熱闘!実践学園・日体荏原譲らず、延長15回引き分け

 熱闘とか死闘といった言葉は、あまり頻繁に使うと説得力がなくなってくる。しかし、台風一過で突然訪れた猛暑の中、私立の実力校同士が、力を振り絞って戦ったこの試合は、文字通り、熱闘であり、死闘であった。

 まず試合に先立って、アフリカ・ブルキナファソの、将来日本のプロ野球に入ることを夢見る高校生3人による始球式が行われた。野球の国際化にはアフリカ大陸での普及が不可欠であり、こうした交流も、重要な小さな一歩になる。

 さてこの試合、複数の投手を有する両チームであるが、実践学園は尾林 直幸、日体荏原は鈴木 健介と、ともに背番号1のエースが登板した。それのみならず、両チームの先発18人は、背番号通りの布陣であった。

 2回裏日体荏原は中前安打で出塁した佐藤 圭太を二塁に置いた二死二塁の場面で、9番鈴木は浅い左前安打。佐藤は一気に本塁を狙ったものの、実践学園の左翼手・佐伯 政紀からのダイレクトの好返球で憤死。このプレーに象徴されるように、序盤両チームとも、観戦しているブルキナファソの野球少年たちにも手本となるような好守で試合を締め、好ゲームが予想される雰囲気の中で試合が進んだ。

 0対0の均衡が破れたのは5回裏日体荏原だ。1番植松 諒太、2番保坂 重頼の連続安打などで二死一、三塁の場面で、4番関 幸一郎が左前適時打を打ち、日体荏原が1点を先取した。6回裏は植松のレフトへの大きな飛球を、左翼手・佐伯がグラブに当てるもわずかに捕球できず二塁打となり、四球で出塁していた石川 政明が生還し、日体荏原が1点を追加した。

 実践学園の尾林は、この回を終えて降板。歩幅が狭く、上体を使ったフォームから、落ちる球やスローボールといった緩急が効果的で、要所を締めた。しかし、打たれた10安打のうち、内野安打2本を除く、外野に飛んだ8本の安打は、いずれも初球。1球目の入り方に工夫が必要だ。

 一方日体荏原の鈴木は、伸びのあるストレートにスライダー、フォークなどに威力があり、6回まで実践学園打線をわずか1安打に抑えた。

 ただ、7回表に異変が起きる。一死後5番関口 方大の二ゴロを、日体荏原の二塁手石川が一塁へ悪送球。石川は二塁に進んだ。

 昼間からの試合より、疲労が出てくる後半に気温が上がる朝からの試合の方がつらい。午前9時に始まったこの試合も、7回頃には一層暑さを増していた。日体荏原のエース・鈴木は、熱中症の影響か、足がつったような状態になっていた。投球のバランスが明らかに悪い。そこを逃さず、実践学園の7番奥友 勇人が中前に弾き返して、石川が生還。1点差に迫った。それでも鈴木は気力で後続を抑え、9回表実践学園の攻撃を迎えた。

 この回先頭は、3番の佐伯。鈴木の2球目を叩いた打球は、左中間を破る三塁打となった。佐伯は三塁ベース上で、思わず大きくガッツポーズをした。実践学園に勢いが出たところで、日体荏原は鈴木に代わり、下手投げの古川 旺司を投入した。

 古川は気迫を全面に出した投球をし、下手投げとしては、球威もある。そして、球威があればこそ、下手投げ独特の変化球も効果的だった。後続を三振と遊飛に抑え、あと一人。実践学園の打者は、7回からマウンドに上がった背番号3の小林 幹太。何とか塁に出ようと必死の小林の打球は、遊撃手の奥深くのゴロとなり、間一髪セーフ。実践学園は土壇場で同点に追いついた。

 延長戦に入ってからは、古川旺の投球術がさえて、実践学園を抑え込む。一方、7回から登板した実践学園の左腕・小林は、カーブを中心に投球を組み立て、打たれながらも、ホームを踏ませなかった。

 13回裏日体荏原は先頭打者の3番森村 光が左前安打で出塁。4番関、5番村越 将太は、この日ともに4安打と当たっている。それでも日体荏原は高校野球のセオリー通り関に送りバント。一死二塁となったところで、実践学園は村越を歩かせた。結局後続が打ち取られて無得点。14回裏には先頭の古川旺が二塁打で出塁するが、送りバント失敗もあり無得点に終わった。

 暑さの中で、熱中症で足がつって、交代する選手も出てくる中、両チームが気力を振り絞った戦いは、15回が終わっても決着がつかず、延長15回2対2で引き分けになった。

 客観的に見て、勝機は日体荏原の方が多かった。でもそうしたことは、あまり意味を持たないほど、両チームは猛暑の中で素晴らしい戦いをした。

 再試合は14日昼の12時30分から市営立川球場で行われる。再試合まであまり時間はないが、できるかぎり疲れを取って、また好試合を期待したい。

(文=大島 裕史)