『宝島』(スティーヴンソン)、『海底二万マイル』(ヴェルヌ)など、冒険小説は何歳になっても、私たちの心をつかむ。もしかしたら、私たちには「知らない場所を、自分の知力と体力を頼りに旅してみたい」という本能的な欲求があるのかもしれない。『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)もまた、私たちの奥深くに刻まれた旅心を刺激してくれる小説だ。「神子」にまつわる伝説と、その伝説に魅せられた人たちが織りなす人間ドラマと、