高温・高圧下で樹脂が固まってできる琥珀(こはく)は、古来から宝石として重宝されてきましたが、ときおり虫や植物、小動物が中に閉じ込められたものが見つかり、琥珀の中でも希少性の高い逸品として重宝されます。宝石としてもさることながら、大昔の生物を知るための研究資料としても高い価値を持つ琥珀の中でも、ミャンマーで見つかった9900万年前のトカゲが含まれた特に貴重な琥珀が、アメリカの研究者によって生物の進化をたどる貴重な資料として解析されています。

Mid-Cretaceous amber fossils illuminate the past diversity of tropical lizards | Science Advances

http://advances.sciencemag.org/content/2/3/e1501080

99m-year-old lizard trapped in amber could give clue to 'lost ecosystem'

https://www.theguardian.com/science/2016/mar/06/99m-year-old-lizard-trapped-in-amber-could-give-clue-to-lost-ecosystem

Amber-trapped lizard fossils reveal 'lost world' - BBC News

http://www.bbc.com/news/science-environment-35718404

これがミャンマーで発見されたトカゲ入りの琥珀。琥珀の年代から9900万年前のトカゲであると見られており、これまでみつかっていた琥珀内のハ虫類(カメレオン)の最古記録を7500万年も更新したとのこと。ちなみにこのトカゲは成長途中の子どもだそうです。



手もくっきり確認できます。トカゲの形がはっきりと確認できる非常によい保存状態に、研究者は歓喜したとのこと。



今回、解析された琥珀内のトカゲはミャンマーでみつかった世界最古のトカゲを含む全12体。個人のコレクターを経由して、10体をアメリカ自然博物館が、2体をハーバード大学が保管していたものだとのこと。それらの標本が集められて、X線や走査型電子顕微鏡(SEM)によって、琥珀やトカゲを傷つけない手法で解析されることになったそうです。



X線によって骨格が分析されました。



また、顕微鏡によってウロコや手のヒレもばっちり確認できました。



解析の結果から、トカゲを発掘地(生息地)別に分類したり……



形態調査から系統図として、トカゲの進化の歴史が上書きされました。



世界最古のトカゲには特徴的な舌があることが確認され、この舌の機能はその後、カメレオンに進化したと考えられるとのこと。また、現代のトカゲの特徴である枝にのぼることができる機能的な手は、9900万年よりもずっと後に発達したことも分かったそうです。研究を主導したサム・ヒューストン州立大学のフアン・ディエゴ・ダザ教授は、「これらの質・量ともに素晴らしい化石はトカゲの多様性を表現しています」と述べ、骨格や内臓、ウロコなどが保存された琥珀の標本によって、古代のハ虫類と現代の子孫との進化の系統の空白を埋められると期待しています。