僕が中学一年生の頃の話だ。担任の先生は50歳前後のおじさんだった。髪の毛が薄かった。ところが、夏休みが終わり、ホームルームで久しぶりに顔を合わせると、その髪が猛烈に増えていた。そりゃあ、教室はざわついた。でも誰も先生にそのわけを訊かなかった。だって、見れば分かるんだもの。次の日から生徒たちは陰で、彼をあだ名で呼ぶようになった。それはもう、この上なく安直な蔑称だった。翌年、彼は学校からいなくなった。別