並木の満塁ランニング本塁打などで都葛飾野圧勝

 天気は晴れたり曇ったり。台風の接近により強風が吹き荒れる中で行われた都立校同士の一戦。

 2年前の夏5回戦に進出し、帝京に善戦するなど、都立の実力校である都立葛飾野に対し、都立富士は100年近い歴史を有する伝統校。しかし、野球における実力の差は、如何ともしがたいものがあった。

 先発は都立葛飾野がエースの立川 岬、都立富士は背番号9の高山 峻輔。立川の身長は173センチ53キロ。高山は183センチの63キロと、ともに痩せ型の投手同士の対戦となった。

 1回表、都立富士は1番後藤 弘太朗の四球と3番木幡 圭の左前安打などに盗塁などを絡めて一死二、三塁のチャンスをつかんだものの無得点に終わった。するとその裏、都立葛飾野の猛攻が始まる。

 1番並木 啓がライトオーバーの二塁打。すると都立富士の先発高山の制球が定まらなくなった。

 3番江尻 悠真、4番関根 佳輝が連続四球で一死満塁のピンチ。高山はストライクを取りに行ったところを今度は5番元吉 優介、6番狩野 宣篤の連続安打。さらに都立富士は四球、安打、失策も重なり、初回に7点を失った。

 それでも都立富士は反撃し、2回表には二死一、三塁から後藤がしっかり振り抜き、左前適時打でまず1点。3回表にもしっかりとミートする打撃で、木幡の二塁打など4安打を集中して2点を入れた。

 しかし、反撃もここまでだった。

都立葛飾野は3回裏に1点を追加すると、問題の4回裏を迎える。

 この回安打、四球、失策で無死満塁となり、9番立川に代わる代打鈴木 隼介の中前安打でまず1点。続く1番並木のセンターへの痛烈な打球に、都立富士の中堅手松井 一平が懸命に突っ込んだものの捕球できず、打球は松井の後方に転がる。その間俊足の並木は本塁まで還り、満塁ランニング本塁打となった。

 この一打で都立富士は、何かが切れてしまったかのような放心状態に陥る。サッカーのブラジル代表ですら、一度放心状態に陥ると、立て直すことができずに失点を重ねる。まして普通の高校生である。

 まるで打撃練習をしているかのように、都立富士は都立葛飾野から集中打を浴びる。この回打者19人に10安打、4四球、1失策で14点を献上。結局22対3、5回コールドで都立葛飾野が圧勝した。

 大敗した都立富士であるが、強風で打球が揺れる中、失策はあったものの、好捕もあった。打者も非力なりにコツコツとミートして、反撃した。

 ただ、先発の高山、1回途中からリリーフした2年生の坪野 知史、4回途中からリリーフした2年生の瀬川 遼太といった投手陣の制球力とともに、チーム全体に受け身に回った時のタフさが課題として残った。大敗もまた、発展していくための、貴重な経験である。

(文=大島 裕史)