企業におけるソーシャル・ツールの活用はなぜ上手くいかないのか
今やソーシャル・ツールはビジネスに必須だが、セキュリティの問題が残っている。
ソーシャル連携ツールは仕事の生産性には結びつかない、とは次第に言えなくなってきている。
今の世代のホワイトカラーはインターネットがない時代を知らないので、人とのつながりを築くのにソーシャル・ツールを使わないという考えが理解できないようだ。彼らにしてみれば、鉄器時代になって、鉄の方がずっと強度が優れているにも関わらず、「これまでもずっと青銅を使っていたから」という言い訳で青銅を使いつづけるようなものなのである。
上の図は、マイクロソフトが 31 か国で 10,000 人の「IT労働者」を対象に行った調査の結果を示している。年齢や性別で統計結果が大して違わないというのは、大変興味深い。しかし、このような結果にもかかわらず、職場でのソーシャル連携ツールの導入がいまだに 20% 以下だというのはなんだか不思議だ。
(私にとって)驚くべきことに、連絡、協力、共有の主な手段として、大半の人はいまだに電子メールに頼っている。確かにいくつかのアプリ(iOS 用の「Mailbox」、Web 用の「Sanebox」、Android 用の「K-9」など)のおかげで、電子メールも以前よりは使いやすくなった。しかし、一日の受信メールが10通以下でもない限り、電子メールは実に非効率的だ。受信トレイの電子メールに返信したり、不要なメールを削除したりする作業には実にうんざりさせられる。あなたはどうだろうか?
とにかく電子メールは 1990 年代には素晴らしい仕事ツールだったが、今はもう違う。あなたに電子メールを送るのは誰にでもきる。でもそれを整理できるのは「あなただけ」なのだ。
誰もコミュニケーションの鎖を断ち切る責任を取りたくないから、ついつい「CC」や「全員に返信」を押してしまう。Gmail には、本文で添付ファイルについて言及していると添付ファイルの有無をチェックしてくれる機能があるが、あれだけは素晴らしい。ファイルを添付し忘れるという恥ずかしい失敗をフォローするための、赤面ものの電子メールを書かなくても済むからだ。しかしそれ以外ではもっぱら、電子メールはコミュニケーションのゴミ捨て場だ。仕事において十分な役割を果たすとはとても言えない。
HootSuite は、ソーシャル・ツールの使用が会社にもたらす価値を詳細に説明するビデオを作製した。ビジネスは結局、人間関係だ。だから職場でソーシャル・ツールを使うことは理に適っている。しかし、個人的ツールとしてのソーシャルメディアに対する不信感が、ビジネスでのソーシャル連携ツールの使用に悪影響を及ぼしている。これはビジネスの可能性を広げる以前の問題だ。
ハーバード・ビジネス・レビューは 2012 年に、人とのやり取りが必要な仕事をしている場合、ソーシャル連携ツールを使うことで生産性を 20% から 25% 上げることができると予測している。ソーシャルとの連携は通常、作業効率を下げるこまごまとした仕事の処理スピードを加速することができる。例えば、仕事を進める許可を得る、ちょっとした質問をする(そして後で参照できるように記録に残る回答を得る)といったような事だ。それに加えて、個人が会社全体を見るようになることで、自分の守備範囲だけでなく、会社全体の活動をリアルタイムで俯瞰できるようになるというメリットもある。
個人対企業ソーシャルメディア
サラ・ケスラーによる Facebook アカウント削除の試みは、ソーシャルメディアの悲しい現実を表している。やめようとするときに後味が悪い思いをするプラットフォームは多い。
ソーシャルメディアのユーザーはプライバシー保護に対する関心が低い。21 世紀を生きる人類の多くは、インターネットの登場によって個人情報を完全に隠すことができなくなった事実を簡単に受け入れている。一方で、どんなデータが収集されて利用されるかを把握することについては、関心が比較的高い。YouTube にあるような、長ったらしくて複雑な利用規約も不信感を増大させる。ほとんどの人がそれを読まずに後になってひどい目に合うか、「賢明」であろうとして決して承諾しないかのどちらかだ。さらに既存のソーシャル・サービスへのログインを利用する新しいプラットフォームは総じて、自分のデータへのアクセス許可を求めてくる。しかも「スキップ」ボタンよりも「はい」ボタンのほうが強調されていて、「あなたに代わって投稿する」方をユーザーに選択させようというずるい手段を使っている。
簡単に言うと、誰が自分のデータを見ることができるのかわからないので、人々はソーシャルメディアの使用に対し慎重になるのだ。
ところが皮肉なことに、会社員の実に 80% 以上が職場で承認されていないアプリを使用している。つまり、いったん個人モードから職場モードに切り替わると、こういった懸念は吹き飛んでしまうようなのだ。
クラウドを使ったソーシャル連携サービスを採用する会社にとっては、会社の規模に関わらずいまだにセキュリティが最大の脅威である。しかし、こうした企業の4分の3が専門のソーシャルメディアチームを立ち上げているというのに、ソーシャルメディアとの連携を業務に取り込んでいるのはわずか 17% というのはおかしな話だ。明らかに、従業員と経営者の両方で、ソーシャルメディアを業務効率化のツールとして使うことへの衝動や恐れをどう制御するかについての理解が欠けている。
適切なソーシャル連携ツールを選ぼう
それでもやはり、2014 年には企業向けのソーシャル連携ツールは普及していくだろう。果たして問題は起きないだろうか?
McAfee の報告によれば、ビジネス向けソーシャル・ツールは2014年の最重要課題だ。クラウドを使うことで「IT 部門の手を借りなくても、従業員が比較的簡単に SaaS アプリケーションを習得し展開できるようになる」とも述べている。これは多くのサービス型ソフトウェア(SaaS)を使ったソリューションにとって、よい知らせだ。
一般的な部門やチーム、プロジェクトの責任者もセキュリティの問題について理解しなければならない。IT 専門家は意思決定プロセスから少しずつ外されているからだ。私は以前から、セキュリティについては強制的に学習しなければだめだ、と言ってきた。そもそも会社は、電子メールの安全を確実に保証する方法をどれだけ真剣に考えてきたと言えるだろうか?
クラウド連携ソリューションがあなたのチームに適しているのであれば、具体的にどのツールが良いのかを正しく見定めなければならない。気にかけるべきなのは、普段あなたのチームがどれくらい一緒に仕事をしているのかという点だ。選んだソリューションは、現在の仕事の手順や慣習にスムーズに取り込まれるものでなければならない。また、摩擦が少なく、これまでのやり方が活かせるものでなくてはならない。チームの本来の仕事の流れや、コミュニケーションの取り方と異なる機能を持つツールを無理やり使おうとすると、適応できずに次第に使われなくなる。どのように業務が行われているかを調査する事は、情報に基づいた決定をするのに役立ち、その結果チームが新しいツールにスムーズに対応できるようになり、より大きな成功につながるだろう。
「他者と協力するのは人間の基本的な活動であることを、私達は危険を覚悟で無視しています」と Dachis グループの主任戦略担当、ダイオン・ヒンチクリフは言っている。「実際には人々がどんなふうに仕事を遂行しているか、どうやって情報共有しているか、どうやってお互い付き合っているか、そして提案されたソーシャル技術がそうした協力関係にどのような影響を与えるかを考慮せずに、単に手近なソーシャル技術を使ってしまうと、きっと残念な結果になってしまうでしょう」
チームのメンバーにお互いの関係やデータが安全に確保されるのだと示すことができれば、ソーシャル連携ツールを自分の会社に導入するチャンスは広がるだろう。また、社内でセキュリティについての知識が増せば、責任者の懸念も減るに違いない。連携ツールソリューションに切り替えることで活用され得る、大きな可能性があるのだ。それは統計的にも、個人的な交流手段やツールでも証明されている。結局、私たち人間は社会生活を営む動物なのだから。
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Denis Duvauchelle
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