マイクロソフトの Project Spark を使えば誰でもビデオゲームを開発できる
Project Spark はただのゲームではない。自分だけの世界を構築できる開発ツールなのだ。
マイクロソフトはゲーマー達に、彼ら独自の世界を構築してもらうことを望んでいる。実際にプレイすることができるゲームの世界をだ。マイクロソフトが提供する Project Spark は、Minecraft のようにサンドボックスと実際の開発ツールをつなぎ合わせたもので、技術的な知識が全くない初心者でもゲームを開発することができる。Windows 8 版と Xbox One 版があり、現在はオープンベータ・テストの段階だ。
つまりは、「みんな物作りが好きだ。それなら全員にチャンスを与えよう」ということである。
Project Spark は Team Dakota が開発を行い、Microsoft Studios によって発表された。対応したハードウェアを持っている人であれば誰にでも、インタラクティブで無限の可能性を秘めた夢のビデオゲームを作る権利を与えてくれる。12歳の子供であろうと、これまでの人生でプログラミングコードを一行も書いたことがなかろうと、そんなことは関係ない。あなたの想像力を Project Spark に注入し、何が起こるか見てみよう。実にワクワクするではないか。
Project Spark をプレイしてみる
ところで Project Spark とは一体何なのか? Xbox One で何時間も「ゲーム」として遊んでみたが、明確な答えはまだ見つからない。 Xbox Blog の過去の投稿には、次のように書かれている。
「『Project Spark』は開かれた世界におけるデジタル上のキャンバスで、思いついたことをなんでも構築し、遊び、共有することを可能にする。自分の世界やストーリーやゲームを構築して遊べる、強力だが簡単なツールだ。あらゆる創作物を活発なコミュニティで共有しよう。そして、コミュニティが作成したもので遊んでみよう」
この定義は的を得ているが、少し抽象的かもしれない。Project Spark はゲーム内のゲームというよりは、ある意味ゲーム外のゲームである。Minecraft とよく似た、世界を構築していくゲームなのだ( 実際、Minecraft から大きな影響を受けていると思われる)。
Project Spark によるゲーム開発は、プログラミングコードの流れを考えるような昔ながらの技術的な開発要素と、エルフやゴブリンを配置するといったゲームのように楽しめるグラフィカルなインターフェース要素とを組み合わせた、想像力に富んだハイブリッド体験である。結論としては「ユーザーフレンドリー」なのだが、ユーザーの使い方次第では決して簡単には終わらない。
ステップ1:キャラクターを選ぶ。ここはやはりエルフだろう。
では、Project Spark を始めてみよう。私たちはデベロッパーではないので、まずはテンポの速いチュートリアルを見ることからスタートする。ここで、自分だけの小さな世界をプログラミングする基礎を教えてもらえるのだ。最初にキャラクターを選ぶのだが、私の場合は一般的な森のエルフにした。次に、ゲームの仕様を決定するルールの構築方法を学ぶ。
「もし x なら y をする」というようなルールを決めることで、例えば A ボタンを押すとエルフが火の玉を放つようにプログラミングすることができる。ゲームの世界に置かれたものはすべて、ユーザーのコマンドを待つ小道具として扱われる。コマンドは「ブレインエディター」という利口なシステムを通じて発行される。
とても簡単な仕組みなので、子どもでも(たぶん10歳以上なら)扱えそうである。そして、新進のゲーム・デベロッパーを飽きさせない程度には難しくもある。モノのブレインをこじ開けてあちこちいじりまわす行為はビジュアル化されているので、プログラミング未経験者でもコーディングっぽい条件文の構築ができてしまうのだ。
ステップ2:私でもコードが書けてしまった気分になれる
条件をさらに加えれば、これらのルールセットを好きなだけ複雑にすることもできる。私は SimCity の要領で、自分の世界にゴブリン、エルフ、木、旗といったオブジェクト配置し、地形を削り、ルールをつなぎ合わせてとても簡単なゲームを作りあげた。しかしこの段階ではまだ、Project Spark の可能性につま先を突っ込んだ程度なのだ。
とりあえずは、何時間ぶっ通しで取り組んでいても飽きないということがわかった。Project Spark の世界は無限に設定できるわけではない(ビジュアルの種類を追加したり、主人公をもっと勇敢にしたりすることはできる)が、さらに奥深い世界を目指したいなら、それも可能だと思う。良く分からないが勝手に推測すると、Project Spark はオンラインゲームなので、相当な時間をかければ極めていけるのだろう。
世界の構築や小道具の配置、「ブレイン」のプログラムは、「編集モード」で行う。そこから「テストモード」に切り替えると、自分が作成したゲームが動くかどうか、実際にプレイすることができる。これまでの作業内容に満足したので、私は自分のゲームをテストモードに切り替えてみた。私が作った世界は小さな島で構成されており、ゲームの主な目的は主人公のエルフを山の頂上にある旗まで連れて行くことだ。まあ、山と言うよりはちょっと高めの丘といった感じだが。
ゲームをクリアすると、チュートリアルが立ち上がって、クリア画面の作成方法を示してくれる(私の場合はエルフに「やったー!」と言わせることにした)。それから、ゲームに時間制限の要素を追加する方法も教えてくれた。これで、もしエルフが道に迷ってうろうろしてしまったら時間内にゴールすることができなくなり、プレイヤーは悔しがることになるだろう。
ここまで成し遂げたことで、なんだか自分自身がレベルアップしたような気がした。私はこれまでずっとゲーマーとして生きてきて、特に開発スキルと呼べるほどのものは持ち合わせていなかったのだが、この時は何か、歯車がカチっとかみ合ったような素晴らしい気持ちになった。若いゲーマー達も皆私と同じようなゲシュタルトを体験をするのかと考えると、これはすごいことだ。
ステップ 3:開発して、遊んで、さらに開発する
Project Spark の真髄は、単なるグラフィック・ゲーム作りではなくそのコミュニティにある。自信作を完成させたら、他のゲーマーが参加してあなたのゲームで遊んでくれるだろう。当然、その逆も可能だ。Project Spark で作成したゲームがヒットした場合、開発者がそれを商業的な財産とすることができるかどうかは不明だが、いずれ議論されるだろう。
Team Dakoda のスタジオマネージャー、マイケル・サクセス・ぺルソンは、The Verge で次のように述べている。「ユーザーの 99% は、単にゲームが好きで創作と共有を楽しみたい人たちだ。よく分からないままにいじくりまわしている経験ゼロの子供から、新進のゲームクリエーターまで様々な人々が含まれている」
Project Spark は、ビジュアル・プログラミングにおける強力な教育的プラットフォームと言えるが、それ以上に、マイクロソフトがインディーズ・コミュニティに接近するための賢明な手段でもある。数か月前に PlayStation 4 とXbox One が発売された頃には、インディーズ・ゲームの開発に友好的なのはソニーの方だった。マイクロソフトは自社のイメージを変えるために多大な努力をしたのである。
プレイ・フィールドの多様化
部外者からは実力社会だと思われている業界において、文化的、人種的、ジェンダー的にもっと多様なクリエイターの集団を生み出す方法などというのは、想像するのも難しい。コーディングへの興味を掻き立て、カジュアルと言ってもいいプログラミング・ツールへのアクセスを様々な人々に広めることは、さらなる多様化が必要とされている技術分野において、非常に重要なことである。Project Spark のデモ用ビデオゲームを見れば、これが多様化の促進にかなり効果的であることがわかるだろう。
「アプリ」という配信モデルが急増したことと、インディーズ・ゲームの華々しい台頭とは決して無関係ではない。たとえ一般の個人であっても、App Store でチャンスを掴むことさえできれば、大成功を収められることが証明されている。想像力に富み、匿名性が高く、若者にも優しい新たなプログラミングツールの波が、開発スキルに民主化をもたらすということが、Project Spark という試みによって明らかになった。これは実に大きな 1up である。
Taylor Hatmaker
[原文]