年収5000万円以上! プライベートFPが見た「金持ちの24時間」
限られた時間をどう使い、巨万の富を手繰り寄せたのか。プライベートFPとして多くの大富豪と接してきた中桐啓貴氏が、彼らの意外な時間の使い方について語る。
■【1】むやみに携帯やメールをチェックしません
一般のサラリーマンなら携帯の着信音やスマホにメールが届くとそのたびに気になるでしょう。それは、取引先からの重要な連絡かもしれません。ところが、お金持ちの方たちは携帯やスマホのチェックはほとんどしません。
私が何かの用事でお会いしている最中はもちろん、ビジネスとはあまり関係のないゴルフをしている間や昼休みのときでも、携帯やスマホを見ることはないのです。その代わり、ゴルフをセッティングするような、富裕層の下で働いている人たちはしょっちゅう携帯やメールを見ます。
なぜ、お金持ちの人たちが携帯やメールを気にしないかといえば、たいていのことは自分の“右腕”に任せているからです。信頼できる幹部を育てているので、最終判断は自分でするにせよ、細々としたことに煩わされることはありません。もちろん経営に関する一番重要な数値や情報は右腕から聞いています。
だから、商用でもプライベートでも、お会いしている間に携帯やメールの着信音が次々と鳴る人は、まだまだその域にまでいっていない証拠といえるのです。
■【2】通勤や移動中は、オーディオテープを
お金持ちの方たちはクルマで移動することがほとんどです。飲食店をたくさん持っていて現場をあちこち回らなければいけないような経営者は運転手付きですが、そうでなければ通勤もゴルフの往復も自分でクルマを運転します。
わりあいと多いのが、運転しながらオーディオテープを聴く人です。
たとえば「日経トップリーダー」という経営者向けの雑誌があって、毎月CDが付いてきます。内容は、著名な経営者やコンサルタントの講演とか、税務アドバイス、マーケット情報などです。1時間半程度で聴き終わります。それを1回きりでなく、何回も聴きます。本は1度読んだら終わりですが、オーディオテープは腑に落ちるまで聴き込むことができます。
そのほか、『人を動かす』で知られるデール・カーネギーや松下幸之助、稲盛和夫さんなどの著書がCDになっているので、そういう経営の古典、名著をよく聴いています。経営コンサルタントの小宮一慶さんも人気です。
富裕層はドライブ中も時間をムダにせず、格好の勉強時間にしています。
■【3】昼・夜の会食を上手に使います
富裕層が昼の会食に選ぶのは会員制のレストラン。サービスが行き届き、スタッフとも顔見知りなので気張らないのがいいようです。細かいことに気がつきやすい方たちなので、どんな扱いを受けるかわからない店には行きません。
けっして豪華メニューではありません。ランチでイタリアンなら前菜、パスタ、コーヒーといった軽めのコースです。メーンの肉や魚まで食べる人はあまりいません。1時間くらいで切り上げます。
夜の会食もやはり10年、20年と通っているところです。ミシュラン三ツ星のような店はあえて行きません。どんなに人気の寿司屋でも、隣に若い女性を連れてシャンパンを開けるような無粋な客がいたら台なしだからです。
ワインがお好きな方が多く、万人に美味しさが伝わりやすいカリフォルニアワインを選びます。3万〜5万円くらいのボトルが多く、「インシグニア」や「オーパスワン」といった高級銘柄です。フレンチや懐石のコースで2時間くらい過ごし、その後はサッと帰るのが定例ですが、まれに馴染みのクラブに飲みにいくこともあります。
■【4】10年スパンで人を育てることを考えます
お金持ちの方たちは、10年先を見て人材育成を行います。
ある経営者は、見込みのある若い社員を大学院に行かせ、その間に2年間、アメリカに留学させました。留学から帰ってきて大学院を修了したら、今度はアメリカの会社で2年間くらい働かせて経験を積ませます。
留学費用などがかなりかさむ計算ですが、すべて会社持ちです。10年後の会社をつくるのは人だと考えているので思い切った投資をするのです。その方も「10年後から頑張って働いて、かけたお金を返してもらえばいいから」と語っていました。
それだけコストをかけた人材です。ふつうなら、すぐ幹部に登用したくもなるでしょうが、とくにオーナー企業の経営者はそうしません。経営層の中心に置くのは古株の社員であることが多いのです。サラリーマン社長が見せるような、何人抜きで取締役に抜擢するということはあまり見たことがありません。
いくら有能な若手といっても、序列を無視して昇進させれば社内に軋轢が生じるので、あくまでも慎重な姿勢を保つのです。
■【5】SNSやネットサーフィンより、読書に費やします
一般のサラリーマンは手元にスマホがあると、つい見てしまうでしょう。休日の自宅や平日のオフィスでも(許されれば)、ネットサーフィンしてしまう人も多いのではないでしょうか。でもお金持ちの方たちで、時間つぶしにSNSをのぞいたり、ネットサーフィンする人はいません。
40代、50代であればスマホで情報を見る人も少しはいますが、60代以上ではまずいません。理由の1つは、総論にも触れられているように、ナマの情報以外、信用しないからです。と同時に、ネットの情報を見る時間をムダと思っているからです。
そんな時間があれば、読書をします。それもサッと読める文庫や新書ではなくハードカバーの単行本です。
内容は古典や歴史ものです。『論語』など古くから人間の本質や、人の生きる道を説いたような古典を好む人もいますし、戦国武将ものを好む人もいます。また、戦中に子ども時代を過ごした方は第二次世界大戦にまつわる書物がお好きなようです。たまに、そういう方から「キミは靖国参拝はどう思うかね」と問われ、答えに窮したこともあります。
■【6】お金持ちの方たちは資産を増やすことよりも、減らさないことに気を使います
株式の売り買いのタイミングをいつも気にしていたり、デイトレーダーのように四六時中、株価の動きやマーケット情報にくぎ付けということはありません。資産の運用管理は私たちのようなプライベートFPに任せてしまうケースが大半。ただし、インフレに関する情報には敏感で、世の中がインフレになるのを恐れています。所有する資産の価値が下がることを非常に嫌がるのです。そういう方たちは金融資産がある程度たまってくると、金を買ったり、国内の不動産を買って資産を移し、インフレに備えています。
■【7】ゴルフ、絵画、旅行……趣味でストレス解消します
富裕層にとって一般的な趣味といえばゴルフです。商用、プライベートにかかわらず、ゴルフを楽しみます。
そのため、ふだんの休日は家族と過ごす時間があまりありません。その代わりに夏休みや冬休みなど長い休暇のときは夫婦や家族で海外旅行です。たとえば若いころ苦労をかけた奥さまのリクエストで、スイスやオーストリアのような風光明媚なところへ出かけます。
お金持ちで意外と多いのが、絵を描く趣味です。水彩画や油絵などスタイルはさまざまですが、長期の休暇を使って絵に没頭します。絵を知り合いにプレゼントする人もいて、私のオフィスでもいくつか飾っています。
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中桐啓貴(なかぎり・ひろき)
山一証券を経て、メリルリンチ日本証券で富裕層の資産運用コンサルタントに従事。米留学から帰国後、FP法人ガイア設立。著書に『会社勤めでお金持ちになる人の考え方・投資のやり方』など。
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(伊田欣司、大下明文=構成 PIXTA=写真)