なぜか今、2004年のフリーゲームが大人気。その秘密は、コミカライズされた漫画版「ゆめにっき」を見るとわかります。女の子が気持ち悪い場所にいるって、心躍るね。

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2004年に発表されたフリーゲーム『ゆめにっき』(Kindle版)がコミックスとなって発売されました。
作者は『エイリアン9』などの富沢ひとし。
……って、えっ、10年前じゃん!
今さら出すの? どういうこと? しかもフリーゲームて。

まずはゲーム「ゆめにっき」について説明します。
kikiyamaHP(公式)
RPGツクールで作られたこの作品、舞台は夢の中、という設定。
12の扉を開くと、電子的だったり、陰鬱な森だったり、サイケデリックだったり、およそ他のRPGでは見られないような世界が広がっています。
プレイヤーは少女・窓付きとなって、「エフェクト」と呼ばれるアイテムを集めながらふらふら歩きまわらされます。
頬をつねると、目を覚まして自分の狭い自室に戻ってくる。部屋から外には出られないので、また夢の中に入る。これの繰り返し。
解釈の余地が多い作品で、数多くの分析がファンによって行われました。

以前出ている小説『ゆめにっき』は、作者の日日日が、このクレイジーな世界は一体なんなのかを、独自に解釈したものの一つ。
文体を「あなたは○○している」という二人称小説の形式で描きました。
超人気カルトゲーム「ゆめにっき」小説版に揺さぶられる - エキサイトニュース

一方、コミック版はそのような読解は、前半それほどしていません。
窓付きのゲーム内の行動そのものを、忠実に再現しています。
扉を選ぶ。鳥人間から逃げる。エフェクトを使ってカエルや信号機になる。

さて、コミック版で決定的に原作ゲームと違う部分があります。
それは、窓付きがものっすごくしゃべるということ。

「ではさっそく、このドアから反時計回りに攻めましょうか」
「赴くままにきざむ、きざむ、きざむ、……最高!」
「この世界にはそういう扉の形をしてない扉が、沢山あるのかも。確かめなきゃ」
「あれ?ちょっと違う種類のやつだ。だめ……相手にしないで扉へ…… もぉぉぉ!解ってるのにぃ。しかも増やしてどうする」

妙にテンション高い。元のゲームは無口なので、違和感があります。
ようはこのマンガ、「ゲーム実況」的なノリを再現した作品なのです。

ゲーム実況とは、ゲームプレイ画面を表示しながら、そのゲームに対してリアクションをとって動画配信することです。
ゲーム実況はニコニコ動画配信が始まった2006年前後から増え始めました。
みんなで部屋でわいわいゲームやっているような楽しさがあります。

「ゆめにっき」実況だと、2008・9年の「【ゆめにっき】何も知らない友人に無理やり実況させてみた」などが有名。
2014年現在でも、「ゆめにっき」実況はアップされ続けています。

例えば、変な生き物に追われている時、扉を開けて外に出た窓付きのセリフ。
「とびら、とびら、急いでとびら……どうだ! ほうら思った通り。別の世界には来られない。……でも姿は元に戻れないのか」
ゲーム実況主のトークと言われたら、脳内再生余裕です。
まるで、「窓付き」という少女の、ゲーム実況を見ているようだ。

「ゆめにっき」ように、昔のゲームがゲーム実況によって人気再浮上する可能性はあり得ます。
特に、PS4には最初からシェア機能が付いているので、実況動画は増えるでしょう。
これは、実況文化の面白さを、他のメディアで活かすにはどうしたらいいかの、一つの実験的な作品です。

後半は物語が収束していくに従って、マチゲリータ・富沢ひとしの独自の「ゆめにっき」解釈を描いた作品になっています。原作を知っている人には意外な展開なはず。
また、富沢ひとしファンにはたまらない、気持ち悪いうねうねした背景と、女の子の組み合わせも必見。
個人的には鳥人間がぴったり貼り付いて焦るシーンにニヤニヤしました。
鳥人間はだめなんだよ鳥人間は。

ききやま・マチゲリータ・富沢ひとし 『ゆめにっき』(Kindle版)

(たまごまご)