7月の最終火曜日だったその日、東京は快晴で、朝から気温はぐんぐん上昇した。午前7時27分、霞が関の検察庁舎正面玄関に黒塗りの大型車が滑りこむ。その後部座席から降りてきたのはひとりの大物政治家だった。彼は、カメラの放列の前に軽く右手を上げると、そのまま庁舎へと入っていった――。その日は1976年7月27日、これが前首相・田中角栄の東京地検出頭の瞬間であった。このあと7時50分には田中に対して外国為替管理法違反