東北大、導電性プラスチック中でスピン流が電気信号に変換されることを発見

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東北大学は5月6日、広く普及している導電性プラスチックの中で、磁気の流れであるスピン流が電気信号に変換されることを発見し、「磁気-電気変換プラスチック」の作製に成功したと発表した。

同成果は、同大 金属材料研究所の安藤和也助教(現慶應義塾大学 理工学部 専任講師)と東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 齊藤英治教授らによるもの。また、ケンブリッジ大学キャヴェンディッシュ研究所 渡邉峻一郎博士、Henning Sirringhaus教授と共同研究が行われた。詳細は英国科学誌「Nature Materials」オンライン版に掲載された。

エレクトロニクスの進化を支えてきたプロセスの微細化の限界がささやかれるようになり、そうした状況の打開に向けた新しい電子技術の開発が求められるようになっている。そうした次世代技術の1つとして注目されるのがスピントロニクスである。エレクトロニクスが電流を利用していたのに対し、スピントロニクスでは電流に代わり電子の磁気的性質(スピン)の流れであるスピン流を利用する。このようなスピン流を使った電子機器の開発には、スピン流を電気信号に変換する技術が不可欠であり、この実現を目指して各地で研究が進められている。

今回、研究グループは、電気を流す導電性プラスチックの中で、スピン流が電気信号へと変換されることを発見した。使用した導電性プラスチック(PEDOT:PSS)は、電気伝導性と環境安定性に優れているのと同時に、光の透過性も高いため、液晶ディスプレイや帯電防止コートなどに利用されている。多くの他の材料と異なり、導電性プラスチックは溶液を基板に塗るだけで作成できるため、インクジェットプリンタを用いることで、スピン(磁気)-電気変換素子を印刷することができる。しかし、同材料はスピンの情報を長時間保存できるものの、スピン流の読み出しには利用できないと考えられてきた。今回得られた結果はこの常識を打ち破るもので、フレキシブルで低コストかつ大面積化が可能なプラスチックベースのスピントロニクス素子の開発に進展をもたらすと期待されているという。

具体的には、今回の研究では、磁性絶縁体と導電性プラスチックから成る素子を作製し、磁気のダイナミクスを利用することで導電性プラスチック中へスピン流を注入した。スピン流を注入しながら電圧測定を行うことで、導電性プラスチック中を流れるスピン流が電気信号に変換されていることを発見した。さらに、この電圧信号を精密に調べることで、検出された信号が導電性プラスチック中の逆スピンホール効果によるものであることを明らかにした。

相対論的座標変換であるローレンツ変換によれば、運動している磁石の一部は電気分極に変換される。運動している磁石、つまり磁石の流れはスピン流の存在を意味している。従って、相対性理論はスピン流が流れるとその周りに電気信号が生じることを予言している。真空中でこの機構によって生じる電気信号は小さいものだが、物質中では物質の特性を反映して同じ対称性を持つスピン流-電気信号変換現象である逆スピンホール効果が表れる。通常、逆スピンホール効果は白金や金といった原子番号が大きな物質で表れ、炭素と水素からなる有機物中では小さいというのが常識だった。今回の発見は、これまでごく小さいと信じられてきた導電性プラスチック中のスピン流-電圧変換が予想に反して大きな電気信号を生むことを明らかにしたものだという。

なお、研究グループでは今回の発見に対し、電子のスピンを利用することで省エネルギー化を目指すスピントロニクスと、フレキシブルかつ低コスト・大面積化が可能な有機エレクトロニクスの両方のメリットを利用したプラスチックスピントロニクスの基幹となるもので、新しい時代の電子技術と省エネルギー社会の実現に寄与することが期待されるとコメントしている。

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