好投手対決!! 藤代・竹内が下館工・谷中に投げ勝ち3回戦へ!!

 1回戦で江戸川学園取手高をノーヒットノーランに抑えた下館工の右腕、谷中 規彦(3年・右投右打・180?/67?)を、11年の選手権出場校の藤代高がどう攻略するかに注目が集まった。

 戦前、いろいろな人から「(下館工は)いつ負けるかわからないから早いうちに見て置いたほうがいいですよ」と言われた。それは下館工が谷中のワンマンチームなので「絶対的な強さはない」というメッセージに他ならない。しかし、下館工はいいチームだった。

 藤代は2回裏に1死一塁で6番打者が遊撃ゴロに倒れて6−4−3、4回裏にも1対1の同点にしたあとの1死一塁で4番打者が遊撃ゴロで6−4−3の併殺に倒れるなど、下館工の固い守りにたびたび得点機を逸した。

 下館工の守りの中心、谷中は前評判通りいい投手だった。

 プロ野球で誰に似ているかタイプを探すと、佐藤 達也(オリックス)が一番ピンとくる。細身だがマッチョっぽい筋肉質の体型から、この日は自己最速となる142キロのストレートを投げ込み、投球フォームはアゴが上がるヘッドアップというのもよく似ている。変化球は縦と斜めの2種類、さらに130キロ台中盤のカットボールがあり、中盤から終盤にかけては117、8キロのチェンジアップもよく決まった。

 プロのスカウトは確認できただけでも2人いた。この数は今の谷中の実力をよく表していると思う。「ドラフト候補」と言われれば確かにドラフト候補だが、3年後、あるいは4年後の有力候補と言いたい。

 投球フォームで最も気になったのは始動のとき上げた左足が後ろに回り込むクセ。こういう投球フォームは投げに行くとき左肩の早い開きを誘発し、早い左肩の開きはストレートの抜けにつながる。

 4回の1死三塁の場面では左打者の3番根本 文弥(3年)に2ストライクから外角ストレートをレフト前に打たれて同点にされるが、このとき捕手の程塚 政斗(2年)は明らかに外角に構え、1球様子を見るつもりだった。しかし、谷中の外したつもりの球は中途半端な外角高めに抜け、根本はこれを軽く合わせてレフト前の同点打とした。

 さらに6回裏には先頭の9番、右打者の織田 航平に2ストレート1ボールから内角高めに抜けたストレートをレフト線に二塁打されるが、これも狙って外していないためコースが中途半端に甘かった。抜けるのでリリースで抑え込もうとすればボールが引っ掛かって低めに行き、無死二塁に織田を置いた6回の場面ではこれが低めの暴投となり、2番文成 太紀の勝ち越しタイムリーにつながっていく。

 この谷中に対し藤代の先発左腕、竹内 悠(3年)は小さく打者の近くで動く変化球を駆使して下館工打線を翻弄した。ストレートの最速は確認できただけで131キロと速くない。しかし、小さくスライダー、シュート回転するクセ球を駆使し、ピンチになると自らの最速に迫る130キロ台前半のストレートを連発するなど打者にスキを見せない。

 同点で迎えた6回表の2死一塁の場面では4番谷中に対して7球を要し、3球目のチェンジアップ以外はすべてストレートで押し、そのうち5球は130キロオーバーだった。緩急を駆使するような技巧派左腕の腕を振って投じる130キロのストレートは、本格派が投じる140キロ台中盤の快速球に匹敵すると私は思っている。

 藤代のブルペンでは早いうちから背番号「10」の182?右腕、山崎 誠(2年)が投げていたが、竹内はついにマウンドを譲ることがなかった。今大会注目の谷中との投げ合いに絶対に先にマウンドを降りられないというエースのプライドを垣間見た。

(文=小関 順二)