販売先の多様化と調達ソースの多様化/野町 直弘
販売先の多様化と調達ソースの多様化を妨げているのは非参入障壁です。
前回も引用させていただきましたが、岩城真さんが自分のメルマガでこういうことをおっしゃっていました。
「調達ソースの多様化はバイヤー企業にとってみると、コスト削減等に非常に効果的であるが、一方でサプライヤにとって販売先を多様化するという取組みは昔から言われているものの中々上手くいっていない」と。非常に興味深い御指摘です。
実際には企業毎に状況は異なるでしょうし、やはり昔から営業にとって顧客開拓が最重要視されていることは間違いありません。
私は20年程前に大手企業の新規事業開発ということで事業企画をやっていたことがあります。そういう仕事に従事していたこともあり、新事業や経営に関する基礎を学ぶ中で必ずでてくるのがアンゾフマトリクスでしょう。
ご存知な方も多いでしょうが、アンゾフはアメリカの経営学者で特に経営戦略に関しての著書や研究で知られています。アンゾフマトリクスとは「製品開発や市場開拓、多角化といったさまざまな成長戦略を企業が考えるとき、リスク要因を理解するためのツールとして人気を維持している。」ものです。
縦軸に既存製品/新規製品、横軸に既存市場/新規市場をとり、この2×2=4つの戦略代替案を示しています。つまり「既存製品で既存市場のシェア拡大をする」
「既存製品で新規市場を開拓する」「新規製品で既存市場に深耕する」「新規製品で新規市場を開拓する」という4つの戦略になるのです。
日本企業における新規事業の場合、成功するパターンはこの4つの戦略の中でも既存市場に対して新製品や新技術を投入するというパターンが王道と言われています。それは予想以上に新規市場の開拓が難しいからです。
実際に新規事業の企画や立上げを当時担当していた私も、特に販売チャネルや
新規顧客開拓が相当難しいことは身を持って感じていました。
一方で多くの新規事業の成功事例を紐解くとまずは、技術革新のシーズ(種)を
持っていることがKFSになっていることは間違いありません。圧倒的な技術革新がないのであれば新規市場に既存製品や既存技術を販売するのではなく、既存の顧客(既存市場)に対して関連するサービスや製品を拡販するのが無理のない事業展開と言えるでしょう。
最近はインターネット等の技術革新やチャネルの革新も始まっており、新規市場
開拓のハードルが下がっているかもしれませんが、それでも既存市場からの事業展開は一種のセオリーと言えます。
そういう点からもサプライヤが販売先を多様化する取組みは中々上手くいかない、というのは頷けます。私が自動車メーカーの購買に勤務していた当時、自分が担当していたある樹脂成形メーカーが電気業界の顧客開拓に成功しました。
樹脂成型は樹脂の材質や大きさなどの違いはあれ、基本的には射出成型機で
成形するモノで技術はほぼ共通です。またそのサプライヤは自動車部品の中でもどちらかというと小物の樹脂成型が得意であり、成形した部品の組立工程を非常に得意としているメーカーでした。
しかし暫くするうちにそのサプライヤの営業部長さんからこういう話を聞いたのです。
電気メーカーから新規で受注はしたものの撤退する方向であると。理由は様々です。
例えばモデルライフの短さや発注情報の精度の悪さ、開発サイクルの短さ、など
でしたが、単価的に儲からないというような話は一切ありませんでした。
以前日本の貿易黒字が解消しないのは、日本市場に非関税障壁が存在するからだ、という指摘を米国から日本が受けていた時代がありましたが、これらの理由はまさに非関税障壁そのもの。
日本企業にとって既存製品(技術)を新市場(新規顧客)に拡大していくということは、これらの非関税障壁を乗り越えなければならないのです。もし時代がそれほど変わっていなければ、日本企業はまだ業界や個別企業でしか通用しないプロトコルや仕組みが多く残っており、その障壁を乗り越えるのが売る側にも買う側にも課題として残っているということでしょう。
一方で調達ソースの多様化という点ではどうでしょうか。バイヤーが進んで新しいサプライヤを開拓することは一昔よりは進んできたかもしれません。しかし一方で、できるだけ既存のサプライヤに受注させたい、新規は見積だけ入手して価格は引き下げたいというのが実態ではないでしょうか。また国内のサプライヤではなく一気に海外サプライヤへ切り替えをする。そのためにはバイヤーをサポートするための新規サプライヤや新技術の開拓部隊を持ちましょう、という企業が増えているようです。
いずれにしてもプロトコルや仕組みの違いやそれが参入の障壁になっているという話は今でもよく聞きますしこれらの障壁が公平・公正な競争機会を生み出すことの妨げになっているのであれば、バイヤーも進んでそれを改善していく必要があるのではないでしょうか。
前回も引用させていただきましたが、岩城真さんが自分のメルマガでこういうことをおっしゃっていました。
「調達ソースの多様化はバイヤー企業にとってみると、コスト削減等に非常に効果的であるが、一方でサプライヤにとって販売先を多様化するという取組みは昔から言われているものの中々上手くいっていない」と。非常に興味深い御指摘です。
実際には企業毎に状況は異なるでしょうし、やはり昔から営業にとって顧客開拓が最重要視されていることは間違いありません。
ご存知な方も多いでしょうが、アンゾフはアメリカの経営学者で特に経営戦略に関しての著書や研究で知られています。アンゾフマトリクスとは「製品開発や市場開拓、多角化といったさまざまな成長戦略を企業が考えるとき、リスク要因を理解するためのツールとして人気を維持している。」ものです。
縦軸に既存製品/新規製品、横軸に既存市場/新規市場をとり、この2×2=4つの戦略代替案を示しています。つまり「既存製品で既存市場のシェア拡大をする」
「既存製品で新規市場を開拓する」「新規製品で既存市場に深耕する」「新規製品で新規市場を開拓する」という4つの戦略になるのです。
日本企業における新規事業の場合、成功するパターンはこの4つの戦略の中でも既存市場に対して新製品や新技術を投入するというパターンが王道と言われています。それは予想以上に新規市場の開拓が難しいからです。
実際に新規事業の企画や立上げを当時担当していた私も、特に販売チャネルや
新規顧客開拓が相当難しいことは身を持って感じていました。
一方で多くの新規事業の成功事例を紐解くとまずは、技術革新のシーズ(種)を
持っていることがKFSになっていることは間違いありません。圧倒的な技術革新がないのであれば新規市場に既存製品や既存技術を販売するのではなく、既存の顧客(既存市場)に対して関連するサービスや製品を拡販するのが無理のない事業展開と言えるでしょう。
最近はインターネット等の技術革新やチャネルの革新も始まっており、新規市場
開拓のハードルが下がっているかもしれませんが、それでも既存市場からの事業展開は一種のセオリーと言えます。
そういう点からもサプライヤが販売先を多様化する取組みは中々上手くいかない、というのは頷けます。私が自動車メーカーの購買に勤務していた当時、自分が担当していたある樹脂成形メーカーが電気業界の顧客開拓に成功しました。
樹脂成型は樹脂の材質や大きさなどの違いはあれ、基本的には射出成型機で
成形するモノで技術はほぼ共通です。またそのサプライヤは自動車部品の中でもどちらかというと小物の樹脂成型が得意であり、成形した部品の組立工程を非常に得意としているメーカーでした。
しかし暫くするうちにそのサプライヤの営業部長さんからこういう話を聞いたのです。
電気メーカーから新規で受注はしたものの撤退する方向であると。理由は様々です。
例えばモデルライフの短さや発注情報の精度の悪さ、開発サイクルの短さ、など
でしたが、単価的に儲からないというような話は一切ありませんでした。
以前日本の貿易黒字が解消しないのは、日本市場に非関税障壁が存在するからだ、という指摘を米国から日本が受けていた時代がありましたが、これらの理由はまさに非関税障壁そのもの。
日本企業にとって既存製品(技術)を新市場(新規顧客)に拡大していくということは、これらの非関税障壁を乗り越えなければならないのです。もし時代がそれほど変わっていなければ、日本企業はまだ業界や個別企業でしか通用しないプロトコルや仕組みが多く残っており、その障壁を乗り越えるのが売る側にも買う側にも課題として残っているということでしょう。
一方で調達ソースの多様化という点ではどうでしょうか。バイヤーが進んで新しいサプライヤを開拓することは一昔よりは進んできたかもしれません。しかし一方で、できるだけ既存のサプライヤに受注させたい、新規は見積だけ入手して価格は引き下げたいというのが実態ではないでしょうか。また国内のサプライヤではなく一気に海外サプライヤへ切り替えをする。そのためにはバイヤーをサポートするための新規サプライヤや新技術の開拓部隊を持ちましょう、という企業が増えているようです。
いずれにしてもプロトコルや仕組みの違いやそれが参入の障壁になっているという話は今でもよく聞きますしこれらの障壁が公平・公正な競争機会を生み出すことの妨げになっているのであれば、バイヤーも進んでそれを改善していく必要があるのではないでしょうか。