奄高に新風・奄美

 鹿屋中央が攻守に地力の差をみせてコールド勝ちだった。

 初回に3番・吐合 駿一郎(3年)の右翼線二塁打で先制。3回は二死から4連打を浴びせて3点を加点し突き放すと、4回以降もそつなく加点した。

 奄美は5月のNHK旗・鹿児島実戦に続いて、第1シード鹿屋中央を相手に底力の差を見せつけられた。

 3回までは毎回三塁まで走者を進めたが「あと1本を打つ力」がなかった。相手は、3回のように二死からでも4連打を浴びせて点を取る底力があった。

 4回一死一三塁の守備。けん制で一走を釣り出し、一二塁間で挟んだ。狭殺プレーで一走をアウトに取れれば最高だが、アウトが取れなくても、三走を返さなければOKの場面である。ところが三走の動きにつられて、一塁手が慌てて三塁に悪送球。1点を献上し、傷口を広げた。

 4回以降は、縦のスライダーのキレが増した先発の空地 大成(3年)を攻略できず、内野安打1本しか打てなかった。「本気で勝とうという気持ち」(四本凌主将・3年)が強い分、一つのほころびで空回り出すと、それを挽回する底力はまだ備わっていなかった。

 悔しい負け方だったが、自分たちらしい野球はやり切れた。前園監督は「強豪私学を倒すために何をしなければならないのか。本気で考えるきっかけを、この3年生たちが作ってくれた」ことに頭が下がる思いだった。

 振り返れば、昨年まで数年間の奄美は、1勝するためにどうすればいいかに、もがき苦しんできた。この1年間は、昨秋ベスト16、今春8強と当たり前のように勝つことができるようになり、強豪私学に挑むところまでステージが上がった。「野球好きの野球小僧の集まり」(前園監督)だった13人の3年生を中心に野球部が「奄高に新しい風をもたらした」ことは間違いない。

 奄美が「もう一つ上のステージ」(前園監督)に進み、強豪私学をも倒すためにまず必要なことは「相手のチャンス、自分たちがピンチの場面で、落ち着いて守れるようになること」だと四本主将は痛感している。

 3年生が残してくれた「宿題」。今度はこれまで試合に出ていた2年生たちを中心に残った下級生全員で克服していく。

(文=政 純一郎)