重原主将の勝ち越しタイムリーで大島10点目

チャレンジャー精神、終盤爆発! 「夏の想定」が生きる・大島

  昨秋の県大会に続いて準々決勝で樟南との対戦は、両チーム合わせて35安打の乱打戦だった。投手陣が打ち込まれた大島は、中盤以降劣勢の苦しい展開だったが、終盤盛り返し、土壇場の9回に9番・白井 翔吾(2年)のスクイズで同点に追いつき、1番・重原 龍成主将(3年)のセンター前タイムリーで勝ち越した。8回から4番手でリリーフした白井が、その裏の樟南の反撃をしのいで苦闘をものにした。

 4人の投手陣をつぎ込んで被安打18。野球のセオリーなら「負けパターン」の展開をもひっくり返しての勝利に、渡邉恵尋監督は「(選手たちが)力を持っている」と手応えを感じていた。

 1年生大会、昨秋に続く3度目の対戦となった樟南戦は序盤から壮絶な打ち合いになった。大島は3回以降、3人ずつで打ち取られたのに対して、樟南は攻撃の手を緩めず、中盤はリードを奪われた。劣勢だったが「追いつけない点差まで離される前に投手を変えて、食らいつけたのが良かった」(渡邉監督)。

 3回以降、高めのボールに手を出して打たされていたのを修正し、ベルト付近のボールを低い打球で打ち返すように修正した。8回の8点目の口火となる左中間三塁打、9回の勝ち越しタイムリー、重原主将が放った2本はいずれも狙い通りの打球だった。「無我夢中で集中して、本来の打撃ができた」(重原主将)。

 壮絶な試合展開だったが、夏を想定して準備してきたことが生きた。本来のエース福永 翔(3年)が肩痛で登板の目途が立たない以上「樟南クラスのチームが相手ならある程度打たれることも覚悟」(渡邉監督)して、複数の投手陣を作ってきた。前山 優樹(2年)、武田 一歩(3年)、ここまで公式戦無失点だった1年生・渡 秀太さえも失点したが、4番手で登板した白井が悪い流れを断ち切った。

勝利に笑顔を見せる大島ナイン

 正捕手の背番号を背負う2年生だが、今は外野と控え投手の役割を渡邉監督から任されている。試合に出られない悔しさもあったが「いつかお前の出番が回ってくるから準備しておけ」という指揮官の言葉を信じ、肩を作って準備していた。 小中学生で投手経験があるとはいえ8回、4番手での公式戦初登板はさすがに「緊張した」が「いつも通りの投球をするだけ」と丁寧に投げて8、9回を無失点で切り抜けた。9回には同点のスクイズを決め、裏の守備では逆にスクイズを好フィールディングで防いでいる。「良いバトンが回ってきた」(白井)のを生かすことができた。

 樟南相手にこの展開で仮に敗れたとしても、今までなら「良い試合だった」と満足したかもしれない。劣勢だった時間帯は、重原主将もそんな妥協がもたげてきそうになった。それを打ち消して「守りに入らず、チャレンジャーの気持ち」(重原主将)でチーム一丸になれたことが、苦闘を制す力になった。

 準決勝の相手は春を制した鹿屋中央。現時点では県内で最も力を持っている強豪校だ。センバツに21世紀枠で出場し、甲子園出場を果たした大島だが、未だどの県大会でも4強が最高成績で決勝進出を果たしていない。重原主将は「今まで越えられなかった4強の壁を越えて、大高の歴史を塗り替え、良い流れを夏に持っていきたい」と張り切っていた。

(文=政 純一郎)