地方創生の具体策【ファミリー就職】古くて新しい温故知新の働き方と15のメリット/成田 一夫
突然に降って湧いて出た地方創生は、消費増税を宣告するための布石。地方創生の本質は、住民の奪い合い。何をして地方創生は成功といえるのか?雇用なき成長を実現させるには?第二次安倍内閣の発足から12月までの短い期間で、地方創生を戦略化するには?等々、地方創生の具体案をまとめました
目次
1.地方創生国会の召集と二法案の提出
2.【分析1/3】なぜ急ぐのか?なぜ時間が無いのか?
3.【分析2/3】消費税10%増税を年内に決定するための地方創生
4.【分析3/3】来年の統一地方選を意識しての政策
5.地方創生三つの課題
6.【解決策】あるようで無かったファミリー就職
1.地方創生国会の召集と二法案の提出
地方創生国会が召集され、まち・ひと・しごと創生法案と、改正地域再生法案が提出されるやいなや、早速、各メディアや評論家、与野党から、
「具体性に乏しい」
「理念だけで、中身が曖昧」
「3兆9,000億円のばらまき」
等々の指摘が相次いでいます。それもそのはず、担当相の石破大臣が、
「何をやるんだい?という具体策がまだ出てこない。地方からアイデアを募り、民間の創意工夫を生かし、10月をメドに論点をまとめ、年内に長期戦略を策定する」
と言及していますから、まだまだ抽象的な初期段階であることは確か。今ここで、対案の無いまま批判するのは、あまりに気の毒というもの。
しかし、10月をメドに論点をまとめようというのですから、時間がないことも確か。一日でも早く、一つでも多くの知恵や工夫が求められているでしょう。
そこで、筆者も、一人の民間人として、地方創生の具体策を挙げてみます。まず、与件整理と現状分析から。
2.【分析1/3】なぜ急ぐのか?なぜ時間が無いのか?
結論から先に述べますと、6月の時点で、
「4月に消費税率を8%に増やした影響で、悪化した個人消費が回復する見込みは、7月以降も無さそう。これじゃ、
1)来年の10%増税を、年内に宣告できないし、
2)もしも増税すれば、景気回復の鍵を握る個人消費は、更に落ち込むだろうし、
3)与党は、国民から信を失うし、
4)来年の地方統一選で、与党は惨敗するだろうし、
5)安倍首相は、来年の自民党総裁選に勝てず、安倍内閣は消えるから、
年内に何か手を打たなくちゃ。もう半年しかない。どうしよう?」
「そうだ!個人消費を回復するには、全国津々浦々にアベノミクスを実感してもらおう。名づけて、ローカル・アベノミクス。それには、地方の活性あるのみ」
「よし!半年以内に何か対策を講じて、増税を決めよう。急げ!」
ということでしょう。そう分析しているメディアは、現時点(9月末時点)で、無いようですが。
地方創生は、6月24日に閣議決定された骨太の方針2014の中に出てくるローカル・アベノミクス(第一章第二項「経済再生の進展に向けた基本的方向性」参照)に端を発する「地域活性」のことです(と筆者は分析しています)
なぜなら、内閣官房(首相官邸の中にあった)地域活性化統合事務局が無くなった代りに、まち・ひと・しごと創生本部が新設されたからです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index.html
7月15日の毎日新聞によると、自民党行政改革推進本部ワーキンググループは、地域活性化統合事務局を、新設の地方創生本部と合わせて整理・再編する見通しと報じていますから、ほぼ間違いなく、地域活性のための会議体が、まち・ひと・しごと創生本部へ看板を書き換えたと見ていいでしょう。
要するに、地方創生と名称を変えた地域活性は、高度経済成長期から問題提起され続けているにもかかわらず、未だ解決していない、難しい対策です。
如何に難しいか、地域活性を冠した社団法人や財団法人の数の多さを検索してもらえば分かる通り、何十人もの専門家やプロ達が、何十年かけても解決できずにいる難易度ウルトラC政策(それを分っていた石破大臣は、当初、就任を固辞したのかも知れません)
それを数ヶ月そこそこで戦略化しようというのですから、ありきたりで行儀のいい知恵や工夫では、まるで、竹下内閣が全市町村へ1億円を配った「ふるさと創生」のような結末に着地すること必至。
それでも何故、6月に突然、古ぼけた地域活性の看板を下ろし、さも新しそうに地方創生の看板を掲げたかというと、2つの仮説が成り立ちます。
3.【分析2/3】消費税10%増税を年内に決定するための地方創生
一つ目の仮説が、来年、消費税を10%へ増税するためです。
ご存知の通り、来年10%に増税するかどうかの判断を、首相は、年内に決めるとしています。
年内、つまり、突如ローカル・アベノミクスが現れた6月から半年後の12月です。
当初、4月に消費税を8%へ引き上げた後、個人消費は、駆け込み需要の反動で、6月まで下落するものの(実際に下落し、4月〜6月期の実質GDPはマイナス7.1%)、
7月以降は持ち直し、秋には回復すると予想されていました。おそらく、安倍総理は、その見込み報告を信じて、昨年、8%増税を決めたのでしょう。
ふたを開けてみれば、アベノミクスで景気は回復したと政府が泣けど叫べど、7月の家計調査や家計最終消費支出を引き合いに出すまでもなく、実際、個人消費は落ち込み続けていますから、
このまま12月を迎えた時、良いデフレの影響による好景気を実感できそうなメドが立っていなければ、とてものこと、増税には踏み切れません。
とくに、地方の嘆きは悲痛で、もしも、このまま12月に増税を決めてしまえば、一内閣で二度の消費増税という前代未聞の塗炭に、安倍内閣はもちろんのこと、与党は、国民から信を失ってしまうでしょう。
そこで、12月までに、来年の増税を担保できる、根拠が欲しい。
だから年内に、地方創生(=地域活性)を戦略化しようという無謀ともいえる計画を立てたのでしょう。
その困難を分っていればこそ、安倍総理は「やれば出来る」と決意表明したのではないでしょうか。
4.【分析3/3】来年の統一地方選を意識しての政策
各メディアが深読みしている通り、来年の統一地方選を意識しての政策であることは間違いありません。
前述の通り、明るい見通しがないまま、12月に増税を決定し、国民の信を失ってしまうと、来年の地方選は、軒並み、与党の惨敗になること必至。
そこで、どうしても12月までに、地方を慰撫できそうな、明るい見通し(プラン)が欲しい。
プランに予算を付ければ、地方に希望を持たせるカネを用意でき、その予算を背景に、与党は統一地方選で有利な戦いを展開できます。たとえば、
「われわれ与党は、地方創生のために、ン兆円の予算を確保し、戦略プランも用意しました。地方創生を実現するための橋頭堡を築いた与党へ票を入れて下さい」
と言えるわけです。そのためには、12月までに、地方創生(=地域活性)を、せめて、戦略レベルで(全体像だけは)決めておきたい。
しかし、地域活性の名目のままだと、
「今まで何十年も出来なかったことを、わずか2〜3ヶ月で出来るわけがない」
との真っ当な反論に遭いますから、看板を書き換える必要があったのでしょう。
だから新しく、地方創生(その実は地域活性のまま)という看板を掲げ、そのための過密スケジュールを組み、地方創生(=地域活性)を推し進めようとしていると仮説立てられます。
5.地方創生三つの課題
消費税率を上げたい本音や必要性は良しとしても、地方創生(=地域活性)が難しいのは、過去半世紀の歴史が証明するところ。
そこで『なぜ、地方創生(=地域活性)は難しいのか?』理由を探るところから具体策のヒントを見つけましょう。
筆者が分析するところの理由は、3つ。
1.仕事がない
2.地域住民が減少中
3.地方創生(=地域活性)してほしくない
ひとつずつ解説しますと、1の「仕事がない」は、ご存知の通りで、あっても給与が低いか、慢性的に人手不足の(やりたがらない)仕事ばかり。
これまで確かに、企業誘致、官営起業、第三セクター等が盛んに行われてきましたし、成功例もあります(失敗例が表に出るハズありません)が、それで地方創生できるのならば、とうの昔に地域活性していたはず。
つまり(まだ気づいていないのかもしれませんが)、官主導や企業主導の民間活動では、地域活性できないのです。
なぜなら、巨大組織による民活は、他人のカネ(組織のカネ)を動かして、他人(地方住民)の生活が成り立つよう考えることに他ならず、しょせん他人事(ひとごと)です。
ご存知のように、他人事では、本気になれません。人は、自分に最も興味があります。自分のために動きます。そこに気づかなければ、地域活性など机上の空論。またしても一億円づつバラまくなど、予算(税金)の笑止な無駄遣いに終わるでしょう。
そこで参考になるのが、草の根民活(くさのねみんかつ)
草の根民活(くさのねみんかつ)とは、事業を担うスキルやモチベーションが高い個人による民間活動のことで、社会的な弱者とされる一般市民、地域住民、NPO・NGO等の民間人(小規模集団)、農家や自営業など個人経営者による民活を指します。
企業主導ではない、個人や有志達による活動といえば分かりやすいでしょう。
筆者の外部ブレインであるコンサルタントから聞いた実例によると、ある地方の町営スキー場は、町営を廃止し、アルバイトの女性たちへ経営を任せた年から、万年赤字が、黒字へ転換したそうです。大晦日まで雪が降らない年でも黒字でした。
やる気あふれる本人や小集団の草の根民活だからこそ地域活性できるのです。
そうした草の根民活を、国が支援できるかどうか?が問題であって、支援すべきは、企業や自治体といった大組織よりも、そこで働こうと意欲がある民間人=個人や小規模集団。
従来通りに大きなところを大きく援けるのではなく、小さなところを小さく援けることが出来るかどうか?に地方創生の成否は委ねられているといって過言ではありません。http://www.insightnow.jp/article/8213
次に、2の「住民が減少中」も、ご存知の通り。
平成の大合併で、地方自治体毎の人口は増えたように見えても、内実は、仕事がある大都市圏へ人口は流出し続けていますし、
石破大臣が、
「地方の雇用は、農林水産、行政、建設、サービス業の4つを、どう伸ばすか考えていくこと」
と述べてはいますが、行政とサービス業は人が相手ですから、住民という顧客が少なければ発展しようがありません。クマやタヌキに住民票も旅行も必要ないのです。
行政やサービス業を伸ばすということは、とりもなおさず、住民(個人と法人)を増やすということです。
住民を増やすということは、数値が目標になります。
これ(個人と法人の数)が戦略目標になりますから、住民(個人と法人)の数が、どれだけ増えたか?で地方創生の成否を判断できます。
増えれば成功、減れば失敗という単純な話です。
その目標値と、そこへ至る道すじが設定されていればこそ、戦略たり得ます。
さらに極めつけは、少子高齢化によって、人口が減り続けていること。
これすなわち、地方創生の本質は、地方自治体同士による
「住民のブン取り合戦」
であり、とりわけ、次世代の子供を産み、育てる世代の奪い合いに他なりません。
日本全国1,741市区町村による争奪戦です。
その戦いに勝った地方自治体は、生き残るでしょうし、負けた自治体は、高齢者ばかりの限界集落となり、いずれ地図から消えていく末路。
その意味で、石破大臣の、
「知恵と熱意のあるところに国は全面的に応える。人も出し、お金の支援もする。だが、やる気も知恵もないところは、ごめんなさいだ」
との発言は、問題の本質を突いています。
ごめんなさい=いずれ限界集落となり、いつしか地図から消えても、国としては致し方なしということでしょう。
最後に、3の「地方創生(=地域活性)してほしくない」
これが最も大変で、前述の外部ブレインが、地方の企業をコンサルティングしていて身に沁みるのは「よそ者」意識の強さだそうです。
「自分達には、自分達のやり方がある」
「よそ者に、何が分かる」
「今のままで、いいんだ」
「余計な世話は、要らない」
といった保守的な考え方が、地方の特徴との事。
確かに、東京の正論が、地方の正論とは限りませんし、地方には地方の国柄(気候、風土、歴史、ものの見方・考え方)、コミュニティ(地縁、血縁、人間関係)、利権、住み慣れた暮らしがありますから、保守的になるのは致し方のないこととしても、保守政党である自民党の基盤が、政策(地域活性)に対して固陋では、地方創生など絵に描いた餅になりかねません。
ここは、時間をかけて充分に話し合うと共に、広報や広告などメディアを使ったキャンペーンも必要でしょう。
このように、地方創生(=地域活性)には、3つの大きな壁があると筆者は分析しています。
6.【解決策】あるようで無かったファミリー就職
筆者の地方創生案「ファミリー就職」は、3つの課題を全て解決します。
ファミリー就職とは、個人と企業が雇用契約を結ぶのではなく、家族と企業が契約を結ぶ雇用形態です。
一般的には、お父さんと企業が雇用契約を結び、会社へ就職します。一方のファミリー就職は、一家と企業が雇用契約を結び、半独立します。
半独立とは、基本的に自営(草の根民活)ですが、運営ノウハウや商品は、契約企業から安定供給されます。つまり、自宅に居ながらにして、家族で商売できます。
この「雇用なき成長」プランによるメリットは、
家族が、いつも一緒にいられます
お父さんが入院しても、お母さんが代りに働けます
お母さんも一緒に働けますから、女性が活躍できます
主婦が仕事に忙しくても、ご主人が代りに育児できます
主婦が家事に忙しくても、ご主人が代りに介護できます
子育てしつつ働けるので、人口減少に歯止めをかけられます
就業年齢に達した子供たちも(家族で)働けます
自営ですから、定年退職がありません
上司がいないので、やりたいように自由に商売できます
自宅で開業できます。勤めに出る必要がありません
店舗のように、設備投資(先行資金)が必要ありません
完全独立ではありませんから、契約先の企業をはじめとする仲間がいます
商売が繁盛して、人手が足りなくなれば、新しい雇用が生まれます
従来からの人間関係や、地縁を活かし、地方でも商売できます
やりたい仕事(売りたい商品)の選択自由がありますから、東京へ働きに出る必要がなく、住民の減少を食い止められます
こうした「ファミリー就職」は、新しくも何ともなく、万葉の昔から、日本では、家族総出で、農業や漁業に従事してきましたし、豆腐屋さんや、和菓子屋さんや、床屋さんは、今でも、夫婦揃って商売していたり、事業規模の大きなところは、従業員を雇用して経営を拡大しています。
要するに、三ちゃん企業(父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃん)のススメです。
これまで、身内だけで細々と家族経営するイメージが強かった三ちゃん企業の増殖を、国の地方創生対策として掲げようというのが筆者の地方創生案です。
問題は、ニーズとリピート率の高い商品を供給している都市部の企業が、どれだけ協力してくれるか?です。
筆者が勤務する株式会社たまゆらは、作業用品を販売していますので、ニーズもリピート率も高い作業着や作業用品の供給であれば可能です。
しかし、翻せば、作業用品やユニフォーム以外は関与できません(供給できる商品がありません)し、需要があるのは県都までで、町村部には対応できません。
そこで、全国の市町村を網羅すべく、この「ファミリー就職」なる古くて新しい温故知新の草の根民活を、地方創生の一つの具体策として、国が支援できれば、地方で働く人と、都市にある企業と、国の政策である地方創生を結び付ける3-Win(三方よし)になると考えます。
いかがでしょう?忌憚のないご意見を賜れば幸いです。
目次
1.地方創生国会の召集と二法案の提出
2.【分析1/3】なぜ急ぐのか?なぜ時間が無いのか?
4.【分析3/3】来年の統一地方選を意識しての政策
5.地方創生三つの課題
6.【解決策】あるようで無かったファミリー就職
1.地方創生国会の召集と二法案の提出
地方創生国会が召集され、まち・ひと・しごと創生法案と、改正地域再生法案が提出されるやいなや、早速、各メディアや評論家、与野党から、
「具体性に乏しい」
「理念だけで、中身が曖昧」
「3兆9,000億円のばらまき」
等々の指摘が相次いでいます。それもそのはず、担当相の石破大臣が、
「何をやるんだい?という具体策がまだ出てこない。地方からアイデアを募り、民間の創意工夫を生かし、10月をメドに論点をまとめ、年内に長期戦略を策定する」
と言及していますから、まだまだ抽象的な初期段階であることは確か。今ここで、対案の無いまま批判するのは、あまりに気の毒というもの。
しかし、10月をメドに論点をまとめようというのですから、時間がないことも確か。一日でも早く、一つでも多くの知恵や工夫が求められているでしょう。
そこで、筆者も、一人の民間人として、地方創生の具体策を挙げてみます。まず、与件整理と現状分析から。
2.【分析1/3】なぜ急ぐのか?なぜ時間が無いのか?
結論から先に述べますと、6月の時点で、
「4月に消費税率を8%に増やした影響で、悪化した個人消費が回復する見込みは、7月以降も無さそう。これじゃ、
1)来年の10%増税を、年内に宣告できないし、
2)もしも増税すれば、景気回復の鍵を握る個人消費は、更に落ち込むだろうし、
3)与党は、国民から信を失うし、
4)来年の地方統一選で、与党は惨敗するだろうし、
5)安倍首相は、来年の自民党総裁選に勝てず、安倍内閣は消えるから、
年内に何か手を打たなくちゃ。もう半年しかない。どうしよう?」
「そうだ!個人消費を回復するには、全国津々浦々にアベノミクスを実感してもらおう。名づけて、ローカル・アベノミクス。それには、地方の活性あるのみ」
「よし!半年以内に何か対策を講じて、増税を決めよう。急げ!」
ということでしょう。そう分析しているメディアは、現時点(9月末時点)で、無いようですが。
地方創生は、6月24日に閣議決定された骨太の方針2014の中に出てくるローカル・アベノミクス(第一章第二項「経済再生の進展に向けた基本的方向性」参照)に端を発する「地域活性」のことです(と筆者は分析しています)
なぜなら、内閣官房(首相官邸の中にあった)地域活性化統合事務局が無くなった代りに、まち・ひと・しごと創生本部が新設されたからです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index.html
7月15日の毎日新聞によると、自民党行政改革推進本部ワーキンググループは、地域活性化統合事務局を、新設の地方創生本部と合わせて整理・再編する見通しと報じていますから、ほぼ間違いなく、地域活性のための会議体が、まち・ひと・しごと創生本部へ看板を書き換えたと見ていいでしょう。
要するに、地方創生と名称を変えた地域活性は、高度経済成長期から問題提起され続けているにもかかわらず、未だ解決していない、難しい対策です。
如何に難しいか、地域活性を冠した社団法人や財団法人の数の多さを検索してもらえば分かる通り、何十人もの専門家やプロ達が、何十年かけても解決できずにいる難易度ウルトラC政策(それを分っていた石破大臣は、当初、就任を固辞したのかも知れません)
それを数ヶ月そこそこで戦略化しようというのですから、ありきたりで行儀のいい知恵や工夫では、まるで、竹下内閣が全市町村へ1億円を配った「ふるさと創生」のような結末に着地すること必至。
それでも何故、6月に突然、古ぼけた地域活性の看板を下ろし、さも新しそうに地方創生の看板を掲げたかというと、2つの仮説が成り立ちます。
3.【分析2/3】消費税10%増税を年内に決定するための地方創生
一つ目の仮説が、来年、消費税を10%へ増税するためです。
ご存知の通り、来年10%に増税するかどうかの判断を、首相は、年内に決めるとしています。
年内、つまり、突如ローカル・アベノミクスが現れた6月から半年後の12月です。
当初、4月に消費税を8%へ引き上げた後、個人消費は、駆け込み需要の反動で、6月まで下落するものの(実際に下落し、4月〜6月期の実質GDPはマイナス7.1%)、
7月以降は持ち直し、秋には回復すると予想されていました。おそらく、安倍総理は、その見込み報告を信じて、昨年、8%増税を決めたのでしょう。
ふたを開けてみれば、アベノミクスで景気は回復したと政府が泣けど叫べど、7月の家計調査や家計最終消費支出を引き合いに出すまでもなく、実際、個人消費は落ち込み続けていますから、
このまま12月を迎えた時、良いデフレの影響による好景気を実感できそうなメドが立っていなければ、とてものこと、増税には踏み切れません。
とくに、地方の嘆きは悲痛で、もしも、このまま12月に増税を決めてしまえば、一内閣で二度の消費増税という前代未聞の塗炭に、安倍内閣はもちろんのこと、与党は、国民から信を失ってしまうでしょう。
そこで、12月までに、来年の増税を担保できる、根拠が欲しい。
だから年内に、地方創生(=地域活性)を戦略化しようという無謀ともいえる計画を立てたのでしょう。
その困難を分っていればこそ、安倍総理は「やれば出来る」と決意表明したのではないでしょうか。
4.【分析3/3】来年の統一地方選を意識しての政策
各メディアが深読みしている通り、来年の統一地方選を意識しての政策であることは間違いありません。
前述の通り、明るい見通しがないまま、12月に増税を決定し、国民の信を失ってしまうと、来年の地方選は、軒並み、与党の惨敗になること必至。
そこで、どうしても12月までに、地方を慰撫できそうな、明るい見通し(プラン)が欲しい。
プランに予算を付ければ、地方に希望を持たせるカネを用意でき、その予算を背景に、与党は統一地方選で有利な戦いを展開できます。たとえば、
「われわれ与党は、地方創生のために、ン兆円の予算を確保し、戦略プランも用意しました。地方創生を実現するための橋頭堡を築いた与党へ票を入れて下さい」
と言えるわけです。そのためには、12月までに、地方創生(=地域活性)を、せめて、戦略レベルで(全体像だけは)決めておきたい。
しかし、地域活性の名目のままだと、
「今まで何十年も出来なかったことを、わずか2〜3ヶ月で出来るわけがない」
との真っ当な反論に遭いますから、看板を書き換える必要があったのでしょう。
だから新しく、地方創生(その実は地域活性のまま)という看板を掲げ、そのための過密スケジュールを組み、地方創生(=地域活性)を推し進めようとしていると仮説立てられます。
5.地方創生三つの課題
消費税率を上げたい本音や必要性は良しとしても、地方創生(=地域活性)が難しいのは、過去半世紀の歴史が証明するところ。
そこで『なぜ、地方創生(=地域活性)は難しいのか?』理由を探るところから具体策のヒントを見つけましょう。
筆者が分析するところの理由は、3つ。
1.仕事がない
2.地域住民が減少中
3.地方創生(=地域活性)してほしくない
ひとつずつ解説しますと、1の「仕事がない」は、ご存知の通りで、あっても給与が低いか、慢性的に人手不足の(やりたがらない)仕事ばかり。
これまで確かに、企業誘致、官営起業、第三セクター等が盛んに行われてきましたし、成功例もあります(失敗例が表に出るハズありません)が、それで地方創生できるのならば、とうの昔に地域活性していたはず。
つまり(まだ気づいていないのかもしれませんが)、官主導や企業主導の民間活動では、地域活性できないのです。
なぜなら、巨大組織による民活は、他人のカネ(組織のカネ)を動かして、他人(地方住民)の生活が成り立つよう考えることに他ならず、しょせん他人事(ひとごと)です。
ご存知のように、他人事では、本気になれません。人は、自分に最も興味があります。自分のために動きます。そこに気づかなければ、地域活性など机上の空論。またしても一億円づつバラまくなど、予算(税金)の笑止な無駄遣いに終わるでしょう。
そこで参考になるのが、草の根民活(くさのねみんかつ)
草の根民活(くさのねみんかつ)とは、事業を担うスキルやモチベーションが高い個人による民間活動のことで、社会的な弱者とされる一般市民、地域住民、NPO・NGO等の民間人(小規模集団)、農家や自営業など個人経営者による民活を指します。
企業主導ではない、個人や有志達による活動といえば分かりやすいでしょう。
筆者の外部ブレインであるコンサルタントから聞いた実例によると、ある地方の町営スキー場は、町営を廃止し、アルバイトの女性たちへ経営を任せた年から、万年赤字が、黒字へ転換したそうです。大晦日まで雪が降らない年でも黒字でした。
やる気あふれる本人や小集団の草の根民活だからこそ地域活性できるのです。
そうした草の根民活を、国が支援できるかどうか?が問題であって、支援すべきは、企業や自治体といった大組織よりも、そこで働こうと意欲がある民間人=個人や小規模集団。
従来通りに大きなところを大きく援けるのではなく、小さなところを小さく援けることが出来るかどうか?に地方創生の成否は委ねられているといって過言ではありません。http://www.insightnow.jp/article/8213
次に、2の「住民が減少中」も、ご存知の通り。
平成の大合併で、地方自治体毎の人口は増えたように見えても、内実は、仕事がある大都市圏へ人口は流出し続けていますし、
石破大臣が、
「地方の雇用は、農林水産、行政、建設、サービス業の4つを、どう伸ばすか考えていくこと」
と述べてはいますが、行政とサービス業は人が相手ですから、住民という顧客が少なければ発展しようがありません。クマやタヌキに住民票も旅行も必要ないのです。
行政やサービス業を伸ばすということは、とりもなおさず、住民(個人と法人)を増やすということです。
住民を増やすということは、数値が目標になります。
これ(個人と法人の数)が戦略目標になりますから、住民(個人と法人)の数が、どれだけ増えたか?で地方創生の成否を判断できます。
増えれば成功、減れば失敗という単純な話です。
その目標値と、そこへ至る道すじが設定されていればこそ、戦略たり得ます。
さらに極めつけは、少子高齢化によって、人口が減り続けていること。
これすなわち、地方創生の本質は、地方自治体同士による
「住民のブン取り合戦」
であり、とりわけ、次世代の子供を産み、育てる世代の奪い合いに他なりません。
日本全国1,741市区町村による争奪戦です。
その戦いに勝った地方自治体は、生き残るでしょうし、負けた自治体は、高齢者ばかりの限界集落となり、いずれ地図から消えていく末路。
その意味で、石破大臣の、
「知恵と熱意のあるところに国は全面的に応える。人も出し、お金の支援もする。だが、やる気も知恵もないところは、ごめんなさいだ」
との発言は、問題の本質を突いています。
ごめんなさい=いずれ限界集落となり、いつしか地図から消えても、国としては致し方なしということでしょう。
最後に、3の「地方創生(=地域活性)してほしくない」
これが最も大変で、前述の外部ブレインが、地方の企業をコンサルティングしていて身に沁みるのは「よそ者」意識の強さだそうです。
「自分達には、自分達のやり方がある」
「よそ者に、何が分かる」
「今のままで、いいんだ」
「余計な世話は、要らない」
といった保守的な考え方が、地方の特徴との事。
確かに、東京の正論が、地方の正論とは限りませんし、地方には地方の国柄(気候、風土、歴史、ものの見方・考え方)、コミュニティ(地縁、血縁、人間関係)、利権、住み慣れた暮らしがありますから、保守的になるのは致し方のないこととしても、保守政党である自民党の基盤が、政策(地域活性)に対して固陋では、地方創生など絵に描いた餅になりかねません。
ここは、時間をかけて充分に話し合うと共に、広報や広告などメディアを使ったキャンペーンも必要でしょう。
このように、地方創生(=地域活性)には、3つの大きな壁があると筆者は分析しています。
6.【解決策】あるようで無かったファミリー就職
筆者の地方創生案「ファミリー就職」は、3つの課題を全て解決します。
ファミリー就職とは、個人と企業が雇用契約を結ぶのではなく、家族と企業が契約を結ぶ雇用形態です。
一般的には、お父さんと企業が雇用契約を結び、会社へ就職します。一方のファミリー就職は、一家と企業が雇用契約を結び、半独立します。
半独立とは、基本的に自営(草の根民活)ですが、運営ノウハウや商品は、契約企業から安定供給されます。つまり、自宅に居ながらにして、家族で商売できます。
この「雇用なき成長」プランによるメリットは、
家族が、いつも一緒にいられます
お父さんが入院しても、お母さんが代りに働けます
お母さんも一緒に働けますから、女性が活躍できます
主婦が仕事に忙しくても、ご主人が代りに育児できます
主婦が家事に忙しくても、ご主人が代りに介護できます
子育てしつつ働けるので、人口減少に歯止めをかけられます
就業年齢に達した子供たちも(家族で)働けます
自営ですから、定年退職がありません
上司がいないので、やりたいように自由に商売できます
自宅で開業できます。勤めに出る必要がありません
店舗のように、設備投資(先行資金)が必要ありません
完全独立ではありませんから、契約先の企業をはじめとする仲間がいます
商売が繁盛して、人手が足りなくなれば、新しい雇用が生まれます
従来からの人間関係や、地縁を活かし、地方でも商売できます
やりたい仕事(売りたい商品)の選択自由がありますから、東京へ働きに出る必要がなく、住民の減少を食い止められます
こうした「ファミリー就職」は、新しくも何ともなく、万葉の昔から、日本では、家族総出で、農業や漁業に従事してきましたし、豆腐屋さんや、和菓子屋さんや、床屋さんは、今でも、夫婦揃って商売していたり、事業規模の大きなところは、従業員を雇用して経営を拡大しています。
要するに、三ちゃん企業(父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃん)のススメです。
これまで、身内だけで細々と家族経営するイメージが強かった三ちゃん企業の増殖を、国の地方創生対策として掲げようというのが筆者の地方創生案です。
問題は、ニーズとリピート率の高い商品を供給している都市部の企業が、どれだけ協力してくれるか?です。
筆者が勤務する株式会社たまゆらは、作業用品を販売していますので、ニーズもリピート率も高い作業着や作業用品の供給であれば可能です。
しかし、翻せば、作業用品やユニフォーム以外は関与できません(供給できる商品がありません)し、需要があるのは県都までで、町村部には対応できません。
そこで、全国の市町村を網羅すべく、この「ファミリー就職」なる古くて新しい温故知新の草の根民活を、地方創生の一つの具体策として、国が支援できれば、地方で働く人と、都市にある企業と、国の政策である地方創生を結び付ける3-Win(三方よし)になると考えます。
いかがでしょう?忌憚のないご意見を賜れば幸いです。