購買手法の普遍的な考え方と交渉力/野町 直弘
教科書には載っていない購買手法とその普遍的な考え方について話ます。
私の購買界の友人である岩城氏の「中国調達とものづくりの現場から」というメルマガhttp://archive.mag2.com/0000241825/index.htmlはとても面白く深く毎回楽しませてもらっています。
中でも先週号のメルマガは非常に興味深く読ませていただきました。
岩城さんの会社は受注生産型の製造業で所謂少量で単発の部品購買をしています。一般的に調達・購買の世界ではセミナーや先進事例として自動車や電機、その他の量産型モデルを中心とした話が殆どです。また、基本となるのは量をまとめてボリュームメリットを活かすということ。
岩城さんがメルマガで指摘されたのは、このような手法は量産型の製造業では通用するが、自分達のような少量で単発の生産を行っているサプライチェーンモデルでは限界があるとのことでした。
また、それではどのようなやり方がよいかというと、サプライヤの生産余力に小口のスポット案件をあてはめることでサプライヤにとって美味しい商売にすることだ、とおっしゃっています。
つまり、少量単発の調達・購買で安く買う購買手法はサプライヤを多様化し、相手にとって自分たちの案件を美味しい商売にさせることだ、ということになります。
目からウロコです。
このような手法を取るとサプライヤは既に固定費を既存の(大口の)取引でカバーしているので、上手くいくと限界利益(売上高から変動費を引いたもの)スレスレの安いコストで購入する事ができます。しかしその為には多くのサプライヤとの関係があって彼らの生産余力の状況を理解していないと上手く当てはめることができません。
またそのためには「闇雲に多ければ良いという訳では」なく、「ともかく多様でなくてはならない。」と書かれています。
調達・購買手法の教科書的には、サプライヤを集約し、1社あたりの発注量を増やし、ボリュームメリットを活かしてコスト削減を図りましょう、ですから真逆になことがわかります。
以前私が外資系企業の調達部門にいた時にある国の調達部門の責任者から、こういう話をされたことがあります。
「我々が目指しているのはコバンザメ購買だ」と。
これはこの責任者が所属する企業は自国ではあまり大きな企業ではなく、サプライヤとの交渉力は決して強くありません。ただし全世界的に見ると巨大な企業であり、本社サイドで有利な条件で契約しているケースが少なくないのです。この有利な条件を如何に自社の契約に活用するか、これによってコスト削減につなげていく、というのです。
大きな企業全体やコーポレート機能を上手く活用していく、「まるでコバンザメのような購買手法だ」と、言っていたのが印象的でした。
ここで取り上げたコバンザメ購買も調達・購買手法の教科書には書かれていないことです。
このように少量購買ならではの購買手法は、やはりあります。逆に言うと全ての企業や品目に普遍的に通用できる手法は多くないのかもしれません。
しかし、これらの手法に共通している普遍的な考え方はあります。それはサプライヤのメリットです。『サプライヤが何を求めているか、を的確に捉え、もしくはこちらが与えられることを求めているサプライヤを探し出すことでサプライヤの本質的な要求とこちらの要求を適合させること』、これが普遍的な考え方。
例えばサプライヤの生産余力にスポット発注を当てはめることは、サプライヤの生産稼働率を上げて、より収益にメリットを与えます。
コバンザメ購買の例では、サプライヤ(特に営業パーソン)にとってみると全世界での契約だから何の努力もせずに拡販ができ、またそれもグローバルカンパニーとの取引実績という企業イメージの向上にもつながるのです。
他の事例もつきつめて考えると何らかのサプライヤの本質的な要求につながることだから何らかのメリットを受けることができると言えます。
ここで注意しなければならないのは、サプライヤが何を求めているか、のサプライヤにも様々なレイヤーがあること。
営業パーソンの立場としての本質的な要求、会社としての短期的な要求、もっと中長期の企業の存続に係わる要求、また先ほどのコバンザメ購買の事例ではグローバル企業の中のローカル企業としての要求となります。このように様々な要求レベルがあることを理解し、また自分達の本質的な要求も理解することで、その本質的な要求を埋めることができればお互いにとってウインの状況を作ることができるのです。
ここまで書いてきて気が付いたのは、これは「交渉」そのものだということです。相手の本質的なニーズを理解しそれをうめる手伝いをする。自分の本質的なニーズも理解し、それを達成するための手段を講じる。これらのバランスをとって調整を進めることでお互いにとって一番よい解決策を導き出す。つまり「必要な準備を行い、交渉(調整)プロセスを管理し、創造的な結果を導きだす」交渉力そのものです。
最近は調達・購買部門にとって、社内の調整もサプライヤとの交渉同様に重要な役割となっています。つまり社内外との利害調整とであり、これは対サプライヤだけのことではありません。このように益々調達・購買部門に交渉(調整)能力が求められる時代です。そのための基本が相手及び自分の本来の要求を理解することでしょう。
私の購買界の友人である岩城氏の「中国調達とものづくりの現場から」というメルマガhttp://archive.mag2.com/0000241825/index.htmlはとても面白く深く毎回楽しませてもらっています。
中でも先週号のメルマガは非常に興味深く読ませていただきました。
岩城さんの会社は受注生産型の製造業で所謂少量で単発の部品購買をしています。一般的に調達・購買の世界ではセミナーや先進事例として自動車や電機、その他の量産型モデルを中心とした話が殆どです。また、基本となるのは量をまとめてボリュームメリットを活かすということ。
また、それではどのようなやり方がよいかというと、サプライヤの生産余力に小口のスポット案件をあてはめることでサプライヤにとって美味しい商売にすることだ、とおっしゃっています。
つまり、少量単発の調達・購買で安く買う購買手法はサプライヤを多様化し、相手にとって自分たちの案件を美味しい商売にさせることだ、ということになります。
目からウロコです。
このような手法を取るとサプライヤは既に固定費を既存の(大口の)取引でカバーしているので、上手くいくと限界利益(売上高から変動費を引いたもの)スレスレの安いコストで購入する事ができます。しかしその為には多くのサプライヤとの関係があって彼らの生産余力の状況を理解していないと上手く当てはめることができません。
またそのためには「闇雲に多ければ良いという訳では」なく、「ともかく多様でなくてはならない。」と書かれています。
調達・購買手法の教科書的には、サプライヤを集約し、1社あたりの発注量を増やし、ボリュームメリットを活かしてコスト削減を図りましょう、ですから真逆になことがわかります。
以前私が外資系企業の調達部門にいた時にある国の調達部門の責任者から、こういう話をされたことがあります。
「我々が目指しているのはコバンザメ購買だ」と。
これはこの責任者が所属する企業は自国ではあまり大きな企業ではなく、サプライヤとの交渉力は決して強くありません。ただし全世界的に見ると巨大な企業であり、本社サイドで有利な条件で契約しているケースが少なくないのです。この有利な条件を如何に自社の契約に活用するか、これによってコスト削減につなげていく、というのです。
大きな企業全体やコーポレート機能を上手く活用していく、「まるでコバンザメのような購買手法だ」と、言っていたのが印象的でした。
ここで取り上げたコバンザメ購買も調達・購買手法の教科書には書かれていないことです。
このように少量購買ならではの購買手法は、やはりあります。逆に言うと全ての企業や品目に普遍的に通用できる手法は多くないのかもしれません。
しかし、これらの手法に共通している普遍的な考え方はあります。それはサプライヤのメリットです。『サプライヤが何を求めているか、を的確に捉え、もしくはこちらが与えられることを求めているサプライヤを探し出すことでサプライヤの本質的な要求とこちらの要求を適合させること』、これが普遍的な考え方。
例えばサプライヤの生産余力にスポット発注を当てはめることは、サプライヤの生産稼働率を上げて、より収益にメリットを与えます。
コバンザメ購買の例では、サプライヤ(特に営業パーソン)にとってみると全世界での契約だから何の努力もせずに拡販ができ、またそれもグローバルカンパニーとの取引実績という企業イメージの向上にもつながるのです。
他の事例もつきつめて考えると何らかのサプライヤの本質的な要求につながることだから何らかのメリットを受けることができると言えます。
ここで注意しなければならないのは、サプライヤが何を求めているか、のサプライヤにも様々なレイヤーがあること。
営業パーソンの立場としての本質的な要求、会社としての短期的な要求、もっと中長期の企業の存続に係わる要求、また先ほどのコバンザメ購買の事例ではグローバル企業の中のローカル企業としての要求となります。このように様々な要求レベルがあることを理解し、また自分達の本質的な要求も理解することで、その本質的な要求を埋めることができればお互いにとってウインの状況を作ることができるのです。
ここまで書いてきて気が付いたのは、これは「交渉」そのものだということです。相手の本質的なニーズを理解しそれをうめる手伝いをする。自分の本質的なニーズも理解し、それを達成するための手段を講じる。これらのバランスをとって調整を進めることでお互いにとって一番よい解決策を導き出す。つまり「必要な準備を行い、交渉(調整)プロセスを管理し、創造的な結果を導きだす」交渉力そのものです。
最近は調達・購買部門にとって、社内の調整もサプライヤとの交渉同様に重要な役割となっています。つまり社内外との利害調整とであり、これは対サプライヤだけのことではありません。このように益々調達・購買部門に交渉(調整)能力が求められる時代です。そのための基本が相手及び自分の本来の要求を理解することでしょう。