夏に強い! チャレンジャー精神で強敵撃破・錦江湾

 錦江湾は夏に強い印象がある。昨夏、松陽、志布志と「格上のチーム」(中村敦監督)に勝ってベスト16入りし、4回戦で鹿児島実とも接戦を演じたインパクトが強いからだろう。この夏の初戦も、昨秋準優勝の指宿商に競り勝ち、「夏に強い錦江湾らしい粘りの野球ができた」(前田征志郎主将・3年)。

 1点を先制された直後の3回、足を生かした攻めで3点を奪った。内野安打で出塁した7番・板坂 光貴(3年)が二死二塁から三盗を決め、1番・山本 健介(3年)の内野安打で同点に追いついた。山本も二盗を決め、一二塁とすると、山本の三盗が悪送球を誘い2点目。3番・脇田 大伍(2年)のセンター前タイムリーで3点目を挙げるなど、足攻で崩して効果的に得点を重ねた。

 6回に同点に追いつかれたが8回、先頭の3番・脇田、4番・竹内 暉(3年)の「唯一チームで打てる打者」(中村監督)に連続二塁打が出て勝ち越した。投げては先発のエース諏訪 陸人(3年)、7回からリリーフした福元 雅貴(3年)の継投で反撃を断ち、無失策の守備も盛り上げた。

 夏に強い理由は、中村監督にも「正直分からない」。今春の県大会初戦では樟南相手に1イニングだけで18失点を喫し大敗した。「力のある選手は1人もいない」と中村監督は謙そんでなくそう思っている。結果につながるものが、何かあるとすれば「子供たちが本当にすごいということ。普段は練習でも試合でも、僕から厳しく言われ続けて、最後の夏だけは僕がベンチで笑顔だから、伸び伸びとやれているのかも」と苦笑する。

 春の樟南戦のあと、選手同士でミーティングして「強豪私学と対戦する時に、気持ちが引けて逃げ腰になっていた」(前田主将)のを反省した。春で落ちるところまで落ちたのだから、失うものは何もない。普段の練習から積極的にチャレンジする気持ちを大事にするようになった。3回の3点につながった足攻などは、そのチャレンジ精神の最たるものだろう。

(文=政 純一郎)