを発見しました。チームは「とらえられた爆発の衝撃波はわずかに20分間だけでしたが、その間に超新星の明るさは太陽のおよそ1.3億倍に達した」としています。

もう一方の「KSN 2011a」のほうは、2011年7月に超新星爆発を起こしていたものの、明確な光度の変化は観測できませんでした。研究チームはこの星については、爆発の前に星のエネルギーとなるガスが重力を脱して恒星の周辺に漂っていたため、表面での発光現象がなかったのではないかとしています。

研究チームはまた、リアルタイムに観測できたデータから超新星爆発の研究をさらに深めていくとしています。



超新星爆発の衝撃波は超新星残骸となってその後10万年単位で宇宙空間に広がるとされます。

巨大な恒星の内部では核融合反応の結果、最も安定した元素である鉄が生み出されていきます。一方、鉄より重い元素、たとえば金やウランなどはすべて超新星爆発の瞬間の巨大なエネルギーによって合成され、宇宙空間にばらまかれるとされます。我々の体内に含まれる亜鉛が鉄より重い元素であることを考えると、超新星爆発がなければ我々も存在し得なかったと言っても過言でないかもしれません。

ちなみに、ケプラー宇宙望遠鏡は宇宙望遠鏡は2013年に一部の姿勢制御用ホイールの故障などで制御不能となり、観測ミッションを終了し廃棄される予定でした。しかしまだ動くホイールと燃料の残るスラスター、さらに太陽光圧を使って姿勢制御を可能としたことで2014年より「K2」と銘打って新たなミッションを開始しました。2015年にはケプラーが発見した太陽系外惑星が累計1000個に達しています。

論文は:arXiv.org、Shock Breakout and Early Light Curves of Type II-P Supernovae Observed with Kepler(P. M. Garnavich, B. E. Tucker, A. Rest, E. J. Shaya, R. P. Olling, D. Kasen, A. Villar)

超新星残骸のひとつ「ティコ」