製造部梱包配送課に勤める女子社員で、野球部を応援するチアリーダーでもある山崎美里を演じる、広瀬アリス。女子力の数々に目を奪われる。写真は「広瀬アリス カレンダー 2013年」(ハゴロモ)

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「まさか野球部を利用してまで、青島を追い詰めようとはな。怖いね、君も」

回を追うごとに悪役が板につきつつある、立川談春演じるイツワ電器・坂東社長をにんまりさせたのは、社長秘書の花房志保(平井理央)。TBSドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」第6回では、突然の監督&エース移籍をはじめとする、青島製作所野球部の受難に志穂が関与していたらしいことが明かされた。

沖原和也(工藤阿須加)の高校時代の暴力事件をメディアにリークし、大騒動になるよう仕向けたのも彼女なら、試合会場に現れて沖原を誹謗中傷するヤジを飛ばしまくる記者も、じつは社長秘書・花房のさしがねだった。

沖原の同僚で、チアリーダーとして野球部を応援する山崎美里(広瀬アリス)に、青島製作所社長秘書の仲本有紗(壇れい)、暗躍する花房志保。男くささが際だつ本ドラマの中で彼女たちは異色の存在だ。しかも、三者三様の女子力を発揮しているのが興味深い。ビジネスと野球、それぞれ攻防を繰り広げられる中、女子としての覇者になるのは誰なのか。第一話から最新話まで振り返ってみたい。

■「あのさ、今日の夜あいてる? ドームのジャイアンツ戦のチケットがあるんだけど、もし良かったら一緒に行かない?」(山崎美里/第一話)

青島製作所のなかで、誰よりも早く沖原の才能に気づいたのが山崎美里だった。第一話で、投げ損ねたみかんを華麗にキャッチする沖原の姿に目がキラーン。即座に野球観戦に誘う。誘い方もど真ん中、直球ストレート! 沖原がおずおずと「野球好きなの?」と聞き返すと、「うん、大好き。沖原くんも好きでしょ。ときどき、野球部の練習見てるじゃない」と、さらなる豪速球を投げ込む。野球好きという大義名分のもと、誘い・誘われのハードルを下げるのと同時に、「あなたのことを見てます」(=好意があります)を伝えるあわせ技で、女子としての戦闘力の高さを見せつけた。

■「あら残念。また今度お誘いしますね」(仲本有紗/第ニ話) 

青島製作所はイツワ電器の実用新案権を侵害したと訴えられ、窮地に陥る細川社長(唐沢寿明)。社内に緊迫した空気が流れるなか、秘書の仲本有紗はいつも通り。「定時なんでお先に失礼します」「ドームの巨人・中日戦。社長もいっしょに行きます?」とマイペース。細川に「野球のことなんて考えたくもない」と一笑に付されても、「あら残念。また今度お誘いしますね」と気にしない。すべてをわかった上での能天気プレイという高度テクだ。

■「小林選手ってイケメン選手ですもん。あの強気のリードを見てるとキュンキュンしちゃうんですよねー」(仲本有紗/第四話)

仲本有紗は男のプライドを傷つけずにリードする手腕にも長けている。むずかしい商談にのぞむ細川社長に「あの方なら、会長と同じ巨人ファン。例えば、今なら去年ドラフト一位ではいったキャッチャーの小林選手のことを話題にするといいと思いますよ」と伝える。それに対して細川は「さすが、詳しいな」と褒め言葉とも、揶揄ともつかない微妙なリアクション。でも、有紗は「小林選手ってイケメン選手ですもん。あの強気のリードを見てるとキュンキュンしちゃうんですよねー」と、さらりとかわす。褒めていれば謙遜になり、仮に揶揄だとしても真正面からは受け止めない。熟練のワザ、いただきました!

■「沖原くん、明日がんばってね」(山崎美里/第五話)

野球部の練習が終わり、グラウンド脇にある水道で顔を洗っていた沖原。視線を感じて顔を上げると、山崎美里が立っている。「(水道を)使う?」と聞く沖原に「ううん」と首を振る美里。なんだ、そのやりとり! 少女マンガの王道「タオルどうぞ」パターンかと思いきや、渡さない。美里ちゃん、タオル手に複数枚持っていたよね……? 「沖原くん、明日がんばってね」(翌日は宿敵・イツワ電器野球部との試合)と声をかけるのみ。沖原はコクリとうなずいだ後、「ねえ! 絶対勝つから」と必死に叫ぶ。タオルは持っていても、あえて渡さない。じらしプレイが勝利した瞬間である。

■「神山さんたちに夜食のおにぎり作ってきたんです」(山崎美里/第六話)

最新話である第六話では、美里が同僚たちと一緒に大量のおにぎりを持って現れるシーンがあった。じつは美里は、開発部長の神山(山本亨)がかつてリコールの責任をとり、異動した製造部在庫管理室時代の部下だった。皿いっぱいに並べられたおにぎりがなんともおいしそう。恋愛ベタな女子は好きな相手にだけ尽くそうとしてドツボにはまる。気になる男の世話を焼くのは最小限にとどめ、その他大勢にかいがいしく世話を焼く。

■「申し訳ございません。社長にこんな屈辱を味合わせるなんて、秘書として失格です。次は必ず……」(花房志保/第六話)

社長好みの色っぽい美人秘書かと思ったら、“青島潰し”の尖兵でもあった志保。突然、会社を辞めた青島製作所開発部の気鋭の若者と一緒にホテルのラウンジにいるところを目撃され、イツワ電器の産業スパイ行為もバレる。細川社長に動かぬ証拠をつきつけられ、イツワ電器・坂東社長はぐうの音も出ない。意気揚々と細川が帰った後、志保は坂東に駆け寄る。声を震わせ、坂東は頭を下げる志保の手をとり、「気にすることはない。切り札はこちらの手のなかにある」とニヤリ。わざわざ、手を握る必然性はまるでないが、好きに握らせておく。使えるものはなんでも使う。それが花房志保のイズムだ!

こうして振り返ってみると、“紅一点”の振る舞いにもこれだけバリエーションがあることに驚かされる。女子力選手権はストレートからのじらしプレイ、手作りおにぎりと意表をついた女子力を次々披露する山崎美里が一歩リードか。仲本有紗が金麦感あふれる秘書ぶりで追い上げ、勝負はまだわからない。ダークホース花房志保のさらなる暗躍にも期待したい。

(島影真奈美)