芸能人に無関心？日本では考えられない文化を持つ国とは
しかし、遠く離れたベトナムという国は少々考えが違うんです。南部のホーチミンはベトナム最大の商業都市であり、観光都市でもあります。しかし、ホーチミンはみなさんが想像している以上にエリアが狭く、観光に訪れた方ならば、ホーチミン中心の統一会堂や聖母マリア教会には足を運んだのでは？ しかし、実のところホーチミン中心というのはその界隈のみを指す。バイクで20分も走らせれば、道路もろくに舗装されていない、超ローカル色に包まれた町並みが顔を出します。
日本人ならばそんな光景に出くわした場合、どのようなリアクションをとるでしょう。「握手してください！」、「大ファンです！」、「写真撮ってください！」と声を上げる人も多いはず。中には感極まって涙を流す女性もいるかもしれない。しかし、ベトナム人はというと、誰一人声をかけずに、「あー歌手の○○だ」と小声で囁く程度だ。握手を求める人は誰もいないし、サインを貰う人もいない。
その理由は主に2つ考えられます。
1つ目はベトナム人は「テレビだからこそ芸能人は価値がある。実際この目で見たらつまらない」と考えているから。確かにミスター・チルドレンは歌を唄っている姿をテレビやライブステージを通して見るからこそ価値があると思っている。2つ目の理由は、ベトナムの芸能界というのは日本ほど地位が高くないのだ。言うなれば、憧れる世界ではなく、「教養がない人が行く世界」と捉えられているのだ。
数年前に、当時をときめくベトナム人アイドルとその彼氏とのセックス動画がネットに流出してしまった事件がある。このときのベトナム人の反応は、「やっぱり芸能人ってそういう人たちなんだ」、「残念だね」といった極めて冷やかなものだった。そのことからも芸能人の地位は日本よりも高くはないと言えだろう。
もう1つベトナムで驚くべきことがありました。それはテレビでもお馴染み、ベトナム人の若者ならば誰もが知っているような有名歌手が、そこら辺のローカルカフェで、小さな生ライブの営業をしていたのだ。日本で言えば、浜崎あゆみクラスの歌手である。しかし、これにも訳がある。
まず、日本のようにベトナム人歌手は印税で暮らしてはいけないということ。CDは一枚50円程度だし、違法コピーが通常化されているので、印税はほぼ皆無。そのため、メディア出演のみならず、こういったローカルカフェで営業をするしかないという事情がある。
ちなみに筆者がローカルカフェに行ったときは、My Tamという歌手が唄っていた。彼女は浜崎あゆみの歌などをカバーしているベトナムでは超売れっ子人気歌手だ。ベトナムの観光ついでに生でベトナム人芸能人を探してみるのもいいかもしれない。顔さえ知っていれば、案外簡単に見つかるかも？
（古川 悠紀）
