情報漏洩の元凶は君のパソコン!/純丘曜彰 教授博士
/君のパソコンの中にCookieと呼ばれる情報が書き込まれており、これを介して、君の情報は他の企業にまでダダ漏れになってしまっている!/

 ショッピングサイトで見た商品が、その後も広告に出てくる。それは偶然じゃない。君のパソコンは、Cookieで汚染されている。Cookieというのは、サイト側の情報を端末側に型押しして残していく技術で、君がショッピングサイトとは関係のないページを見ているときも、広告業者は、君のパソコンの中に残っているCookieを調べて、それに関連のある広告を押し出す。もっとはっきり言ってしまえば、ショッピングサイトが、君のパソコンを介して、君の閲覧履歴を広告業者に「転売」し、小銭を稼いでいる。つまり、君の情報の漏洩元は、君のパソコンだ。

 ためしに自分のブラウザを調べて見てみろ。オプション、プライバシー、で、Cookieを表示、というのがあるはずだ。君が訪問したところは、かなり前でも、やたらとCookieが残っているだろう。今回、情報漏洩で騒ぎになったベネッセも、イヴェントなどによる情報収集以外に、このCookieを使った行動追跡広告をやっていた。当然、他社でもやっている。基本的にCookieには個人を特定する情報は含まないことにはなっているが、特定の日時に閲覧以上の会員登録や商品購入をすれば、その日時のCookieと組み合わせて、企業側は個人を再特定し、その後の閲覧履歴や購入履歴まで、ずっとすべて追跡できてしまう。

 そして、実際、個人を特定できる氏名や住所、クレジットカード番号などを持つショッピングサイトそのものが、第三者の企業へのCookie転売業や広告業を兼ねていることがある。よく、詐欺師グループが、いっぺん引っかかったカモの名簿を、他の詐欺師グループに転売する、という話を聞くが、あれと同じ。

 ブラウザのオプション、プライバシーで、Cookieの表示、のところに、Cookieの全削除、というボタンもあるはず。もちろん、Cookieは、よく行くショッピングサイトのログインの手間が省ける、などの利便性もあるが、現状ではもはや利便性よりリスクの方が大きいかもしれない。どれが必要かわからないなら、いったんCookieは全削除してしまえ。そのうえで、必要なサイトを訪問し、再入力すれば、新たにCookieが作り直されるので、なんの問題も無い。(Cookieの完全ブロックが理想だが、そうすると、使えないサイトも出てくる。)

 また、どの広告が、どこのCookieを転売購入して利用しているのか、端末側ではさっぱりわからない。しかし、これは、法的には「オプトアウト」によって、追跡を止める権利がある。幸い(?)、ベネッセに、ベネッセが購入している主だったCookie転売業者のワルたちのリンクリストが出ている。自分の情報を守るために、これを押して、片っ端からすべてのCookie転売業者を「オプトアウト」していこう。
http://www.benesse.co.jp/privacy/index.html

 ところが、現実には、いったんオプトアウトしたはずなのに、また君のパソコンの中にCookieを書き足して(オプトアウト情報そのものがCookieに記録されているので、本体は消さない、だが追加はおかしい)、また君をカモにしようとする場合もある。法律なんか守る気がない悪質なCookie転売業者だ。こうなると、どれがその悪徳業者か、特定するのは、容易ではないが、こまめにCookieをチェックして、ブラウザのオプション、プライバシーで、Cookieを保存する、の、例外サイト(つまりCookieを保存しないサイト)、を具体的に個別に指名しないといけない。

 ショッピングサイトも、自分のサイトの中で他の商品を勧める、という以上に、Cookieを介して顧客の情報そのものを広告業者や他の企業に売るのは、たとえ個人を特定できるものではないとしても、顧客に対する裏切りだ。悪徳名簿業者の同類。Cookieを買う企業も同罪。少しは恥を知れ。

(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)