名将ラストサマーに燃える鳴門渦潮、緒戦圧勝発進!

 鳴門工赴任以来、38年間(うちコーチ3年間)で2002年センバツ準優勝をはじめ、春4回・夏5回の甲子園出場で通算12勝9敗の好成績を残し、里崎 智也(千葉ロッテ捕手)、渡辺 亮(阪神投手)、谷 哲也(中日内野手)など、一線級のNPB選手も輩出している鳴門渦潮・高橋 広監督。かねてから「今年度が鳴門渦潮での最後の采配」と表明している名将にとって、那賀との緒戦はラストサマーのはじまりとなった。

 初回の守り、選手たちの固さはそのせいもあったのかもしれない。最速142キロ左腕・松田 知希(3年・投手・左投左打・174センチ74キロ・徳島ホークス<ヤング>出身)は3ボール1ストライクから那賀1番・川尻 優太(2年・遊撃手・右投右打・165センチ60キロ・那賀町立相生中出身)に右前に運ばれ、高校通算16本塁亜の強打に加え、二塁送球1.79秒の鉄砲肩をこの日もマークしたNPBドラフト注目選手・多田 大輔(3年・捕手・右投右打・189センチ92キロ・徳島市立応神中出身)は一死からギャンブル盗塁に出た川尻を刺せず。二死三塁のピンチを背負うこととなる。

 ただ、ここからの彼らは落ち着いて試合を運んだ。松田・多田大のバッテリーは昨秋・板野に県大会2回戦敗退した要因ともなった三振を取りに行く配球は控え、那賀4番を三塁ゴロに打ち取ると、その裏打線は3安打に3四死球を絡め一挙5得点。その後も4回には1番・兼板 優貴(3年・中堅手・右投右打・172センチ72キロ・徳島市立国府中出身)が今大会第1号となる左中間ランニング3ランを放つなど、14安打で14得点と効率のよい攻めで那賀を圧倒する。

 かくして、春季四国大会準優勝で第3シードを獲得した好循環を維持したまま夏の緒戦を飾った鳴門渦潮。3年前、美間 優槻(現:広島内野手)をエースに鳴門第一と鳴門工業との併合初年度にあと一歩まで迫った甲子園を目指し、名将と選手たちは一丸となって、この先も闘っていく。

(文=寺下 友徳)