日本のモノづくりの未来とは

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 毎回、時代の先をいくイベントを開催するツブヤ大学。2015年1月27日には、「日本のmakeはどこに向かうのか?」をテーマに、「DMM.make AKIBA」の支配人・吉田賢造氏、角川アスキー総合研究所の取締役である遠藤諭氏、株式会社ABBALab代表取締役であり、DMM.makeのプロデューサーでもある小笠原治氏、株式会社DAQの代表取締役である後藤鉄兵氏、株式会社ケイズデザインラボ代表取締役社長である原雄司氏、土佐信道プロデュースによる芸術ユニット、明和電機から土佐信道氏、そして東北芸工大客員教授で銀河ライター主宰、今回のイベントの司会進行役を務める河尻亨一氏の7名という豪華メンバーを招いてトークイベントを開催。

 全3回に分けてレポートしている最後は、モノづくりの未来はどうなるのかについて。

makeの未来は魔法の時代? IoTは本当に求められているのか

遠藤「インターネットやモバイルがここまで広がって、人が使うネットに関してちょっと一段落したようなところがありますね。そこで、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)という話になってきた。ネットになんでも繋がりうる世界が見えてきた。先日、うちのセミナーで慶応義塾大学の村井純さんが、これからはすべてのモノがネットに繋がった世界を自分たちでデザインする時代なんだとおっしゃっていました。クラークの第3回法則というのがあって「きわめて高度に進化した科学は魔術と見分けがつかない」というものですけど、まさにそれだという意見もあって。だったらすべてのモノがネットに繋がった時代は「魔法の時代」なんじゃないかと。魔法の時代を設計できるって……すごくないですか? IoTって言葉では矮小化されますけど、今、全く違う世界の入り口に来ているんだってことをあらゆる人が認識しなくちゃいけないと思うわけです。だって、ハリーポッターみたいにバトンひと振りで、たとえばこの床の色を一瞬で変えたりということができるんですから。そういうことが顕在化して言われていないし、意識革命的なことができていないと思うのですけどね」

土佐「魔法の世界になってきているといいますが、なにか魔法に飽きてき始めている僕たちがいるのではないでしょうか。僕のような芸術家と魔法使いは違います。かっこよくいいますと、芸術家は自分の中のリアリティを探す人種。それを掘り起こして、自分の中のリアリティを見つけます。魔法の世界はリアリティがない世界で、それってなんだかゾワゾワしませんか。だからイスラム国が出てきて、アニミズムも常識も通じない。こういった世界になってきている。それをどう思いますか? と問いかけたいですね」

河尻「今、僕は60〜70年代に活躍されたある女性の伝記を書いているんですが、土佐さんが言ったように、未来は実は昔の歴史の中にすでにあるのではという考え方で見ていくと、モノづくりのやりかたがすごいんです。例えば、1枚のポスターにどうしてこれだけの情報を詰め込めるのだろう、という。当時はネットも携帯もないし、ファックスすらも普及していないにも関わらずです。繰り返す歴史の中で、どのくらいの距離感で魔法と付き合っていけばいいのかということですね」

遠藤「歴史は繰り返しますが、悲しいかな、テクノロジーは進化しかしないんです。いったり来たり進化しているとは思えないジャンルもあるけど、テクノロジーだけは一方向的に進化しかしない。それってよい話ばかりではなくて、超ヤバい話でもあって、どう言ったところで人類はそれと付き合っていかなきゃいけないんですよ。どう整合性をとるか、ということがたしかにとても大事になってきますね」

小笠原「確かにテクノロジーは進歩します。よりいいものを積み上げていこうという強い人理論です。一方で、魔法に対する反抗心はどうしたって生まれます。これって弱い生物の進化と似ていると思うんですけど、自分で魔法のようなものを作っておいて、進化の過程にそれを使っているだけじゃないかって感じているんですけど、どうでしょう」

原「今年CESに行った時、向こうではIoTでなくIoE(Internet of Everything:すべてのインターネット)と言っていました。モノだけでなく、遠藤さんが言ったようにすべてのものがインターネットに繋がる時代なんですよ」

後藤「ごめん。僕は別に魔法でもいんじゃね? って思う(笑)。たとえば坂本龍馬の時代に土佐から江戸には徒歩で歩いて行ってたって言うじゃん。当たり前だけど。でも今の時代には当たり前の様に新幹線や飛行機で行くよね?テクノロジーってそういう事なんじゃないかな?この世のほとんどはすでに魔法だらけだよ」

 考え方は様々だが、モノづくりが新しい時代に突入しつつあるのは、確かなのだ。

-完-

ツブヤ大学とは?NPO法人ツブヤ・ユニバーシティーが運営する企画。2010年1月25日より本格的に始動。開始当初よりUstreamなどネット配信を活用した企画を行っている。マンガやゲームなどのサブカルチャーを中心に、アイドルビジネスに迫るイベントや建築に関する企画まで尖った企画を多く行っている。公式サイト/

(取材・文/DMMニュース編集部)