来季の補強をめぐって、阪神ファンが球団フロントに大ブーイングを浴びせている。

スポーツ紙の虎番記者が説明する。

「阪神が、米アスレチックスからFAとなった中島裕之(32歳)の獲得に名乗りを上げたのです。11月末まで古巣の西武に保留権があるのですが、西武に補償金を払ってでもすぐに中島と契約を結びたいという強い意向を持っています。ところが、ファンの多くが『中島はいらん!』と猛反対している」

他球団ファンからすれば、フトコロ事情に余裕があってうらやましいという話なのに、なぜ阪神ファンは異を唱えるのか?

虎党が集まる大阪市北区の喫茶店「まる虎(こ)ぽーろ」で、ファンの言い分を聞いた。

「メジャー帰りの選手はあかん。鳴り物入りで入団しても活躍するどころか、1年もしないうちに故障するような選手がほとんどや。まして中島は米国での2年間、一度もメジャーに昇格することなく、2A、3Aのマイナー暮らし。阪神に来ても活躍できんのは目に見えている」(50代男性)

確かに、阪神は過去、メジャー帰りの選手を多く獲得しているが、いずれもパッとしない。

2003年にレンジャーズから獲得した伊良部秀輝は1年目こそ13勝したものの、翌年は登板3試合でオフには戦力外通告。10年に年俸4億円の4年契約で迎え入れた城島健司(マリナーズ)も、1年目は活躍したものの、その後は故障に苦しみ3年で引退している。別の虎ファン(40代男性)が続ける。

「昨季獲得した西岡(ツインズ)、福留(インディアンズ)のふたりも期待したほど活躍していない。特に、西岡は日本シリーズ第5戦で守備妨害をしでかしてシリーズを終わらせた。優勝を信じて第6戦、第7戦のチケットを買ってたのに……おい、西岡! どないして責任取ってくれるんや!(怒)」

メジャー帰りの選手を重用するせいで、若手が育たないとの批判も根強い。

「故障がちな矢野に代わって、狩野が成長して正捕手になれそうだったのに、城島を獲得して伸び盛りの芽を摘んだ。レギュラー目前だった上本も西岡にポジションを奪われてブレイクが1年遅れた。11年ドラフト1位の伊藤隼太も福留が入団してきたせいで二軍暮らしが続いた。阪神の若手が育たんのはメジャー帰りに出場機会を奪われているせいや」

なぜ、阪神フロントはメジャー帰り選手にこだわるのか?

「フロント陣の優勝への焦りが原因です。坂井信也オーナー、中村勝広GM、南信男社長の3人は、いずれも就任以降、レギュラーシーズンの優勝をしていない。残りの任期中になんとか優勝したいと、若手育成そっちのけで即戦力のメジャー帰り獲得に走っているのです。3年10億円の好条件を提示した今回の中島獲りも、その焦りの表れです」(前出・虎番記者)

「まる虎ぽーろ」の盛林文男マスターがこう語る。

「来季、球団生え抜きのスタメンは上本、大和のふたりだけになる。あとは他球団からの補強選手です。これは異常。阪神はプロパーの選手をもっと大切にする球団にならんとあかんね」

阪神は今季、公式戦のチケット料金を一部値上げしている。

大枚はたいてコスパの悪いメジャー帰り選手ばかり獲得していると、そのうちに虎ファンがチケット代を返せと騒ぎだすかも。

(取材/ボールルーム)、