これでもかとばかり襲いかかる災難を乗り越えた須田美貴さん。突き抜けた笑顔で、今は労働者の味方に!

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「職場でヒドイ目に遭っている人を救いたい」―。そんな思いで現在、社労士として活躍中の須田美貴さん。セクハラ、パワハラ、不当解雇……。数々の地獄から這い上がってきた彼女に体験談を語ってもらった。

■“クビ”なんて、ネタにすればいい

始まりはセクハラだった―。

大学卒業後の24歳のときに就職した学習塾でのことだ。

「職場でふたりになると『今日は生理だね。顔を見ればわかるよ』などと言ってくる気持ち悪い上司がいたんです。もともと下ネタは平気なんですが、彼の発言にはどうしても耐えられなかった。課長に訴えても、『あ、そう』だけ。すぐに辞めました」

転職先の私立学校では……。

「ある日を境に先輩から『臭い』と言われ、職場イジメが始まりました。『臭いから』と職員室からも追い出され、理科準備室が私の職場に……。校長に助けを求めに行ったら、『いじめられるほうが悪い』とひと言。もうココでは働けないと思って学校を去りました」

退職後はバイトに明け暮れる日々。早朝は運送会社、昼はチラシ配り、夜は工場のライン……。その後、転職した労働保険組合事務所では労災隠しの被害者に。

「自転車で役所回りをしていたときに事故に遭い、労災の申請を上司にお願いしたんですが、『本部に知れたらどうするんだ。黙っとけ』と言われました」

次の転職先はブラック企業だ。

「有名な資格予備校ですが、業績不振を理由に突然、手紙で解雇を告げられました。あまりにも急なので翌日も出社し、デスクのパソコンを立ち上げようとパスワードを入力したらエラー表示……。しばらくすると人事部と監査部の社員がやって来て、『不法侵入で通報するぞ』『10分以内に出ていかないと私物を捨てるぞ』と言われ、やむなく会社を後にしました」


地獄に落ち、這い上がったと思ったら、また突き落とされる。

「もう、入る会社すべてがブラック(苦笑)。その後、勤めた病院でも、『歯科医になった娘のために院内に歯科クリニックをつくる』という理事長の方針で整理解雇されましたから。でも、ここまで重なるんだから“自分は持ってる”と前向きに思えるようになったんです」

そんな彼女を後押ししたのが、32歳のときに取得した社労士の資格。

「この波瀾万丈な職業人生を自虐ネタにしながら、困っている人の助けになろう」と、社労士事務所を開設した。

“自虐ネタ”を生かした彼女の仕事ぶりは評判を呼び、社労士として独立に成功。24時間、電話相談を受けつける「労働者を守る会」も設立した。「目指すは“労働相談のコンビニ”」と話す彼女は、こう語る。

「クビにビクビクすることも、くよくよすることもありません。クビになった経験は人生の肥やしになりますから。“自虐ネタ”にするくらいが、ちょうどいいんです」

【解雇トラブルに遭ったときの駆け込み寺】


●日本労働組合総連合会(連合)


TEL 0120−154−052


労働組合のナショナルセンター。全国53の産業別労働組合が加盟し、あらゆる相談に応じてくれる

●全国労働組合総連合(全労連)


TEL 0120−378−060


全国どこからでも近くの労働相談センターにつながる。さまざまな労使トラブルに対応してくれる

●NPO法人労働相談センター


TEL 03−3604−1294


あらゆる労働相談に対応。全国のユニオンの中から最寄りのユニオンも紹介(平日9〜17時、日曜12〜17時)

(取材・文/興山英雄)