しかしそれでも、現実としてケガのリスクはある。昨年のホワイトソックスとの試合で、インディアンスのマイケル・ボーンは、一塁線へゴロを打った。それをつかんだアダム・ダンは、左腕のリリーバー、マット・ソーントンへトスをした。そしてボーンの走路上にソーントンのグローブがあったために、ボーンは地面へダイビングすることで、そのチャンスをものにしようとした。

「タッチをかいくぐってセーフになるために、そうしたんだ」ボーンは語った。「つまり他に方法がなかったから、それをしたってこと」

スライディングをしたボーンに、何が起こったのだろうか?

「手を踏まれた」頭を振りながら、彼は言った。「僕が望んていた結果とは、少し違ったね」

右手中指に裂傷を負ったボーンは、1か月近くを欠場することになった。

「僕は、もうしない。プレーオフでもない限り」

この意味が分かるだろうか? 指を5針も縫い、23試合も休んだボーンは、10月の大切な試合であれば、再び一塁へのヘッドスライディングも辞さないのだ。そのゲガが、残りのシーズンに影響をあたえるかもしれなかった一方で、そのプレーは、1位を目指すチームに勢いを与える結果となった。

結局のところ、ボーンが内野安打でセーフとなったからである。

「それは、闘争心に火をつけるんだ」ソフィールドは言った。「それは、少しでも鼻を前に出したい競走馬のようなもの。ヘッドスライディングは、彼らの心をより闘争モードにするんだよ」

論理的に言えば、ヘッドスライディングをする時には、少しでも良い結果を生むために、守備の位置と送球がどこから来るのかを元に走者が行動を考える必要がある。そしてこれまでは、いろいろな選手の話によれば、ヘッドスライディングは、一塁の審判の注意を引くことでランナーが有利になることがあった。しかしビデオ判定が導入された今、その効果は少なくなったと言えるだろう。

そしてもう1つ、弁護の余地がない一塁へのヘッドスライディングの利点がある。

見た目が、かっこ良いのだ。

「時には、そういう選手もいる」ブルージェイズのホセ・バティスタは言った。「一塁へスライディングをすることで、間違えた頑張り方をする人がいることは分かっている。頑張っているって見せたいんだろうね。でもそんなことをする人は、多くないよ」

他の塁でのヘッドスライディングに科学的な根拠がある中で、ベースを駆け抜けることができる一塁は、同じ様に論じることはできない。そしてバッティング・グローブでつかむことができず、足の速い走者の何人かがしているような親指を防御する手段は、バッターボックスから走り出す選手には、使うことができない。

「一塁での際どいプレーでは、ヘッドスライディングする前に頭を使え」アマチュアとマイナーリーグで共通の教訓である。

「したくなっても、それはしてはいけない」ヨーストは言った。

参考:MLB.com