4つの「思考タイプ」

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同じテーマについて話し合っているはずなのに、一向にかみ合わずにストレスがたまってしまう。毎日顔を合わせる上司、部下なら問題はさらに深刻。こんな悩みを一発で解決できるツールをお教えします。

■「相手の性格」7タイプ別攻略法

この世には、嫌いなわけではないのに会話がかみ合わない相手が存在する。

休日、雑誌に載っていたイタリア料理店に彼女を誘おうと思い立つ。赤坂にある店だ。赤坂に着くまでは順調だった。

「ねえ、そのお店どこにあるの」
「この辺、赤坂だよ。雑誌見せなかったっけ?」
「見てないけど、その雑誌持ってきた?」
「いや、持ってきてないけど……」
「あ、そうなんだ。で、お店はどこ?」
「確かサカスのそばなんだけど……あれ、ないなぁ……ま、この近くだから」
「近くだからって……住所は控えた?」
「住所なんて控えてないよ」
「えっ……」
「あっ、ここだ! あれ? なんだ、休みか。でも、隣のフレンチもいい感じだから、そっちにしようか」
「……」

実を言えば、これは以前の私と妻の典型的な会話のパターンだ。私たち夫婦はエマジェネティックス(以下、EG)でいうと最悪の相性なのだ。後に詳しく説明するが、私の思考スタイルは、思いつきや閃き中心で、言うことがコロコロ変わるコンセプト型。妻は、現実的で何事も綿密に準備するディテール型。こんな水と油のふたりが、EGと出合ったことによって、人から羨ましがられるほど仲のいい夫婦になれたのである。

EGは脳科学にもとづいた思考と行動の分析技術(プロファイリング)のひとつであり、emerge(発生する)とgenetics(遺伝子)を組み合わせた造語である。アメリカではすでに30年以上の歴史を持ち、マイクロソフトやIBMといったグローバル・カンパニーが人材開発や組織の活性化のために活用している。

右脳と左脳という言葉をお聞きになったことがあると思う。そもそもこの言葉は、1970年代の後半から発達してきた「分割脳」という考え方から生まれた。右脳は直感的で左脳は論理的といわれるが、EGではさらに踏み込んで、脳を「抽象脳」と「具象脳」に分割して考える。つまり脳のタイプ(=思考のスタイル)を以下の4つに分けて考えているのだ。

・直感的+抽象的→コンセプト型(黄)

・直感的+具象的→社交型(赤)

・論理的+抽象的→分析型(青)

・論理的+具象的→ディテール型(緑)

これを図にまとめた。重要なのは対角線上にあるスタイル同士(黄と緑、赤と青)は会話がかみ合わないことだ。反対に、同じ思考スタイルの場合は何の努力をしなくても、阿吽の呼吸でスムーズな会話を展開してしまう。

もうひとつ、EGには他のプロファイリングにはない大きな特徴がある。それは、思考のスタイルと同時に行動のスタイルも分析の対象としている点だ。私の場合、先述の通りコンセプト型に当てはまる。コンセプト型の特徴は創造的なことだが、すべてのコンセプト型が自分の思いつきや閃きを口に出すわけではない。黙って胸に秘めている人もいる。つまり、思考スタイルは同じでも、それを外に出すか出さないか(=行動)は必ずしも同じではないのだ。EGを創始したゲイル・ブラウニング博士はこの事実を重視して、思考と行動両方のスタイルを分析しなければプロファイリングとして不完全だと考えたのである。

行動特性を図にまとめた。自己表現性と自己主張性の違いがわかりにくいので、簡単に説明しておこう。

カラオケの場面を思い浮かべてほしい。自己表現性の強い人は、存分に歌えさえすれば満足する。一方、自己主張性の強い人は、ただ歌うだけでなく同行した人が聞いてくれなければ満足できない。焼き肉屋で他人のペースや焼き加減の好みを考慮せず、自分の思う通りにせっせと肉を焼いてくれる人も、おそらく自己主張性が強い人だ。要するに、自己表現性とは「どれだけ表現したいか」、自己主張性とは「どれだけ他人に受け入れさせたいか」を測定するモノサシだと考えればいいだろう。

こうしてEGでは4つの思考スタイルと3つの行動スタイルによってプロファイリングを行う。実際は100個の質問に答えてもらうのだが、相手や自分のタイプを特徴から見分けるポイントを前出の2つの図にまとめたので、診断してほしい。

では、このEGをビジネスの場面に応用してみよう。たとえば、上司と話がかみ合わない場合。相手のスタイルを見抜くにはどうすればいいか。

わかりやすいのは、思考スタイルよりも行動スタイルだ。思考は目に見えないが、行動は目に見えるからだ。たとえば、自己表現性が強いタイプの上司は、レストランに入ると必ず「これおいしいな」とか「これ最高だな」といった感想を、頼まれもしないのに漏らす。基本的に詠嘆であり、独白である。一方、自己主張性が強いタイプも一見同じような言葉を口にするが、「君もおいしいと思うだろう」というように、同意を求める。言葉は似ていても、まったく違う行動なのだ。

行動スタイルが違う人間同士がうまくコミュニケーションを取るには、双方が自己表現性や自己主張性などの強いほう(右より)、弱いほう(左より)の特徴を理解したうえで歩み寄ることだ。多弁な人はしばらく黙っているようにする一方、無口な人は普段の自分より多少口数を多くしてみる。何も機関銃のように喋れというわけではない。たとえば、相手の柔軟性が弱い(逆に言えば、一貫性が強い)と見抜けたら、私のように思いつきで店を変えたりしないことである。

思考スタイルは相手が表現してくれない限り把握できないが、仮に相手が無口な人だったとしても、ごく短い口癖から推測することは可能だ。

たとえば分析型(青)は、ディテール型(緑)のように順を追って話をするのが嫌いだ。当然、話し相手にもそれを求めない。分析型の上司の口癖は、

「で、結論は?」

である。

一方、社交型(赤)の上司は人間関係を重視しており、他者と共感し、共鳴することが好きである。口癖は、

「で、みんなはどう言ってるの?」

である。最悪の相性である青と赤が良好なコミュニケーションを取りたいと思ったら、相手のスタイルに合わせた話し方をする以外にない。年功序列制の残っている組織なら、上司(目上)のスタイルに部下(目下)が合わせるのが自然だろう。

たとえば青の上司に対しては意識的に、「結論から先に申し上げますと」といった、簡にして要を得た会話を心がける。別の言い方をすれば、「こいつはオレに似たタイプの人間だ」と思われることが、良好なコミュニケーションの秘訣なのだ。常にこれを念頭に置いておけば、思考と行動のスタイルがまったく異なる上司ともうまくやれる。極論すれば、この世から苦手な相手がいなくなってしまう。

では、私と妻はどうだったか。彼女と思考のスタイルがまったく異なることを悟った私は、彼女のスタイルに合った話し方と行動様式を徹底的に身につけたのである。レストランに誘うときは番地まで調べ上げ、地図をプリントアウトし、必ず予約を入れるようにした。

自分のスタイルと異なるスタイルに合わせるのは結構ストレスだが、特にビジネスの場合、阿吽の呼吸の相手をパートナーに選ぶとふたり揃って落とし穴の存在に気づかない場合が多い。逆に、対角線上にいる相手の場合は、穴を埋め合う最高のパートナーになれる可能性がある。現在の私たち夫婦のように……。

(エマジェネティックスインターナショナル マスターアソシエイト 中村泰彦 構成=山田清機)