「守りからリズム」で難敵寄り切る・大島

 初回に先制された大島はその裏、4番・小野 浩之介(3年)のライト前タイムリーで同点に追いついた。

 3回には2番・武田 翔吾(3年)のレフト前タイムリーで勝ち越し。6回は二死から4連打を浴びせ、1番・重原 龍成(3年)、2番・武田翔の適時打で3点を加えて突き放した。

 先発の前山 優樹(2年)は6回まで1失点の好投。7回、連続四死球とバントヒットで満塁となったところで渡 秀太(1年)にスイッチ。内野ゴロの2失点で切り抜け、9回は先頭打者を四球で出したところで福永 翔(3年)を投入し、後続を絶った。継投策が的中し、無失策の堅守も光った。

 これまで、なかなか実践できなかった「守りからリズムを作る野球」(重原主将)をやり切り、難敵・鹿児島南を寄り切った。

 勝負どころの継投と、堅守が勝利を大きく手繰り寄せた。5対1とリードした直後の7回。それまで1失点と好投していた前山が、連続四死球にバントヒットで無死満塁とピンチを招くと、渡邉恵尋監督は迷わず、1年生左腕・渡 秀太にスイッチ。内野ゴロの2失点のみでしのいだ。

 その渡が9回の先頭打者に四球を出すと、今度は福永をリリーフに送った。3月のセンバツ以降、肩の故障でマウンドに上がれなかった福永にとっては、約3カ月半ぶりの公式戦だ。ピンチの場面だったが「投げられない間も、毎晩無死満塁のピンチでマウンドに上がる姿をイメージしていたから緊張はなかった」。

 投じた10球は全て直球。バントヒットを許し、一死二三塁と一打同点の正念場だったが、2番・今吉甲耀(3年)をサードゴロ、3番・横山剛貴(3年)をレフトフライに打ち取り、会心のガッツポーズが出た。昨秋準々決勝の樟南戦以来、実に約9カ月半ぶりにみせた勝利の雄叫びだった。

 守備は無失策で守り切った。7回無死満塁の場面などは、一つでもミスがあったら、一気に大量失点してもおかしくない。一死二三塁の遊ゴロを遊撃手・重原は「三走の動きが見え、周りが『一塁』と言ってる声が聞こえた」と落ち着いて一塁送球してアウトを1つ稼いだ。

 そんな場面でも守り切れたのは、九州大会の熊本工戦、南日本招待での横浜戦で、守備から崩れて自滅した苦い経験から、守備練習を工夫した成果だった。

 横浜戦で敗れた5月以降、普段のノックで、エラーをしたら、エラーをした選手以外、全員が走るというペナルティーを科した。「エラーをしたら申し訳ないというプレッシャーの中で守る」(渡邉監督)ことで精神面を鍛え、ダッシュすることで体力もつける。そんな練習の成果が夏の大事な初戦で存分に発揮された。「だてに経験を積んだわけではないということですよ」と渡邉監督は力強く言い切った。

(文=政 純一郎)