衆院選勝利でアベノミクスも円安も続行……

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 正月なのにネット見て終わってしまったという廃人の皆さん、あけましておめでとうございます。ネット界の白つめペンペン草、めいろまでございます。今年も罵詈雑言におつき合い頂ければ幸いです。

 明菜ちゃんはメンヘラーの星だわ、と思いつつ紅白を見ながら年末を過ごしていたワタクシですが、編集部様より、2015年の予測を一発お願いしますという依頼を頂きましたので、今回のコラムでは「今年の日本はどうなるか」ということを真面目に考えてみたいと思います。

アベノミクスで庶民はますます悲惨になる

 先日の選挙では中長期的な経済問題は真剣に議論されませんでした。選挙に行く様な有権者の多くは「ふくらはぎさえ揉めば長生きできる」と信じている老人ですので仕方ありませんが、「今年の日本はどうなるか」において最も重要なのは経済問題に他なりません。

 日本でも海外でもアベノミクスの効果が注目されておりますが、経済再生どころか、庶民の生活をますます苦しくすることが目に見えています。

 ここでアベノミクスについておさらいしてみましょう。

 その政策は「3本の矢」より構成されています。(1)金融緩和でインフレを起こしデフレマインドを脱却、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略、の3つです。

 一言でいうと「お金をどんどん刷って、役所は借金してお金を使いまくって、商売人がどんどん投資する仕組みを回せば、日本の景気が良くなるはずだわ」ということです。

 (1)の「金融緩和」をもうちょっと詳しくいいますと、日本銀行がお金をたくさん刷って、世の中に出回るお金を増やします。お金が増えると、円が安くなります。

 つまり前は100円で1ドルに交換できたのに、世の中に出回っている日本のお金が増えたので、120円なければ1ドルをもらえなくなるという仕組みです。

 そうすると、外国に物やサービスを売って儲けている会社は、前よりも安く外国に物やサービスを売ることができるので、輸出が増えます。増えると国内の仕事が増えるので、大企業も下請けの中小企業も儲かる。儲かると企業は設備に投資したり、働く人の給料も増えるので、みんながお金を使う様になる、よかったですね!という仕組みです。

円安で日本人はもっと貧乏になる!

 しかし世間様はそんなに甘くはありませんでした。輸出していた様な企業は円が高い時に海外に工場や販売所を移動して儲けていたので、円安になっても国内に仕事は増えません。国内で物やサービスを作って売っている会社は、以前よりも外国から輸入する材料の値段が上がってしまったので大損です。

 今年もこの状況が続くのであれば、一部の大手企業はウハウハですが、国民の大半は大変厳しい状況におかれるでしょう。円安で物価はあがり、貧乏人の生活は益々苦しくなるでしょう。

国の借金はますます増える!



 刷ったお金を役所がジャンジャン使って世間様に仕事を作って景気を良くしましょう、という予定だったのですが、そもそも日本は多重債務者の様な状況に陥っているので、微妙です。

 現在日本の国家赤字はGDPの227%です。アメリカの場合はGDPの100%、あのダメ国家ギリシャは180%、いい加減国家イタリアでさえ160%、真面目なドイツさんは80%です。OECD諸国の平均は約111%なので日本はその2倍以上です。つまり、日本の人全員が給料を国の借金返済に回しても、全部返すのに2年半ほどかかると言うことです。

 日本は貯蓄が豊富で財政赤字の穴埋めするための資金を海外からの調達に頼っていないから大丈夫だとはいえ、クレカの多重債務者も真っ青の莫大な借金です。国債をチャラにしたり、スーパーインフレを起こして、国債を買った人とか国内の金融機関に「ごめんね☆」といって済ますつもりなんでしょうか。

【参考サイト】



 経済学者のGary Hansen とSelahattin Imrohorogluは、2013年に発表した論文で、日本政府が借金を何とかなるレベルに減らすには、GDPの40-60%に相当する税金を増やさなければならないと主張しています。

 しかし、老人が増えて社会保障費がかさみ、しかし税金は増えないという状況ではどうしょうもありません。しかも日本国の日本の2014年7-9月期国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長という惨憺たる物です。日本国の借金は今年も増えて行くことでしょう。

【参考サイト】

社会保障費削減で貧乏人はもっと悲惨になる

 社会保障費がかさむのに収入(税金)が増えないので、政府は社会保障費を減らして行く方向の様です。

 介護費用や貧困家庭への補助などは、選挙後にどんどん削られています。国民健康保険を滞納していた方のたった3000円の貯金は差し押さえられる一方、政治家様は政党助成金を何に使っても怒られないのです。

【最新版】衆議院議員選挙後出てきた事実 (12月14日〜12月26日) 「支持母体側」と、「一般国民側」の政策の差 選挙がいかに大事かがこれでよく分かるでしょう。 (追加) ・法人税実効税率2.51%引き下げ ・生活保護引き下げ

- 名もなき投資家 (@value_investors)

銀行預金に「3305円」しかない女性が国保滞納で差し押さえられる一方、政治家はじゃぶじゃぶに税金を使いまくれるという、なんとも言えない格差社会。実に悲しい。

- 名もなき投資家 (@value_investors)

【(赤旗)廃止しかない政党助成金

- 名もなき投資家 (@value_investors)
役所の無駄使いは減らない

 その一方で、無駄な出費は極力減らさなければならないのですが、今年も「こんなものいらないでしょ!?」という物に税金がつぎ込まれる様です。例えば、計画から40〜50年たつのにまだ完成していないダム()などです。お役人様が天下りする団体(何をやっているのか不明)を潰す気配もない様です。

 自営業をやっていたり、会社で働いている人の場合、売り上げが増えない、新規の客も増えそうにない、という状態に陥ったら、バイト君を首にしたり、今年は新しいマックを買うのを控えたりして、せっせと経費を減らすわけですが、なぜか我が国の場合は、「お金が入ってこないなら借りればいいじゃない。借りて踏み倒せばいいのよ!」という思考の様です。マリー・アントワネット様も真っ青ですね。

 支出を減らすといっても、本来減らすべき所は減らされず、泥を食べて生きている様な貧乏人への施しは減らせ、というのが、我が国の目指す美しい国の姿のようであります。

消費税増税は延期されたが消費マインドは戻らない

 消費税は2014年4月に8%に引き上げられて、2015年10月に10%に引き上げられる予定でした。しかし、10%への引き上げは2017年4月に延期されました。選挙戦略的に延期は正解だったわけですが、本来なら、消費税は8%に戻すか、5%に戻すべきだったでしょう。

 そもそも失業率が下がったとはいっても、増えている雇用は非正規雇用で、今や働く人の半分近くが非正規雇用です。バブル真っ盛りの1988年には25歳から34歳のたった4%が非正規雇用でしたが、今や約17%です。将来が不安でお金を使わない人が少なくないのは当たり前です。政府が発表した2014年9月の経済指標(速報値)では、勤労世帯の実収入は、実質では、6.0%減っており、12ヶ月連続で減少しています。

 しかも、実質賃金は2013年7月以降16カ月連続で減っており、消費税率引き上げ後にさらに減っています。つまりお金を刷って増やしたことで、様々なももの値段が上がったので、実際の給料は下がっているというわけです。

 可処分所得が増えていない人が多いわけで、増税を延期したからといって消費が増えるわけではありません。一旦8%に引き上げられ、それがまた10%になると聞き、うんざりしていたところで、一応延期しますといわれても、仕事はどうなるのか、給料は増えるのか、親の介護費用の自己負担額は増えるのか、という恐怖から、庶民の大半はお金を使おうという気にはなりません。

 まともな手段で景気を良くするなら、まず消費を向上させることです。その為には国民の可処分所得を増やすことが必要なわけですが、企業が投資を増やし、働く人の賃金を増やさなければ、働く人の可処分所得も増えないわけですが、儲かっている会社が大手企業の一部という状況ではどうしょうもありません。

隣国との関係は最悪な状態になるなか、庶民はどうすべき?

 こんな状態のアベノミクスですが、現政権は、経済問題の抜本的な解決よりも、憲法改正や、隣国を怒らせて関係を悪化させることに熱心な様です。今の日本国にとって重要なのは、国の借金をどうするか、増大する社会保障費をどうするのか、国民の大半を占める人々の生活を向上するにはどうするか、のはずなのですが、隣国を怒らせることに比べると、それらの重要性は低い様です。今年も隣国を煽りまくって、日本国にとって何の利益もないことに取り組む可能性が高いでしょう。

 国民の大半は円安の恩恵を受けない中小企業に勤務しています。もしくは風が吹けば潰れてしまう様な零細自営業です。残念ながら大半の国民はアベノミクスの恩恵を受けません。物の値段はどんどん上がりますが給料は増えません。社会保障費も減って行きます。

 新年から辛気くさい話になってしまいますが、そういう庶民の方は、できる限り支出を抑え、経済や金融の勉強をし、自分のお金は自分で守ることを実践して行くべきでしょう。

 ネットで隣国の悪口を書いている暇があったら、1円でも多く稼げる方法を考えたり、稼げそうなノウハウを身につけることです。

著者プロフィール

コンサルタント兼著述家

May_Roma

神奈川県生まれ。コンサルタント兼著述家。公認システム監査人(CISA) 。米国大学院で情報管理学修士、国際関係論修士取得後、ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経てロンドン在住。日米伊英在住経験。ツイッター@May_Romaでの舌鋒鋭いつぶやきにファン多数。著作に『ノマドと社畜』(朝日出版社)、『日本が世界一貧しい国である件について』(祥伝社)など。

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(Photo by U.S.Secretary of Defense via Flickr)