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2014 年は、安価なコンピューターとネットワークの普及によって、世界中で低価格帯スマートフォンの販売が加速しそうだ。

2014 年はこれまであまりネットワーク対応が進んでいなかった国々も、ネットワークにつながり始める年である。安価なコンピューターと普及したネットワークが世界を変え、スマートフォン、特に高価でないスマートフォンが、インターネットへの入口として台頭しつつある。

米国や他の「成熟した」マーケットでは、スマートフォンはテレビやパソコンと同じくらい普及しており、スマートフォンメーカーも米国や韓国、日本、ヨーロッパの消費者は、相変わらず最新・最高の機能が付いたガジェットに喜んで大金を払うだろうということを知っている。しかしこの成熟したマーケットの成長は失速してきており、2番手、3番手のメーカーにとって、アップルやサムスンのような巨大企業と競い合うのはますます難しくなっている。

調査会社の comScore によれば、米国の携帯電話ユーザーの 65% はすでにスマートフォンを持っているということだ。消費者数にすると 1 億 5600 万人に相当し、これは大まかに見ればアメリカの人口の約半分である。

スマートフォンメーカーは今、開発途上国の人々が気に入るように設計された低価格帯スマートフォンの開発競争に忙しい。ターゲットになっているのは、開発途上国の何 10 億という消費者のポケットだ。中国が最大の事例だが、スマートフォンメーカーはインド、インドネシアなどのアジア太平洋諸国、中東、東欧にも流れ込んでいる。

これまでスマートフォン業界は、市場に出回る最新のガジェットに関し、「何が」「いつ」登場するのかという点ばかり気にしていた。新しい Galaxy S5 でデビューする機能は何か? iPhone 6 はいつ発売されるのか? などという具合だ。今年は興味のポイントが変わってきている。今出てくる質問は、「インドや中国に一番多く出荷するのはどのメーカーか?」だ。

どうやら競争相手には事欠かないようである。

アップルの謎

アップルがこの傾向をどのように考えているのかは謎だ。iPhone メーカーは昨年、これまでの伝統を破って 2 つの iPhone モデルを発表した。そのうちの一つ、比較的安くてカラフルな 5C は、世界中のより価格に敏感な消費者にアピールしようとするアップルの努力の表れである。

問題はその 5C が、完全装備の兄弟である 5S と比べてそれほど安くないことだった。2 つのモデルの価格差はちょうど 100 ドルで、5C が 550 ドル、5S が 650 ドルであった。

最終四半期の収支報告でアップルは、5C は誤算であったと認めた。予想したよりも多くの消費者が、ほんの少し高いだけで技術的には高性能な 5S を選んだのだ。iPhone 5C の 550 ドルという値段は、急成長するマーケットでアップルが勝負するにはまだ高すぎたようだ。

実のところ、アップルは中国では普通にうまくやっていた。前四半期には約 100 万台のスマートフォンを China Mobile に販売している。そして今年はその国内最大のキャリアが大きく成長すると見なされている。アップルの電話は中国の新しい裕福なエリート層を大変魅了しており、この事実はアップルが中国の中流あるいは低所得者層向けのシリーズにシフトしていくという仮定からは程遠い。

アップルは先月の中旬、より安価な iPhone 5C の 8GB バージョンをヨーロッパ市場に発表した。英国のサイトを見ると、16GB バージョンが 469 ユーロ(774 ドル)であるのに対し、8GB モデルの販売価格は 429 ユーロ(708 ドル)である。しかしこれでもまだ、財布のひもが固い消費者をターゲットとして 5C に競争力を持たせるには、十分安くはないかもしれない。

今後のスマートフォン業界を考える上で、アップルを除外するのはまず無理な話だ。しかしその最新デバイスが明らかに平均的な新興市場のユーザーを対象としていないという事実が意味するところは、アップルは開発途上国の大衆市場において、競合他社たちが見込んでいる程には多くのチャンスを期待していない、ということだろう。

マイクロソフトとノキアは大衆市場を目指す

その「競合他社」にはマイクロソフトと、近々同社の製造部門となる予定のノキアが含まれる。マイクロソフトは、2 月にバルセロナで開催されたモバイルワールド・コングレスにおいて、Windows Phone の次回アップデートではモバイル OS をもっと安価なハードウェアでも動くようにする予定だ、と発表した。地方の小規模なハードウェアメーカーが、手ごろな価格のデバイスを構築できるようにすることが目的だ。3 月の初めには、次のような噂も耳にした。マイクロソフトがインドなどに拠点を置くメーカーに対しては Windows Phone のライセンス料を免除するというのだ。通常、Windows をインストールするデバイスメーカーにはこのライセンス料の支払いが課されている。

「重要な市場でのヒットが望めるような、色々な機能を開発した。新しいメッセージングソフトウェア、新しい言語機能など、あらゆるものだ」と、マイクロソフト Windows Phone のシニアプロダクトマネージャーであるグレッグ・サリバンは語っている。

ノキアにも Nokia X というスマートフォンがある。これは一見 Windows Phone のように見えるが実は Android スマートフォンであり、しかしグーグルではなくマイクロソフトの検索、電子メールサービスを使っているという紛らわしい端末だ。Nokia X の基本的な戦略(第三者アプリストアへのアクセス、アプリの移植とサイドロード)は理にかなったもので、価格も 100 ドル以下と手ごろである。

しばらくは製品の売れ行きを見守り、これがマイクロソフトが意図したとおり、Windows Phone へと人々を導くゲートウェイ・ドラッグとして機能するかどうかを見極める必要があるだろう。「携帯電話事業を広い視野から見れば、まずは私たちのサービスを使ってもらい、それから人々が Windows Phone を使いたいと思うようになるのが自然な流れだと考えている」とサリバンは言う。

新興市場では Android が独り勝ち

スマートフォンにおける新興市場の話題はまず Android から始まり、大抵は Android で終わる。Android は世界のスマートフォン市場の 80% 以上を占めているからだ。しかしこれは、グーグルが順調だという意味ではない。

グーグルが Android の最新バージョンを発表した際の最大の変更点は、Android の最新機能が低価格帯のハードウェアでも動くように、徹底したオーバーホールを行ったことであった。Android 4.4 KitKat においてグーグルは、 RAM が 512MB しかないデバイスのスマートフォンでも動作するよう、オペレーティングシステムのプロファイルを調整した。

グーグルの目的の一端は、メーカーが安くて新しいスマートフォンモデルに古いバージョンの Android(つまりバージョン 2.3 Gingerbread)を使用するのをやめさせることにあった。一方、製造サイクル側はまだ KitKat に追いついていない。3 月 の段階で、グーグルサーバーにアクセスしている Android デバイスのうち、KitKat を搭載したデバイスが占める割合はわずか 2.5% である。従って、グーグルの戦略が功を奏するかどうかが決まるのはまだこれからだ。

昨年、グーグルの Android エンジニア部長デイブ・バークは、「特に低価格帯の端末で、見た目は新しいが実は古いバージョンの Android を搭載していた、というケースがある」と述べていた。「我々は未熟なバージョンの Android を排斥し、入門レベルのスマートフォンで KitKat を動作させるために、大変な努力をしてきた」。

関連記事: KitKat開発者が語る、Android軽量化の裏話

急成長を続ける市場に参入して来るものは皆、Android からシェアを獲得しようと奮闘している。しかしグーグルは、多くのスマートフォンメーカーの頂点に立つ LG、サムスン、HTC、ソニーなどの企業だけではなく、Huawei や ZTE のような、中国やインドのマーケットに携帯電話を多く流通させている中小のデバイスメーカー、さらにはホワイトマーケット(ノーブランドメーカー)のデバイス製造者とも強く提携しているのだ。グーグルからシェアを奪うというのは生易しいことではない。

追随者たち

アップルとグーグル、そしてマイクロソフトのトップ 3 以外の小さな(一部は廃れた)会社や組織もまた、急成長する発展途上国を狙っている。Mozilla はその競争者たちの中でも先頭に立っており、これまで実際に一定数のデバイスを出荷してきた数少ない会社の一つだ。

Mozilla は急成長する市場をターゲットにするという明確な目的を持って Firefox OS を開発した。Mozilla の製造パートナーは Alcatel や KDDI のような会社で、米国ではまだ携帯電話を販売していないが、それでも世界的には大きな業績を上げている。

バルセロナで開催されたモバイルワールド・コングレスで、Mozilla のチーフオペレーティング担当者、ジェイ・サリバンにインタビューを行った。彼は、「立ち上げ当初、私はかなりの時間を南米各地を回るために費やした。そして、例えばベネズエラを選んだら、ベネズエラに行く地域メンバーを決め、地元の小売スタッフをトレーニングして地域に密着した設計をし、関連するマーケットキャンペーンを行うのだ」と語った。「Mozilla の目的は、我々の仕事を本当に愛してくれる人たちに応えることだ。だからこそ我々は、実力以上の力を発揮できるのだ」。

サリバンによると、アナリストたちは、販売開始から最初の6か月で 500,00 から 750,000 台の Firefox OS スマートフォンが出荷されたと予測しているそうだ。Mozilla はモバイルワールド・コングレスの場で、今年は 7 つの新しいデバイスによって 12 の新たな市場を開拓していると発表した。Mozilla が展開する市場の数は、これで合計 27 となる。決め手になるのはおそらく SC6821という 25 ドルのスマートフォンだろう。Mozilla は今年、チップメーカーの Spreadtrum とともにこのスマートフォンを製造している。

Mozilla が登場して以来、競争の勢力図はかなり混沌としている。そういえば、MeeGo の直系ではないが後継となる Linux ベースのモバイル OS、Tizen はもう何年もの間開発中で、正式にはどのスマートフォンにも搭載されていない。現時点で Tizen を使用した製品は、サムスン製のカメラ 1 種とスマートウォッチ 3 種だけだ。これらはサムスンのウェアラブルな新しい Gear シリーズである。これまでのところ、どこかのメーカーが Tizen ベースのスマートフォンの出荷を計画しているという確かな兆候はない。とはいえ、そんなものが出てきたところで、たとえ価格がいくらであろうと、大した影響はなさそうだが。

技術の底上げ

2013 年には、スマートフォンに組込まれる CPU ラインのトップに君臨したのはクアルコム製 Snapdragon 600 であった。このチップは、 サムスンの Galaxy S4 や他の最重要スマートフォンに組み込まれていた。一方今年になってからは、Snapdragon 600 といえば中流スマートフォンのための中流コンポーネントとなっている。これが消費者向け電子機器の本質である。昨日最新式だったものが今日には予算内の手ごろなものになるのだ。

低価格帯デバイスの爆発的な増加を可能にしているのは、結局のところ安価でありながら高機能なハードウェアの普及である。まずはグーグル、サムスン、HTC、アップル、そしてマイクロソフトのような会社が、高性能な最新アプリケーションを実行するために、専用のスマートフォンとオペレーティングシステムを構築する。クアルコムのようなハードウェアメーカーは、こうした新しい機能の要求に追いつかなければならない。そしてここで身についたあらゆるノウハウが、手ごろなスマートフォンの次世代版を形成することになるのだ。

クアルコムの製品管理担当上級副社長であるラジ・タルリは、「我々は低価格帯の製品に適合するように CPU を拡張し、GPU を拡張する」と述べている。「今は、高級版に期待していた機能が廉価版でも動作するようになるという体験を、ユーザーができるようになっている」。

モバイル分野における実際の流れを見てみよう。コンポーネントメーカーとスマートフォンメーカーは、高機能カメラ、高速表示、高解像度ディスプレイ、長時間バッテリー、優れたデータ接続性といった高機能を、初めに最高クラスのスマートフォンに組み入れていく。そのうち、これらの機能が中流クラスのスマートフォンでも見られるようになり、ついには手ごろな携帯でも使えるようになるのだ。

「ここしばらく、高品質であればあるほど良いというトレンドがあった。カメラで言えば、2 メガピクセルのカメラから始まって 4 メガピクセルのカメラになった。あるいはディスプレイで言えば、低解像度のディスプレイから始まって、qHD ディスプレイ、フル HD ディスプレイ、2K ディスプレイ、そして今は 4K ディスプレイとなっている」とタルリは言う。「しかし最近では、低価格で十分に良質な製品を展開することができると言うマイクロソフトやノキアのような会社が登場してきている」。

Dan Rowinski
[原文]