日本のモノづくりの課題とは

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 毎回、時代の先をいくイベントを開催するツブヤ大学。2015年1月27日には、「日本のmakeはどこに向かうのか?」をテーマに、「DMM.make AKIBA」の支配人・吉田賢造氏、角川アスキー総合研究所の取締役である遠藤諭氏、株式会社ABBALab代表取締役であり、DMM.makeのプロデューサーでもある小笠原治氏、株式会社DAQの代表取締役である後藤鉄兵氏、株式会社ケイズデザインラボ代表取締役社長である原雄司氏、土佐信道プロデュースによる芸術ユニット、明和電機から土佐信道氏、そして東北芸工大客員教授で銀河ライター主宰、今回のイベントの司会進行役を務める河尻亨一氏の7名という豪華メンバーを招いてトークイベントを開催。

 全3回に分けてレポートしている今回は、モノづくりにおける日本の今度。

「3Dプリンタはもう特別なものではない!?」CESで実感した今のmake

原「僕は今年のCES(毎年1月にラスベガスで開催される世界最大規模の家電見本市)に足を運んで思ったのは、日本の大手メーカーは実は閑散としているようなブースもありました。逆に言えば盛り上がっているところは、盛り上がっていました」

河尻「まさにCESのブースを見ていけば、今後の流れがわかるということですね」

原「3Dプリンタに関しては、もうなんら特別なものではなかったです。それで何を作るか、ということこそが大切ですね。新しいアイデアが最重要視されるとなったときに。単なる使用方法だけでない発想を鍛えるにおいて、教育やMAKERの現場ってどうなるのかな、と思わされました」

小笠原「僕もCESは今回発表したスマホ連携のスポーツ用品ブランドXONを出しているCerevoとして行ったんですが、会場内でもとくにサンズというエリアにスタートアップが集まっていて、面白いということで、テレビ取材も多く入っていました」

河尻「じゃあ、makeが今すごく盛り上がりつつある市場ということは間違いなさそうですね」

小笠原「そうですね、大手さんの今年の展示はこれまでC向けイメージだったのが、B向けのアピールに偏っていたかと思います。どう市場を考えるかが大事ですね。これから生まれる新しいものがどれくらいの市場になるか、受け入れられるか、作っていきたいか。ただ、アメリカのプレイヤーたちは、もうどんどん進化しはじめているんですが、日本の場合、その後追いが多く、誰が先陣を切っていくの、っていうところですね。ただ、今後この分野は間違いなく“バブり”ますよ」

 ここから話は、makeの市場がバブル状態に突入する寸前だという流れに。いったいどのようなmakeを進めていけば、日本のmake市場も海外同様“バブる”ことができるのだろうか。

遠藤「僕はCESには3、4年前から行っていないのですが、それまで長年コンピュータ業界は見ています。90年代終わりから00年代初頭のCESでは、主要なIT企業のCEOたちが、家庭内のエンターテイメントはすべてネットワーク化して楽しめるようになると訴えていた。ソニーであれば当時の安藤国威社長、マイクロソフトであればビル・ゲイツという具合でね。安藤さんなんかそのときには手のひらにおさまる端末が重要になるとも言っていましたからね。ところが、ソニーもマイクロソフトもお家の事情でビジョンがどうもブレてきたようなところがありました。よく考えると、その頃から変わらないスタンスでやっているのがアップルなんですね。貫いてやっていることが変わらないからこそ、クリックホイールなり、マルチタッチなりちょうどよい技術が出てきたときに、いちばん馴染む形で使うことができる。もしいまがmakeがバブっている状態の一歩前なのだとしたら、スタンスやポリシーを変えず続けられるかが勝負ですね。いかに経営が重要かということなんですが」

小笠原「日本ではまだバブっているとは言えませんが、ちょうどいままさにそうなって行っていると感じます。ネットバブルの90年代後半、まだVHSが残っていた時代にマルチメディアの洗礼を受け、その頃から動画配信サービスを始めて、しっかり投資をして継続してきたのがDMM。この分野でも先を見越し、続ける意思のある人がバブルの間に生まれると良いですね」

後藤「こういうmakeがバブっている雰囲気は僕のように商品を作り実際に販売までしているmakerにとっては最高の環境ですね(笑)。僕も今回3回目のCES出展でしたが、そこで出会った人たちが「日本は製造業のオープンソース化をするべきだ」と言い始めています。日本のこれまでの製造業って、技術をとても機密にしたがりますが、世界の舞台のCESで何もかも機密ってなにか意味あるの?って。ブランドやメーカーが機密を持つのは解るけど製造する立場はその昔webの世界でオープンソースが台頭した様に、これからはリアルの世界でオープンソース化することがとても大切。それってけっきょく平たく言えばコラボレーションしましょうって事なんです、そうしたら新しいものが生まれるじゃないですか」

 後藤氏の指摘により、日本の成長を妨げ、バブルへの突入を妨げていると思われる要因が見えてきた。

原「そう、日本の欠点って村コミュニティ気質にありますよね」

小笠原「この20年間、日本の大手家電って低成長産業だったんです。一方、インターネットは急成長産業でした。だから、お金はこっち側に集まりますよね。偏ってるんだから、混ぜようぜ、って(ハードウェアスタートアップを始めた)。Cerevoも去年から増員したメンバーはほぼ大手メーカー出身。そういう混ぜ方が僕には楽しいし、今まで先陣が作ってきたパターンにならって作ってもつまんなくない? 時代に合ったものを作りませんか、っていう話だし、それに乗ってくる人といろんなことがしたいですね」

 現在家電が低成長産業ということももちろんだが、いかにスタンスを貫き、先陣を切って挑戦できるか。そうした日本の課題がCESから見えてくる。日本のスタートアップは、今後いかに面白いものを見せてくれるのか。それが日本のmake市場を“バブらせる”第一歩と言えるのではないだろうか。

続く

ツブヤ大学とは?NPO法人ツブヤ・ユニバーシティーが運営する企画。2010年1月25日より本格的に始動。開始当初よりUstreamなどネット配信を活用した企画を行っている。マンガやゲームなどのサブカルチャーを中心に、アイドルビジネスに迫るイベントや建築に関する企画まで尖った企画を多く行っている。公式サイト/

(取材・文/DMMニュース編集部)