全国トップクラスの強肩を披露した山川 晃司(福岡工大城東)に迫る!

 今年の高校生捕手では、清水 優心(九州国際大付)が注目されているが、同じ福岡に清水以上の強肩捕手がいる。その名が山川 晃司(福岡工大城東)だ。前評判で、「捕手の二塁送球タイム」が常時1.8秒台、速い時は1.7秒台も計測すると聞いたが、まさにその通りだった。

 試合は1回表、福岡工大城東の平山 翔(2年)の2点適時打で先制。その裏、福岡工大城東の守り。山川はイニング間の送球で、いきなり1.88秒を計測。しかも二塁ベース付近にコントロールされた見事な送球だった。そして1回裏、早速その強肩をみせた。久留米高専の1番古澤 拓実(2年)が左二塁打を放ち、無死二塁のピンチを招いたが、山川はリードの大きい古澤を見逃さなかった。ウエストを入れて、二塁へ送球。あっという間に二塁ベースに到達し、古澤は戻る事さえできず。古澤は挟まれてアウト。自慢の肩でピンチをしのいだ。

 山川は2回以降もイニング間の送球で「1.84、1.78、1.78、1.75」と驚異的なタイムを計測。思わず測り間違いなのではないかと疑いたくなるが、投手のような球筋で一直線にセカンドベースに入る野手のグラブに収まるスローイングは本物である。山川ぐらいのタイムだと盗塁は難しい。

 クイックが1.1秒〜1.2秒ぐらいの投手ならば、山川の送球タイムと合算すると、2.9秒〜3.0秒以内。このタイムはプロでもトップクラスの走者のタイムなので、クイックが出来ない投手、または投手の癖を盗んで、完璧なスタートを切らない限り、理論上、山川から盗塁を奪う事が出来ないのだ。

 また山川の素晴らしいところは常に全力で送球できること。捕手が二塁へ投げる機会はそう多くない。山川が正確なスローイングを培ってきたのは一つ一つのイニング間の送球を怠らずに送球練習を繰り返してきたからだろう。スローイングタイムという数値で測れば、山川の肩は全国トップクラスであることは間違いない。

 また捕手としての動きを見ると、視野の広さを持った選手であるということ伺える。投げる前にジャスチャーをしながら、野手へポジショニングの指示を送っている姿が見られた。捕手として先頭に立って、何をすべきなのかを理解している。山川のように視野の広さを持った選手は、学習能力が高い傾向にあるので、捕手出身で、専門的な指導者に恵まれれば、非常に速いペースで成長を見せていく可能性があるのではないだろうか。

 そして守りだけでなく山川は打者としても非凡な才能を見せた。第1打席は死球だったが、第2打席はスライダーを引っ張り、左飛。芯に外れてしまった為、思ったより伸びなかったが、角度があり、放物線を描いた高いフライだった。しっかりと芯で捉えれば、さらに飛距離が出ていただろう。第3打席は高めの変化球を捉えて左飛。軽く振り抜いただけだが、ライナー性で鋭い当たりをみせた。ただボール球に焦って手を出している姿が見られた。そして第4打席は6回表。3対0から一気に3点を追加し、6対0として、一死満塁で打席を迎えた。山川は内角直球を振り抜き、レフトフェンス直撃の二塁打で2点を追加した。

 山川の打撃の特徴としては非常にコンパクト。スクエアスタンスとシンプルに構え、足もしっかりと上げて真っ直ぐ踏み込むスタイル。トップを取って肩口から振り出すので、インパクトまでロスの無いスイングが出来ており、腰が綺麗に回転することができているので、インサイドを攻められても、回転で打ち返すことができている。183センチ80キロと恵まれた体格をしているが、攻守ともに技術的に高度な選手で、今日の活躍で山川を追いかける球団も多くなることだろう。

 リード面では常時130キロ前半、キレのあるスライダー、カーブをテンポ良く投げこむ左腕・貞許 嘉克(3年)、1球投げるたびに吠えて、135キロ前後の速球を投げ込む須山 蓮太郎(3年)、130キロ前後の速球、スライダーを武器にする古村 優気(3年)をしっかりとリードし、9対0でコールド勝ちに導いた。

 捕手としては無失点を演出し、再三、強肩を披露。打者としては3打数1安打。そのうち1本がフェンス直撃の二塁打。上々の滑り出しを切った山川。次なる戦いへ向けて、さらに調子を上げ、清水 優心と切磋琢磨しあいながら、今年のドラフト戦線を盛り上げてほしい。

(文=河嶋 宗一)