「ロト6」詐欺犯の怪しいメールに返信してみたら

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■「当せん番号をメールにて連絡致します」

近年、ロト6などの数字を選択式して買える宝くじに絡む詐欺が急増している。ちなみに、ロト6では、6個の数字がすべて当たると1等になり、理論上1億円の配当になる。

私のもとにはあやしいスパムメールがよく届く。あるとき、「ロト6の攻略情報を教える」というサイトに飛ぶようになっているメールがきた。

そこでこのサイトに、名前、電話番号を書き込み、無料会員の登録をしてみた。すると、30分もしないうちに、業者の男から電話がかかってきた。

「ご登録ありがとうございます。会員様には、ロト6抽選日のお昼までに、5等(6個の数字のうち3個が一致:理論上の当せん金額は1000円)の当せん番号をメールにて連絡致します。ただし、当せん番号を購入した結果については、会員様の方から翌日に必ず電話での報告をお願いします」

私が「わかりました」と答えると、男は「公益情報」なるものについて話してきた。

「公益情報とは、すでに決まっている当たり番号のことです。私どもは財団法人からこの情報を買い付けています。この情報を入手できるのは、全国でも7社しかありません。その1社が当社です」

そして業者が事前に分かっている当せん番号の情報を「買ってください」とでも言ってくるものかと思ったが、そうではなかった。男は「この話はまた機会を改めて」といって、さっと切り上げた。

これは騙しの情報をさりげなく切り出すことで、私がこの話に乗ってくる人物かを見分けるための“試験”である。私が懐疑的な姿勢をみせなかったので、業者はすぐに、5通りの「5等の予想数字」のメールを送ってきた。

そこで、私は売り場に行き、業者のいう番号を5口分買ってみた。そして家に戻り、その夜に行われるネットのライブ中継で、抽選会の様子を見守ったが、すべてハズレた。何とも役に立たない情報である。

翌日、私が業者へ電話をすると、男は平然とこう言った。

「あなた様にはID費用として1000円を振り込んで頂きます」

無料会員であるはずなのに、金を請求するとは。本当はここで言い争いをしてもよかったが、これでは業者の手の内がわからないので、「わかりました」といって、1000円を振り込んだ。

■「500万円稼げます。150万円払ってください」

入金後、再び男から電話がかかってきた。

「実は、以前にお話した公益情報(当せん番号)への参加者募集を行うことになりました」

そして、具体的な公益情報の入手方法を説明してくる。業者はひと通りの説明を終えると「今回、ご提供できる公益情報は3等(6個の数字のうち5個が一致)の当せん番号で、500万円が当たります(理論上の当せん額は約50万円)」といい、情報料金として、150万円を払ってほしいと言ってきた。

あまりの高額に私が「無理だ」というものの、男は言葉を続ける。

「ただし、あなたがこの情報を受け取れるとは限りません。まず参加の申込みをしてもらい、審査に合格した上での情報提供になります。万が一、情報漏えいがあると問題になるので、あなたが秘密を守れる人かどうかを確かめなければなりません。これから、申込書を送りますので、すぐに返送してください」

メールで送られてきた参加申込書には、「いかなる手段において第三者に開示しない」といった文言があり、情報内容をネットやマスコミなどの流さないことを約束させ、誓約を破った場合「損害賠償を請求されても異議なく支払うものとする」と書かれている。

盗人猛々しいとはこのこと。これは申請書に名を借りた、口止め書類である。ロト6のような情報系詐欺では、守秘義務、情報漏えいなどの言葉で、周りへの相談を遮断しようとしてくる。

実際に、消費者が守秘義務などの約束をさせられて、誰にも相談できない状態に追い込まれ、繰り返し金を請求されている。被害者は、みな第三者に相談してはいけないと思い込まされていたのだ。

例えば、ある40代男性は4回にわたり、情報料名目で200万円以上を騙し取られた。

70代男性は、業者から「抽せん前に2等(6個の数字のうち5個が一致し、さらに申込数字の残り1個がボーナス数字に一致:理論上の当せん額は約1500万円)の当せん番号が手に入る」と電話で持ちかけられた際、業者は2等の当せん番号を伝えて、男性に翌日の新聞で確認させている。

翌朝、男性が新聞をみると、確かに業者の言った番号が2等の当たり番号になっていたので、男性は業者を信じてしまい、8回にわたり約2700万円もの情報費用を払ってしまった。

これはネットですでにわかっている当せん番号を高齢者に教えて、当せん番号が事前にわかると信じさせて金を騙しとる、時間差を利用した手口である。

■詐欺犯は「7つの習慣」のメソッドを使った

詐欺師が使っている手法は、ものの見方に色眼鏡をかけさせるやり方である。

今は情報化社会である。昨今のベネッセの名簿漏えい事件が大きく取りざたされたことからもわかるように、多くの人が個人情報などの漏えいに敏感になっている。

もし自分が漏えいに加担をしたなら、大きな罪が伴うという意識を持っている。そこで詐欺犯らは、消費者らに「情報は秘匿するもの」という眼鏡を心にかけさせたうえで「違反したら、損害賠償を請求する」と脅してくる。これにより、消費者らは、誰にも相談できない状況に追い込まれてしまうわけだ。

心の眼鏡について、的確に説いているのが、 スティーブン・R. コヴィー著の「7つの習慣」である。ここには人がものを見る時には、ある種のレンズのような物(パラダイム)が存在し、それが自らの認識や行動、態度を決めていると書かれている。

パラダイムとはモデルや地図のことで、私たちは、あるがままに物事を見ていると思いこんでいるが、実際には社会の中で条件づけされたレンズを通して見ており、これが私たちのすべての行動を方向づけているというのだ。

前出のロト6にからむ詐欺師たちは自分たちに有利になるようなレンズ(情報の守秘義務)を相手の心にかけさせて、繰り返し金を騙し取っているのだ。

■ロト6詐欺の手口はまっとうなビジネスでも使える

さて、こうした「7つの習慣」の理論をベースにしたかのようなしたたかなワルの手口だが、正しい使い方をすれば、もちろんビジネスにも応用できる。

ビジネスにおいて、顧客が契約に前向きでない状況を打破するとき、相手の心に既にかかっている眼鏡をはずして、新たなものをかけ直させる必要があるかもしれない。

「7つの習慣」では、私たちが現状を変えて、成功をもたらすためには、アウトサイド・イン(外から内へ)ではなく、インサイド・アウト(内から外へ)の考え方を持つ必要があるとも書いている。

私たちは物事がうまくいかないと、どうしてもその原因や責任を境遇や環境など外側(アウトサイド)に向けて考えてしまいがちであるが、そうではなく原因を内面に求めて、それを改善していくことで、外的な成功へと導くことができる。

このインサイド・アウトの考え方は、前出のような簡単には首をタテにふらない顧客を説得させるうえでも大いに役立つ。

客を説得させるのに、「好景気なので、儲かる」と外的な状況ばかりを話して、契約を促す営業マンがいるが、それだけでは相手の心は容易に動かない。相手を頷かせるには、もっとその人自身の内面に働きかける必要がある。

例えば、高齢女性に“減塩醤油”を販売するある業者は、単に「塩分が控えめなので、血圧が高めの人でも安心で体によい商品です」というだけではなく、高齢女性の心に次のように語りかける。

「今更、健康に気をつかう必要がないなんて……思っていませんか。おばあさん、この醤油を買うことは、健康に良いだけではないんですよ。この商品を使うことで、おばあさんがいつまでも健康で元気でいられる。そうすれば、お孫さん、息子、娘さん、皆がどれほど喜ぶことでしょうか。みんなにいつまでも元気な姿をみせてあげてください!」

単なる「健康になる」というだけではなく、その背後にいる家族を思い浮かべさせて「健康であり続けて、家族を喜ばす」という内面の気持ちに訴えかけて、販売をする。

営業先では、いかにこうした相手の心を変えるような一言がいえるかがカギになる。相手のパラダイムを変えるために、その人自身の「根っこ」にある気持ちを見抜き、価値観という眼鏡をいかに換えてあげられるかがポイントになるのだ。

(ルポライター 多田文明=文)