「ガラスの3Dプリンター」でつくる建築:ネリ・オックスマンの未来構想

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1000℃以上に熱せられたガラスで立体物を形成する3Dプリンター。いまはまだ小さな器しかつくれない未完の技術だが、MITメディアラボの教授、ネリ・オックスマンは、建築規模のサイズを出力できるようになる時代を見据えて、「生命体が循環するビル」をつくろうとしている。(雑誌『WIRED』VOL.20より転載)

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世の中に登場した当初から、3Dプリンターが抱え続けている課題は、「その技術によっていったい何ができるのか?」というものだ。プラスティックから金属、ワックスにいたるまで、新素材が試されるたびに、その疑問は投げかけられてきたが、次はガラスの出番だ。

デジタルデザインと生物学的デザインの統合を追究するMITメディアラボのリサーチグループMediated Matterを率いるネリ・オックスマンの研究チームは、MITガラスラボやハーヴァード大学ウィス研究所と共同で、ガラスのための3Dプリンター「G3DP」を製作した。窯の中でガラスが1,000℃以上に熱せられ、それがアルミニウムのノズルを通して押し出される仕組みになっている。透明でどろりとしたガラスのフィラメントがノズルの先端から蜂蜜のようにたれて、うねのある構造へと結晶化していく製作中の光景は、実に美しい。

4,500年以上前に発明されたガラスは、3Dプリンター「G3DP」によって新たな進化を遂げる。

しかしながら例の問いは依然として残る。「だからその技術で何ができるわけ?」。2016年にニューヨークのクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館で公開されるオックスマンのガラスの3Dプリント作品は、花瓶のように装飾的だがサイズはどれも小さいものばかりだ。なぜならG3DPが出力できるガラスのフィラメントは直径10mmで、幅10インチ、高さ11インチ以上のものはつくれないからだ。

ただし、これはあくまでもオックスマンが3Dプリントガラスの今後の展開を見据えてつくったコンセプトであり、さまざまな形状を試して、出力される物体の見た目の品質や構造上の強度などを実験するためのものであると考えるべきだろう。

オックスマンのチームはこの研究を利用して、(文字通り)はるかに大きな目的を達成しようとしている。G3DPのプロトタイプを最初に職場で見たときのことを彼女は回想する。「ミース・ファン・デル・ローエの“骨と皮の建築”がすぐに頭に浮かびました」

1920年代初頭、ミースはガラスでできたベルリンの超高層ビルのコンセプトを発表した。当時はまだ石が資材の王様だった。つまり、全面ガラスのファサードという構想は、画期的だったのだ。ミースから始まったガラスの機能的な限界を超えようする探求は、その後さまざまな建築家によって引き継がれた。最近では、大手設計事務所のフォスター・アンド・パートナーズが、50フィートの巨大なガラスパネルを使ったアップルストアを手がけて話題にもなった。

現在オックスマンは、ガラスの3Dプリンターによって「すべてがガラスでできたビル」をつくることはできないか、という構想を練っている。

「近代建築のように、機能的な仕切りを設けたりするのではなく、ビルの内部と外部を一体化させたようなデザインはできないものだろうか」と彼女は話す。「水や空気を循環させるチャネルやネットワークも、ガラスの構造の中に組み込むことはできないかと考えています」

3Dプリンターによって、ガラスの外側だけでなく、従来の製法ではつくれなかった複雑な「内側」もつくることができるようになる。従来のやり方ではガラスの内面は必ず滑らかになってしまったが、3Dプリンターでは、その質感や形状を細かく制御できる。このことが建築上いかに多くの可能性を生み出すか想像を膨らませてみよう。パリのポンピドゥーセンターのようなビルの透明なファサードの内部に、より複合的な機能をもたせることが可能になるかもしれない。例えば、内壁に特定のパターンを施して照明の効果をカスタマイズしたり、ガラスの管を通して生体物質を循環させたり、光ファイバーをファサードに通すことで、データ転送すらできるようになるかもしれない。

より理解を深めるために、オックスマンが手がけたほかのプロジェクトにも目を向けてみよう。「Wanderers」という作品で、オックスマンは、光合成をするバクテリアが中を駆け巡るマイクロ流体チューブを使った「ウェアラブルスキン」を製作した。スキンを透明にした狙いは、それが環境に反応し、順応させることである。ガラスの3Dプリンターは、理論上、建築規模に達すればこれと同じことが可能になるはずだ。それがオックスマンのチームがいま取り組んでいる課題だという。

オックスマンの構想はイメージしづらいかもしれないが、まだ不確定要素が多い以上、それも仕方がない。G3DPによって将来的に何が可能になるのか、はっきりとしたことはまだ誰にもわからないのだ。オックスマンのチームにはアイデアはあるが、まだ研究段階だ。生命体が循環するビルを生み出す劇的なイノヴェイションはしばらくは生まれなさそうだ。いまのところは、見栄えのいい飾り物やコップで、我慢するしかない。

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