中国の結婚式「10日間続く死の宴」に参加してみた
2014年11月半ばから1か月ほど、筆者は中国東北部(旧満州)、黒竜江省ハルビン市から約300キロの地方都市・方正県とその周辺の村々に滞在していた。
知人の結婚式に招かれたのだが、大げさでなく死にそうになった体験をここに報告したい。
「偽装結婚妻」を多数輩出する土地柄にして「怒羅権」の故郷方正県は人口約20万人の地方都市。冬の平均気温はマイナス20〜30度という極寒の地だ。
「偽装結婚妻」を多数輩出し、暴走族「怒羅権」の故郷としても知られる地域である。とにかく、尋常ではない寒さで、ユニクロのヒートテックなど何の役にも立たない。
知人の結婚式は11月20日。だったのが、その3日前から怒涛のような「結婚式週間」ははじまった。筆者は、方正県近郊のT村にある民家で寝泊りしていた。ところが、毎朝6時過ぎにはお迎えの車が来て、半ば強引に拉致されると、結婚する男の実家に連れて行かれる。
男の父親は、この街の成功者の1人。3LDKのマンションは、30人以上の“親戚”たちでぎゅうぎゅう詰めである。
ソファに座ってヒマワリの種を食べる者、食卓で朝食のマントウを食べる者、すでに酒を飲みながら麻雀に興じる者、何やら大声で喚き散らす者……朝っぱらから異様な騒ぎである。
ちなみに、ヒマワリの種だろうが、タバコの吸殻だろうが、床に直接捨てるのがこちらのスタイル。筆者が携帯用吸殻入れを使っているのを見ると、
「おい、なにやってんだ。ここはお前の家だと思って、遠慮するな」
の大合唱。結婚する男の親戚の1人で、日本に住んでいたこともある男は言った。
「こっちの結婚式は10日間続くんだよ。朝から晩まで、ひたすら食べて、飲んで、遊ぶだけ。仕事? そんなもの二の次だよ。一族のイベントが何よりも優先される。それが東北(旧満州)だ」
男の言葉に何の誇張もないことがすぐにわかった。その日から10日間、筆者は「死の宴」に付き合うことになる。(後編に続く)
(取材・文/小林靖樹)