「折り鶴のためのおりがみ」。同じ柄から2種の鶴が折れる。

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先日、3歳の娘に折り紙を手渡され、「何か折って!」とせがまれた。何を折ろうか? と考えてみたのだが、まともに折れるのは鶴くらいだと気が付いた。

最近は外国人にも人気の折り紙だが、「鶴しか折れない」という日本人も少なくないだろう。しかし、逆にいえば、鶴さえ折れれば、とりあえずOKな感もある。

そもそも折り鶴には独特の造形美があるが、折り紙のチョイス次第では、かなりスタイリッシュに仕上げることも可能だ。先日、ある展示会でユニークな折り紙で作られた折り鶴を発見。アート作品のような見た目に釘付けになった。

使われていたのは「折り鶴のためのおりがみ」。名前のとおり、折り鶴を作ることを前提に作られた折り紙だ。モノトーンの円と直線を使ったシンプルな柄は、鶴を折ったときに美しく見えるよう計算されている。

デザインを手がけたのは、プロジェクト「HIROCOLEDGE(ヒロコレッジ)」などを展開するアーティストの高橋理子さん。実はこれ、東京・墨田区のものづくり事業者と日本を代表するクリエーターが協力する「ものづくりコラボレーション事業」の一環で生まれたもの。今回は、高橋さんと墨田区の製本工場である株式会社NACAMURAがコラボ。同社のルーツが折り紙製造などにあることを理由に、折り紙をテーマにした商品を作ることになった。

「折り紙は使い手によって何にでも変化するシンプルな正方形の紙です。私は、使い手に考える余地を残したいと思いながらもの作りに取り組むのですが、あまりにその製品の自由度が高すぎると、どうしてよいかわからず、行動にまで結びつかないことも多い」
と高橋さん。そこで、折り紙と聞いて誰しもが頭に思い描く「鶴」に焦点を絞りこむことに。
「そうすれば人々の興味を刺激し、折ることへの欲求を高めることができると考えました。また、日本人の誰もが鶴ぐらい折れるといいな、という思いもありました。海外でも鶴を折ってプレゼントしてあげると、とても喜んでもらえるんです」
もちろん、1枚の紙として用途は無限。折り紙としてだけでなく、便箋やラッピングなど、様々な方法で使用したくなる紙を目指したという。

商品は2011年からTAKAHASHI HIROKO BASE(アトリエ)やオンラインショップ、国立新美術館ミュージアムショップなどで販売中。ストライプとドットの2タイプあり、それぞれ4種の柄が各3枚入って、1セット630円。購入層は老若男女問わず、国籍も問わず幅広い。インテリアとしても飾りやすいと好評だ。

ちなみに柄に円と直線だけを使っているのは、「最低限の要素で大きな可能性を探る試み」であると同時に、「ものが溢れる現代において、多くを求めなくとも十分楽しく生きることができる」というメタファーでもあるそうだ。

世界に誇る折り紙の新しい形。アトリエでは、「折り鶴のためのおりがみ」を利用したワークショップなども定期的に開催しているというから気になる人はチェックしてみては。
(古屋江美子)

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■ Takahashi Hiroko / 高橋理子 | Official Web Site